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Monark キャラクター感想&考察記事 真生徒会メンバー編

こういうタイトルでありつつも若干妄想も入っているかも。
自己解釈という方が正しいかもしれません。
ネタバレ注意です。

ちなみに記事内でのバディの順番は二部で攻略した順です。好みで言えばこころ>館パイセン>信哉>望の順になりますが。
「この子放って置いたらヤバい。傍にいないとヤバい」という優先度で決めました。

【駿河台こころ】

本作屈指の推しキャラ……というより一番共感したキャラクター。
実は私も知育が周囲より遅く、ギリギリ養護学校入りを免れたくらいの幼児でした(さすがにこころちゃんほど言葉を覚えるのが遅くはなく、そして知能指数に至っては比べるまでもないのですが)。
それでいて本好きというのも一緒です。
自分語りが続きますが私は字を読めるようになったのも遅かったです。
でも読むようになったら一気に貪るように自主的になんでもかんでも読むようになりました。
こういうアンバランスな発育の仕方をする子はマジでいるのです。

※※※

そんなんだったので周囲と上手く同調できず、さりとて同調することに努力しようとすると、自分以外の誰かを傷つけざるを得ない現実を察知する観察眼を中学に上がる頃には良くも悪くも持ってしまっていたので「誰も傷つけず傷つかない」「安心安全」でありたいというこころちゃんの気持ちは強くわかります。
まぁ同時に「他人を傷つけてヘラヘラ笑っていられる連中がのさばる学校の方が間違っている」という碇谷昴と同じ気持ちも持っていましたので、こころちゃんルートシナリオはいちいち共感ばかり覚えていました。

また、なんだかんだ言って碇谷とこころちゃんは似たところがあります。

憤怒ノ章より
こころのイデア

碇谷は「周囲より劣っているから特別扱いされた」
こころは「周囲より秀でいているから特別扱いされた」
だから碇谷は「俺はいじめられてなんかいない」とか「俺を哀れむな」と普通を装い、内心ではこころのような秀でた特別になりたかった。
一方でこころも

望ルートより

社会に対して決して怒りや嫌悪感はやはりあります。
でもどう思おうと大多数の普通の人々で構成された社会の方が正しいのであって、自分がオカシイから内に閉じこもろうとするのがこころちゃん。
二人の対比は二人の生い立ちや家庭環境を考えれば「どちらも正しい感想」と言わざるを得ない部分があります。

なお

碇谷からの告白を論破でフる容赦ないこころちゃんの図

こころちゃんは上の望ルートでの対決前の台詞とか、間違っちゃいないけど、というか間違ってないからこそ余計に厄介な思春期らしい潔癖症なところがありますね……。
館パイセンは「アホか。ンなもん誰だって同じこと思っているよ」と苦々しく吐き捨てていますが、単に館パイセンがあまりにも清濁併せ呑み込む器量がありすぎるだけ。

なお当の館パイセン側で後述しますが、こころちゃんルートではその館パイセンの影響も濃く「安心安全」の信条を翻し「(大切なもののためなら)不安で危険で構わない」女になることをこころちゃんは決意します。
ただ、まだその不安で危険であるという「覚悟」や溜め込み我慢するタイプのこころちゃんがまだ欲求の解放に慣れていないためもあってか上述の碇谷に対する容赦のないフり方も含めて悪意エゴの発露に慣れていないのが悲しい結果を生む場面も。

神宮ソラを倒した後消えゆくことを嘆く彼女に
ソラ自身の口癖で以って皮肉を返すこころちゃん
その結果、さらなる皮肉として
仮初の自我に苦しめられていたソラに人間らしい感情=殺意を発露させ
こころちゃんの大切な人を奪う結果に……

