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アライメントを既存作品に当てはめる試み 【SPY×FAMILY】編
まずアライメントとは何か?
……面倒くさくて長くなるので、本記事ではかいつまんで説明しますね。
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上述画像の中で、対象がどの方向寄りかを定義する元はゲーム用語です。
ちなみに中心は「中立」「中庸」となります。現実世界の人間の大半は中立にして中庸とか言われています。
元々はD&D(ダンジョンアンドドラゴンズ)やウィザードリィなどの古典的TTRPGでのシステムでしたが、キャラクターフレーバーを掘り下げるのに有効で近年でもFateシリーズなどで採用されています。
詳細は長くなるので、他サイトに譲りますね。
【SPY×FAMILYで試みる】
スパイファミリーを選んだのは、私が逆張りヲタ気味で知名度の高いヒット作品の詳細をあまり知らないためです。
あと好きな作品の登場人物の大半が極端な方向へ行き過ぎているってーのも多いので、バランスが取れている作品も希少です。
例えば忍者と極道とか忍者側は混沌善に振り切っているし、逆に極道は混沌悪の権化だし……。
で、なんでこういう試みをするのかというと、私個人の偏見によるアライメント観に対して客観的観測が欲しいのと、単なる遊び心とネタがあったら記事を書くの精神です。
アニメ第三期も始まるから話題に乗っかるのも当然あります!!
【黄昏(ロイド・フォージャー)】
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中立にして秩序
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ここまで秩序寄りかどうかは議論を要するところでしょうが、黄昏は西国の忠実なスパイとして職務をこなし、その役職と権限のうえで許される限りにおいて家族に対しての愛情を向けているため、秩序ガン振りと定義しました。
スパイ行為そのものがアライメントシステムを揺さぶるのですが「属する組織、属する社会においての秩序」に忠実かどうかを定義するのがアライメントシステムです、
よって、どれだけ劇中で黄昏が犯罪や倫理的にもとる行為をしたとしても、スパイとして、西国を中心とした世界平和をもたらすものとして必要なモノならば、黄昏本人の私情が無関係ならば、秩序に振り切っているモノとします。
元々ルールに忠実な人間である、というのはスパイになる前の軍人時代や「参考書を買うためのお金」と嘘をついてオモチャを買うことに罪悪感を覚えた少年ということからも、かなりの秩序寄りだと判断しています。
※※※
なお、この任務に忠実な黄昏が、疑似家族のためにどれだけ任務を無視してしまうか、というスリルこそが本作の魅力の一つでもあります。
※※※
善悪については「どっちかに振り切ったらスパイなんてやってらんねぇよ」という現実があるため、中立寄りの人間じゃなきゃ最初っからスパイにスカウトされていません。
黄昏は任務に必要なら、平気で女性を口説き落として利用し捨てます。
善良な一般人がひったくりに遭っても、自分がそれを解決できる力を持っていても、任務に関係が無いなら無視します。
他者の弱みを握って有利情報を得るのがスパイの仕事なので、手段は一切問いません。
一方で、任務や権限において許される範囲ならば家族であるアーニャやヨルに対して、真摯な愛情と思いやりを向けています。
上述のひったくりの一件でもまず「自分は助けられるが、任務に無関係なので放置」とまず助けられるかどうかが思慮に上っているあたり、基本的には善人です。
ただ彼は個人的な善が社会に、世界に平和をもたらすわけではないと人生経験上知ってしまっているので、中立側に行っただけで本質的には善寄りの人間です。
幼少時の性格や環境を考えると、戦争さえなければ善寄りの「真なる中立」の一般人Aさんになっていたでしょう。
【ヨル・フォージャー】
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善にして秩序
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殺し屋が善にして秩序かよと思うでしょうが問題ないです。
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ヨルさんは平気の平左で人を殺しますが、それは『殺し屋』としての職務を請け負った際に、標的とそれを守ろうとする標的配下の人間だけを殺すので、完全に秩序(ルール)に則った真っ当な仕事人です。
というか、だからあれだけ組織内での評価が高い。
また『殺し屋』といっても、ヨルさんは東国秘匿公的機関「ガーデン」所属の殺し屋のため、表裏ともに立派な国家公務員です。
国が殺せと言った人物を忠実に私情を挟まず確実に殺す。見事な仕事人です。
だから組織内での評価が(以下略)
