NECの話
前回の記事で電機メーカーの比較をしましたが、今度は1社ずつ状況を見ていきたいと思います。今回はNEC。
売上収益
2009年決算からのデータを並べてみました(すべて会計年度前提)。まずは売上収益ですが、下がり傾向です。データには並べていませんが、かつては5兆円という売上収益を出していました(2000年, 2001年)。そこからひたすら、下がり続けて、2015~2017年は売上収益も全盛期の半分という状況です。不採算事業を廃止して収益性を上げているのか、と思って営業利益率を見ても、やはり低い水準で推移しており、事業が上手く行っていない印象を持ちます。2018年度にさらなるリストラ(過去にも何度もリストラを行っている。)を実施することもあり、先行きが不透明な状況です。
そもそも今NECは何やってるの?
まず思い浮かぶのはパソコン事業と携帯電話です。2000年代はNECは選択肢の第一候補だったと思うのですが、今はどちらも事業を手放しています。では今何をしているのか。セグメント別の売上収益を見てみましょう。
これ見ても全くわかりませんね。もう少し細かく調べてみると、
パブリック: 国内外の政府、官公庁、地方公共団体、公共機関などに向け、ネットワーク技術やセンサ技術、データ分析技術などとシステムインテグレーション力により、安全・安心で効率的な社会ソリューションを提供しています
エンタープライズ: 製造業、流通・サービス業、金融業などの民需向けにITソリューションを提供し、お客さまの新サービス立ち上げなどに貢献しています。
テレコムキャリア: 通信事業者向けネットワーク構築に必要な機器や、運用管理のための基盤システム、運用サービスなどを提供しています。
システムプラットフォーム: 端末およびネットワーク機器、コンピュータ、ソフトウェア、サービス基盤まで、ビジネス向け製品や、これらをベースとした統合型のプラットフォームを提供しています。
その他: セーフティ(生体認証ソリューション、サーベイランス)、スマートエネルギー(電極、蓄電システム)
となっております。パブリックとエンタープライズ、テレコムキャリアはどこ向けの製品(サービス)なのかの違いだけですね。公向けがパブリック、通信向けがテレコムキャリア、それ以外の会社向けがエンタープライズ。具体的にどんな製品(サービス)があるかというと、
パブリック: マイナンバーシステム,
エンタープライズ: SCM(物流関係), POS(販売管理, レジシステム)
テレコムキャリア: 携帯電話通信設備, 国間海底ケーブル
システムプラットフォームは、クラウドやビックデータ解析等のシステム提供になります。エンタープライズとの線引が難しい印象ですが、社内のネットワーク構築等、基礎的な部分がシステムプラットフォームで、それを活用して客先の業務形態に合わせたシステムを提供するのがエンタープライズでしょうか。
その他はEV用蓄電池の事業や、新規事業などでしょう。
さてもう一度収益を見てみましょう。パブリックが最も多く、ついでシステムプラットフォーム、テレコムキャリア、エンタープライズ、その他の順です。良くも悪くも公向けの売上が大きいのですね。ここは、東京オリンピックに向けて伸びてくるのかもしれませんが、いずれにせよ、国次第ということですね。他の民需向けの業績が今後どれだけ伸びるのかが今後の鍵になるかと思います。
さて今度は営業利益の面から見てみましょう。なお、セグメント間の利益(内部利益)は調整額で消去されていますので、各セグメントの、内部利益を削除した営業利益はもっと低いです。
こうしてみると、営業利益が少ないですよね。収益と比較してみると、エンタープライズが良い方ですが、他の事業も利益が少ない。ちなみにテレコムキャリアは、FY17は海外の構造改革費用を計上しているようです。また、その他はマイナス利益ですが、EV用の電池事業から撤退するとのことで、改善が見られるでしょうか。
中期経営計画
NECは2020年度で売上収益3兆円, 営業利益5%を掲げています。ちょうどオリンピックのある年度なので特需もあるかなと思いますが、なかなか大変そうな印象です。特に営業利益5%の道のりがかなり大変そうです。具体的な打ち手としては、
構造改革(リストラ、工場閉鎖等)
5G事業(通信)への対応
エネルギー事業(大型蓄電池システム)の拡大
2020東京オリンピックへのインフラ整備
米国dotData社(AIによるビッグデータ解析)
前述のEV向け事業の撤退など、構造改革が続く状況ですが、かつての栄光を取り戻せるのか、今後の動向に注目ですね。
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