こころちゃんルートはさらにこの後のヨルのやりとりも含めて終わりが本当に好きです。
みんな不器用すぎる。

【ビジュアル】

制服姿
思装纏開時

こころちゃんは通常時とバトルモードの思装を纏った時の落差がバディの中で一番大きいと思ってます。
普段はフード被ってちんちくりんで、学校来ているくせにサンダルという幼さが強調されているのに対し、思装を纏うとノースリーブで肩出し、座っているせいで脚線美まで強調と一気に大人びるのがズルい

なお最初こころちゃんの着ているこのフリル付きブラウスは改造制服かと思ってたんですが、他の女子キャラちゃんと見てみると新御門学園の女子制服のブラウスはこれみたいですね。
上からブレザーを着用するのが正式な制服の着方で、私物のジャケットを羽織っているこころちゃんがオカシイだけ。
……授業中は寝ているし制服はちゃんと着てないし、こころちゃんも結構館パイセンのこと言えないほど不良生徒(でも特待生)。

ちなみに私物のジャケットは思装纏開時には脱ぎ捨てていると勝手に脳内補正しています。重ね着すると安心快適じゃないからとか。
たぶん戦闘終了後は拾いに行っている。

【弓田信哉】

重い。

シナリオ、愛情、テーマ曲。ありとあらゆるものが重い。
プレイしていて一番キツかったのが信哉君シナリオでした。色欲ノ章の時点で既に重かったけど、第二部の信哉ルートはマジで重いし救いがない。

少女かと見紛う美少年で、信愛を捧げた人にはどこまでも慕い尽くし、一方で軽蔑する人間には非常に攻撃的で口汚い。
これはお姉さま方が大好きなヤツだわ……となりながらも、男性の私でも好きだと言わざるを得ない子です。というかバディの中で一番闇が深い子。
本編時点でも十二分に闇が深いですが、twitter配信アドレスのバトル後で女装関連の話題が昇った時は本気で心配しましたとも。

幸い未成年風俗の仕事はさせられていなかった模様
安心安全……なのか?
そういうところやぞこころちゃん……

※※※

バディ中最年少というのもありますが、信哉君は象徴が「信仰」なだけあって「信じる」の短所である盲目的、視野狭窄、思考停止、がかなり強い。
一方で「信じる」の他の短所としては「短慮」「依存的」があるのですが、この点が少ないのが信哉君の褒めたいところ。
いやまぁ信哉ルートでは副長に大分依存していますが、あの状況は依存しますよ……。それに依存度で言えばバディだとこころちゃんが一番副長に依存度が高いと思います。

また、自分の事になると盲目的なのに他人事だと鋭く優しい言葉をかけられる子でもありますね。

おそらく養父母の下で愛されている己を省みての穏当な諭し
この場にいる人全てに当てはまる言葉なのでおつらい……

色欲ノ章での振る舞いは、生い立ちや養母ソラの洗脳で契約者への憎悪を植えつけられたことを考慮すると、信哉君はかなり遠野姉妹に優しく接している方です。
生い立ちを考えたうえで、遠野姉妹の壊れてしまった家族愛を繋ぎ止めようとするイデアの意志を見たならば同類嫌悪の拒否反応で口汚く罵しりそうなのに、それは抑えています。
「色恋沙汰はよくわかんない」で目を背けているところもあり、信仰が象徴の子だけあってかなりピュアな所があります。ここらへんもお姉さま方に好かれる要因だろうな……。

※※※

そして信哉君の過去を打ち明けるシーンは色々と辛いんですが一番キツかった一言がコレ。

実の母親から「頼むからいなくなってくれ」と言われるだけでも死にたくなるほど辛かったろうに、養育先すら探さずその受け入れ先の交渉すら当の子供本人に押し付けるという……。

次から次へと断られるのは当然のことで、信哉君が「自分はクソ」と信じて疑わないのはこの一件もかなり大きいかと思います。
保護者が勝手に用意した養育先に放り込まれるのもアレではありますが、信哉君は今まで親しくしてもらっていた親戚の人々にも断られ続けて、電話を切って次の番号にかけるたび「あ、オレやっぱいらない子なんだ」と感じたであろうことは想像に難くありません。