一方で劇中では「面倒だからもう殺してしまおうか」と内心思うことも多いですが、それが職務に関係ない私情や個人的事情に依るものであれば結局止めています。立派な仕事人です。
劇中でのヨルさんのハチャメチャでズレまくった行動や感性は、この秩序に振り切った感性がもたらすものです。
※※※
そしてヨルさんは平気の平左で人を殺しますが、善人です。
血の繋がる実弟のユーリ君も、血の繋がらない娘のアーニャちゃんも両方同じくらい愛しており、家族を大事にしています。
黄昏の項でも紹介したひったくりの件でも、ヨルさんは見過ごせずに即座にひったくり犯を捕縛していますしね。こんな一般女性公務員Aさんがいてたまるか。
そもそも、ヨルさんが人を殺しまくっているのは私情ではなく、幼少期は「弟の養育費と生活費を稼ぐため」、劇中では「今在る平和を守るため」の仕事で人を殺しているだけであり、常に誰かのために他人を殺す善人です。
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殺す相手の選別は上述通り、個人で決めずに組織が「こいつは悪人」と言われたから殺しているだけなので真剣に善人です。だから危険い。
概ねロウフルの人は表面上模範的な善人ですが、掘り下げると危険人物という場合が多いので、ヨルさんもその典型例と言えます。
※※※
余談と省略を兼ねてここに書きますが、弟のユーリ君も姉と性格が似ておりロウフルですね。
そして上述通り表面上模範的善人で危険人物です。
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ただ、彼の場合はヨルさんの「社会的平和>個人的な幸せ」に対し「姉の平穏を守るために社会的平和を築く」と優先度が姉に極振りなため、姉ほど善寄りではなく中立寄りの善と言えます。
正直、彼が主人公の読み切り話である「国家間対立を煽り、捏造記事を書く記者は家族の日銭を稼ぐために手段を選んでいられなかっただけ」という男に、彼の許される権限において情状酌量をしてやったお話が無ければ悪寄りの中立秩序判断になっていたかと思います。
【アーニャ・フォージャー】
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善にして中立
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アーニャちゃんはまだ5歳児なので、社会のルールを完全に理解しきれていません。そのため、幼児がカオスとしか思えない行動を取っていても本人自身がそもそも社会ルールの理解も、それに対立する自我も育ちきれていないため中立と判断します。
しかしアーニャちゃんは他人の心を読む超能力を持つため、概ね社会的ルールに則った行動が取れています。まがりなりにもイーデン校に合格して未だ通えているのはこの超能力のおかげ。
……ただし生来の性格は明らかに「己自身の価値観、倫理に依って行動決定する」混沌属性に寄っているため「やや混沌寄りの中立」に配置しました。
5歳児くらいの幼児は上述通り、まだ大人が求める社会のルールや悪意を持った危険人物や犯罪者などの見分けがつかない人生経験しか持たないため、本来なら混沌寄りにすらならないというのが私的判断です。
しかしアーニャちゃんはこれまた心を読む超能力のせいで『「あなた」と「私」は違う』ということを下手な大人より知っているため、自我形成が年齢の割に非常に早く成っていること、
「秩序ガン振りだからこそ、社会的ルールを犯すことにためらいがない父と母」という二人が保護者であることからか、これまた混沌属性を育てる環境下にあることが混沌寄りになる理由です。
このまま育てば完全な混沌善になるでしょう。
※※※
アーニャちゃんが善属性なのは説明不要ですね。
劇中では自分の身体能力、社会的信用で解決できる範囲を越えた悪意や犯罪をテレパス能力で知ってしまい、それを阻止するため支離滅裂なトリックスターとして振舞うのがアーニャちゃんの本作の役割となっています。
このアーニャちゃんの超能力と行動をかえりみると
テレパス能力で悪意や犯罪を察知しても、自分に関係がないなら、解決するためにはリスクを負わなければいけないなら止めるのが中立属性の条件と言えます。
スパイダーマンのピーター・パーカーがヒーローとして目覚めるきっかけとなった「犯罪者を止める機会も能力もあったのに、自分に関係がないから放置した」真なる中立のお手本みたいな選択がありますが、アーニャちゃんは見事にこの選択と正反対の行動を取るため善属性と言えます。
(なおピーター・パーカーもこれで叔父を亡くした経験から「あなたの親愛なる隣人」を自称する善寄りの真なる中立くらいにはなります)
もっとも、善に振り切っていない評価になっているのはなんだかんだで、自分の好奇心、楽しい、腹が立ったから、などの理由でとても善とは思えない行動を選択することもあるため。
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かいしんのいちげき!
アーニャは雷をもらった!
……社会的ルールをまだ覚えていない子供たちだらけの学校では、アーニャちゃんは年齢相応に中立混沌属性になりやすいと言えましょう。
アライメント診断をする際にあたって、アーニャちゃんは特殊例が多かったのもSPY×FAMILYを選んだ理由の一つですね。
【フランキー・フランクリン】
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真なる中立
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情報屋のフランキーはどう考えても秩序ー混沌軸では中立にならなければ、仕事にならないので当然です。
秩序に傾けば情報屋じゃなくて公的諜報機関に就いています。黄昏のように。
一方で混沌にガン振りすると情報収集はできても、情報屋としての信用が得られなくなるでしょう。
客船編で登場したコイツなんかがいい例ですね。
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こいつは情報屋として最初は仕事をしていましたが「開戦のきっかけになる」「ガーデンも敵対マフィアの生き残りもまとめて掃除できる」という理由で依頼人関係者ごと客船を爆破するという行為を勝手にやっています。
「大局的には依頼人たちが望んだ仕事が成るのだからOK」と自分で決めて自分でやっている正に混沌軸ガン振りの危険人物。
こいつは情報屋じゃなくてもうテロリストであり、生きていたら裏社会でもそういう風に認識されることになったでしょう。
一方でフランキーは「西側に加担している情報屋」という点であの黄昏が信用するほどの男です。
情報収集能力だけでなく、クライアントの信頼を裏切るような真似をせず、情報売買の取引相手を選んでいる中々にクレバーで義理硬いヤツです。
もっとも、クライアント側も情報屋を裏切るような真似をすれば、クライアントにとって不利な情報を売買される恐れがある――という適度な警戒心を抱かせなければ舐められて使い捨てされかねないわけなので、社会的ルールと自己判断能力のバランスが取れていなければ情報屋なんてやってられないということですね。
※※※
一方、混沌寄りなのはこの過去の一件と、東国出身のくせに西側に完全に加担するという選択肢を取っているため。
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こんなんでもなんだかんだで戦後五体満足で生きて情報屋やれる程度には一兵卒やれていたのだから、混沌には振り切っていないと言えましょう。
というか混沌に振り切った兵隊は訓練中にたぶん死ぬ。訓練すらされずに戦場に放り出されたら英雄になって将校になるか脱走兵として殺される。
※※※
善悪軸で完全に中心なのは、もうフランキーの性格や言動を見れば説明するまでもないでしょう。
基本的には気が良く面倒見が良いあんちゃんですが、悪友とも言える黄昏をからかえる機会があれば遠慮なく悪ノリし、女の子にモテたいがために色々とそれはちょっとどうなのという行動を取ったりする自分勝手な一面が多いヤツです。
言動や見た目はちゃらんぽらんですが、フランキーは本作の中でもかなり我が強いキャラと言えます。
【エレガント先生(ヘンリー・ヘンダーソン)】
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中立にして混沌
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エレガント先生はファンからの通称通り、そして劇中での言動と行動が全てを物語るように彼の行動原理は全て「エレガントであるか否か」のみです。
エレガント先生がエレガントだと思うモノがエレガントなのであって、それに反するものはノットエレガントであり、自他ともにエレガントたれを貫いています。
まぁさすがに自他にまでエレガントを求めるのは職場の学校内だけであって、一般市民がノットエレガントでも蔑みこそすれ教育的指導はしないでしょう。試験官としての対応が物語っていますね。
問題はエレガントの基準がエレガント先生ご本人の中にしか存在しないということ。
どれほど模範的な教師に外側から見えても本質的にこの人は、自己の信念をそれこそ命を懸けても貫く混沌そのものな人物なのです。
ただ、さすがに酸いも甘いも経験しきった年齢が年齢なだけに、どちらの軸にも完全に寄りきっていないところはあります。
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一時的にコネ=秩序側に傾いた「黙認」という選択肢を取ったものの
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エレガントなフォージャー家の味方をする選択肢を取るのがエレガント先生
※※※
あと割としょっちゅう心中では「わかってねー!」とかノットエレガントな言葉遣いをしてから自戒していたりするので実はこの人本質的には、めちゃくちゃ自我が強くて「秩序なんざクソ喰らえ」って性格なのを「エレガントたれ」で抑圧している人物なんじゃないかと……。
※※※
善に振り切っていないのも、ノットエレガントな人物には容赦ない差別意識を持っているため。
善寄りなのも本質的に善寄りな人物なのか、エレガントな行為が善寄りだから善寄りなのかすら曖昧なくらいにエレガント先生は全てがエレガントで構成されています。
【おわりに】
フォージャー一家三人が秩序寄りが多いので、混沌寄りのメインキャラをピックアップしてみましたが、いかがだったでしょうか。
実際のところ、アライメント定義って「そのキャラクターがどうであるか」というよりも「アライメント定義をする人が秩序・混沌・善・悪という概念をどう定義しているのか」という心理テスト的なところがあるような気もしています。
まぁONE PIECEのモンキー・D・ルフィのようにわかりやすく混沌善にブッちぎった奴もいることにゃいますが。
しかしそうではない微妙な奴をどう定義するか、そもそもアライメント定義自体で測れないからこそ面白いキャラクターがいるのだとか、ストーリーが進行するにつれて徐々に考え方が変わっていくので定義しにくいとか、この試みはハッキリ言って時間の無駄で無為です。
でもそこが楽しい。