結局神宮家に引き取られましたが、神宮ソラは「契約者を権能を使わずに倒すことができる兵隊」が欲しかったので、こんなに傷ついて洗脳しやすい子供は大変都合が良かったのでしょう。
劇中で信哉君が盲目的に「契約者は危険な存在だから排除しなければいけない」とし「武術の鍛錬」「異世界でも戦える鍛錬」「学校のメンテ」「普通に学生としての勉強」もこなすオーバーワークに疑問も不平も抱かずむしろ恵まれていると信じ込んでいたのがお辛い。
虐待されていた子供の次の行き先が搾取とか、そんなの現実で見飽きています……。

※※※

幸い、ズレてはいても私兵にしていても神宮夫婦は本当に信哉君を愛していたことだけが唯一の救い(こころルートだと本当に愛していたせいでエラいことになりますが……)。
とくにヒューゴの歪み(これは別記事で書きたいと思います)から解放された神宮優悟は信哉君を大切な息子として扱っていたようであり、それを否定されたことに立腹できたあたりが信哉君の成長と言えます。

最終部より

「信仰」を象徴としていながら「弓田=ユダ」という名前を持つのはつまりこういうこと。
実母から愛されなかったということについての折り合いをつけるにはまだまだ信哉君には長い長い年月が必要でしょうが、少なくとも「信じるべきものを見定めようとする自我エゴ」「例え恩人であろうと自分の信じた道のためなら反逆する心」を得られたので、このあたりが「こころより依存度は低い」と評したところですね。
ようするに副長がもし今後道を踏み外すと信哉君がぶん殴ってくる可能性が。

※※※

ちなみに館パイセンは例の如く、信哉君と低レベルな口ゲンカしながら自立心を煽っていたと最終部の雑談で触れていますね。
「親なんだから憎んじゃいけない」「愛されたい。愛されるべきなんじゃないのか」と屈折したわだかまりを抱き続けてきた信哉君にとって「まっすぐ憎しみをぶつけてもいいヤツ」である館パイセンは結構いいストレスの捌け口になっていたんじゃないでしょうか。

……まぁ館パイセンはケンカしている時は兄貴分でもなんでもなく素で低レベルな争いしていたように見えますが。

【日向望】

とにかく影の薄いバディ。

最初のバディだけど、その後強欲の章でバディに選ばなければ活躍らしい活躍をすることもなく、第二部シナリオでは自分のルート以外ではフェードアウトしてしまうという……。
実際に最終部では「周回中自分がコテンパンにされた回数」を各々のキャラクターが語る雑談シーンがありますが、「会長は基本引きこもっていたから(この話題では蚊帳の外)」と図星を突かれて言葉に詰まっています。
とくに副長が見ない内にソラさんに取り込まれたり消されたり、霧の中でヒカリちゃんに会ったりしていたんだろうな……。

ただ、影の薄さはゲームシナリオとしてどうなのかとは思いつつも、キャラクターとしては一貫しているんですよね。
望も自己肯定感が低く(バディこんな奴ばっかである)、仕事が無くなったり取り上げられたりすると、途端に弱気で内向的で消極的になります。
一方で仕事を割り振られたり、仕事を見つけると暴走気味に働き始めるという非常に両極端なキャラクター。
なので、「会長なんだから仕事あるだろ」と副長から発破かけられない限りは第二部では動かないのは自然なことではあります。
逆に言えば最終部で自分のエゴだけで動き始めたのが望の成長と言えるところです。

※※※

一方で主人公の出生を考えると「偽者でもいい」「偽者にしか無いものがある」と望に叱咤激励するシーンは、図らずも最終的に主人公自身の希望として返ってくる構図になっており、望ルートは第二部の中でもとくに重要なシナリオです。

どうも主人公は、元々が空っぽなだけあってかその時組むバディの影響を受けやすいように見受けられます。
・こころルートでは後ろ向きな目的ながら計画的に物事を進め、
・凌太郎ルートでは根本的事態解決に向けて建設的に立ち回り、
・信哉ルートでは直情的な復讐鬼と化し、
そして望ルートでは「大切な人を守りたい」という希望に影響されてか、第二部シナリオでは唯一積極的にヨルの攻撃から他者を守るという行動に出ています。
もっとも、自分がモロに攻撃を喰らう可能性があるので自己犠牲的な危うさも影響を受けているのですが(とはいえ虚飾の権能は他の権能の無効化もあるので、我が身を盾にするリスクはかなり低い……副長がそこまで考えていたかどうかは別として)。
結果的に第二部シナリオ屈指の犠牲者の少なさで済んでいます。やったねカケル先生も褒めてくれたぞ。

※※※

ちなみにこころちゃんと信哉君は「この子は支えてあげないと」というタイプだったのに対し、望だけは唯一「こいつ放っておくとヤバいヤツだわ」というのが個人的な感想。

先述したように、消極的な鬱状態の時と積極的な躁状態の時の落差が激しすぎるタイプなうえに、第一部の一橋に対しての論戦の時でもそうだったように積極的な時の望は攻撃性も強いので暴走させると危険。
事務仕事を手伝わされたこころちゃんは「ブラックすぎる」とボヤいており、千代ちゃんからもワーカホリック気味だとツッコまれているのでスイッチがどっちに入っている時でも面倒くさい女の子だったりします。
……このあたりの極端な精神状態は境界性人格障害だとか双極性障害だとかで身近に見ているので、トラウマが蘇る……。

信哉君は自滅的にヤバい子ですけど、望は一歩間違うと他者を巻き込んで破滅へと突き進みかねない危うさがあります。
そういう意味で野党として批判者として望のブレーキ役になっていたらしい一橋は惜しいエゴを無くした……と思うところ。
オマケに当の本人の望が一橋を批判者として誰よりも高く評価していたのがなんとも皮肉。
この二人が対立するんじゃなくて協力しあえる未来は無かったのですか……。

なお、この二人

一橋は「僕こそが生徒会長だ!」という誇示のために式典用会長服を着ていますが、この衣装の特徴である片側にだけあるマントは望の思装にも反映されており「一回しか着た事ないけど恥ずかしかった」と言う割に、望のエゴには「生徒会長の記号」として認識されている模様。
それこそ一橋への対抗心もあったかもしれませんね。

【館凌太郎】

館パイセンと勝手に呼んでますが、主人公と同学年の二年生なのは百も承知でそう呼んでいます。
丸々一年迷子になって出席日数足らずの留年なので実質先輩という経歴と、真生徒会の中での兄貴分的立場を務めていたことからの敬称のつもりです。
劇中で主人公はバディを全員下の名前で呼んでいるのですが。

※※※

バディの中で一番粗暴な見た目と口ぶりのくせに、最も事態解決に対して建設的計画と情報収集をしつつ、対立する覚悟も決める二律背反の現実にしっかりと立ち向かえている、18歳とは思えないほど精神的に成熟しているのが館パイセンです。
対立するルートでは「ガタガタ言わずにかかってこい。勝っても負けても恨みっこ無しだ」と潔く、一方でバディを組むルートでは「事態解決の糸口を掴むためには未来予知できる駿河台の権能を使うのが一番だ」とこころちゃんをぶん殴って協力させ、神宮ソラの皮肉から「神頼みって手もあるか」と発想の転換ができる凄まじさ。

とくに「神頼みすればいいのか」は、自尊心の強い館パイセンらしからぬ発言で驚いたところ。
しかしクロムウェルの書記はバディたちも読んでいたようなので、ミーム汚染回避のために伏字されていた「全てのモナークの根源たる存在」が「神」であると行き着くことはそう不自然ではありません。

このあたりを読んでいたら伏字部分は察しがつきますね

この超自然的現象が起きまくっている状況ならプライドも現実性も投げ捨てて神サマにお願いしてなんとかしようと行き着くのは、正に目的のためなら手段を選ばない暴食のモナークの契約者といったところ。

※※※

またスクショは撮り忘れたんですがその方向音痴っぷりを呆れられた時に

「俺は方向音痴じゃない。単に興味があるものを見て回っているだけ」
「俺は回り道しているなんて思っちゃいない。最終的に目的地に到達したのならそれでいいし、そこに至るまでに得たモノも俺の糧になっている」

という考え方はめちゃくちゃ憧れます。
一年間の海外旅行失踪事件、それに伴う留年という世間的な醜聞と、一年後輩だった連中と机を並べることに対する屈辱とかそういうの一切ないんですよね。
なぜなら、そもそも高校に通っているのも「尊敬している祖父の母校に通いたかっただけ」程度の意味合いしかなく本人はいつだって学校なんて辞めても喰っていけるだけの器量と自信があるから。
世間の常識に捉われず、しかし人としての良識は持ち合わせており、失踪から帰ってきた時のトラック一杯のお土産持参とかは暴食の契約者のくせに奪うだけじゃなく与えることもまた喜びとしている象徴的事件で、そりゃ学園内に信奉者グループができるのも納得です。
館グループの御曹司だからスゴイじゃなくて、凌太郎だからスゴイとちゃんと理解されていますし(本人それでも嫌がってそうだけど)。

ちなみに元々の性格は内気だったけれど、祖父の破天荒な可愛がり方(船旅中エイプリルフールに無人島に遭難したとされてサバイバル、砂漠にリュック一つで放り出される、etc…)のせいで今の性格が形成されたと本人申告していることを考慮すると「世界中色んな場所を巡って経験させられた結果、日本の学校という狭い価値観に縛られるのが馬鹿らしくなった」んだと思います。

この自由奔放で我の強い性格は、内気なこころちゃんが憧れ、嫌っている信哉君ですら魅了したほど。
私にとってこころちゃんがもっとも共感できるからこそ好きなキャラであるとすれば、館パイセンはもっとも憧れるからこそ好きなキャラと言えます。

とくにこの二人が対決するルートでは

凌太郎の最後のイデアを砕いた時に垣間見えるメッセージ
それを見た後のこころの反応

正にこころの心を奪い、我儘エゴを与えたという最高の負けっぷり。

その後、こころちゃんは開き直る

館パイセンの暴食の本質は、本人はそれをたぶん恥ずかしいから認めたくないだけで、清濁併せ呑む包容力ですね。
同時に独善を自覚した合理主義者でもあるので、自分のものさしで決めた奪ってもいい相手からは容赦なく毟り取り、逆に認めた相手には与える。
ざっくり言うと独善による「正当な価値あるモノの分配」がしたいが故の暴食。

※※※

そんな館パイセンが本作の事件を通じて、肉親のしがらみから解き放たれたのも良い最後です。

ED後の会話

既に「起業を手伝った会社の株売って学費は全部自腹で払っている」という超スペックの館パイセンなら権能なしでも夢物語じゃないですね。
……まぁ好奇心強すぎて移り気な所があるので、補佐する人間は大変そうですが……副長そういう意味で勧誘されているのか?

【愛川千代】

主人公の妹……林Pの手がけたゲームには主人公に必ず妹がいるな?
そしてCRYSTARのみらいと同じく、実は血の繋がっていない赤の他人です。というかもっと深刻。
CRYMACHINAのユリちゃんもこの分だとたぶん……

※※※

千代ちゃんは第二部だと諸事情あって全く出番はないのですが、存在感は強く真生徒会メンバー全員に大きな影響を与える役目を担っています。
とくに主人公への影響は強く、信哉ルートでは珍しくボイス入りでヨルに「殺してやる」宣言して殺意を露わにするほど。

実質一拓選択は本作では珍しくないが
この後ボイス立ち絵付きで殺してやる宣言までする

この時と千代ちゃんを失った時の副長は共に立ち絵と共にボイス付きで台詞を言うという演出的に、プレイヤーの分身であることから一時的に分離するほどのエゴを爆発させたと解釈しても良いでしょう。

なぜここまで主人公が千代ちゃんを愛しているのか?
というのは、Monarkのシナリオやテーマを考えるとかなり重要です。

※※※

ゲーム開始後、現実世界で目を覚ました主人公が最初に目にした光景
なんにもよくわからないうちにハグされていた

記憶喪失――ということになっていますが、本当は起動したてで空っぽの人形で自我が希薄だった主人公にとって、最初に現実世界で体験したのが理屈のない無償の愛だったわけで。
この直後、異界に引きずり込まれてピンチに陥りますが妹や自分を助けに来てくれた望にカケル先生を守るために主人公はバニタスに「力を貸せ」と要求し、虚飾の権能をコントロールする力を身につけます。

  • よくわかんないけど自分を大切に、愛してくれている人が目の前にいる

  • その人たちの命がよくわかんないけど危ない

  • 愛してくれている人は失いたくない

というのは、プレイし始めの時点では気付かないのですが「自分を大切に想い、愛してくれる人を守りたいという利他的な欲求エゴの下に行動しているわけで、自身の危険を顧みずに助けに来てくれた千代ちゃんの献身的な行動に早速影響を受けているんですよね。
妹という立場ではありますが、千代ちゃんは空っぽだった主人公にとって、無償の愛を与えこの世界を案内し導いてくれる親同然の存在であり、同時に特別な力を持つ自分は妹を守り助けられる助けてあげたい、という欲求エゴを生むきっかけになっています。

主人公兄妹はこうして相互に協力し、支えあう関係として成立し、最終部では逆に千代ちゃんが主人公の正体を知ってなお、ユガミの反動が世界に生じると聞かされてもなお、主人公を守るという利他的で利己的な欲求エゴを貫き通します。

※※※

これがMonarkのテーマといえるところで

  • 自己を過剰に抑圧するこころや望に信哉のような利他的なエゴは、少しズレただけで悪意や暴走の危険性も高い

  • 自己欲求を過剰に押し通そうとする第一部の敵契約者たちのような利己的なエゴは、他人をいともたやすく殺傷しそのため世間から排除される

なわけで、最終的に必要なのは「行為は利他的」でも「それは利己的な理由から発露していると理解しているエゴ」こそが己も周囲も幸せにするというメッセージになっていると受け止めています(なおそれでも世界全体マクロで見ると歪みは生むということもしっかり言っているのがエグい)
そういうシナリオ運びのために必要なのが、千代ちゃんという非プレイアブルキャラクター。ヒロイン。

※※※

あと、右も左もわからない時分のプレイヤーにとって、空っぽな主人公は正に分身。
そんな主人公に舞台である学校の設定や、真生徒会メンバーのしょーもない趣味嗜好や考え方を聞き出す千代ちゃんはそういう意味でも、やっぱり本作の案内役的存在と言えます。
だからこそ、ゲームにも慣れて舞台の把握もでき、設定も開示されてきて伏線から予想もできるようになった段階で、案内役を取り上げられる。
シナリオの大きな分岐点となる契約者、カケル先生との約束を守れず、彼と同じ挫折を味わう。

千代ちゃんはそういう意味で、よくできたゲーム進行役キャラクターと言えます。
最終部で真生徒会の教室が再びホームルームになり、千代ちゃんが司会をするしょーもない雑談が戻ってホッとしたプレイヤーはきっと多いはずでしょう。

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