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ENDER MAGNOLIA 考察?感想?

トゥルーEDクリア前提のネタバレとなります。
前作ENDER LILIESの完全クリアも前提となっています。


【タイトルの意味】

【前作との比較】

ENDER MAGNOLIA
BLOOM IN THE MIST

がフルタイトル名です。
直訳すると

終焉の木蓮
霧の中で咲く

といった感じでしょうかね。
実際にプレイすると意訳する必要が無いくらいそのまんまの意味でした。

前作は

ENDER LILIES
Quietus of the Knights

でこちらを直訳すると

終焉の百合たち
静かなる騎士たち

となります。意訳すると

終わってしまった白巫女たち
不死の騎士たち

といった感じで、前作の方がちょっと捻っています。


本作ではENDER MAGNOLIAというタイトルですが、主人公の名前はライラック。
前作のLILIES=LIlyがそのまま主人公名だったのと違い、マグノリアは……となりましたが、アーリーアクセス版で既に考察していた方がいるようにパートナーとも言えるホムンクルスである「ノラ」「マグノリア」の短縮形であったため「終焉のノラ」となります。

一方で、今回のサブタイトル「BLOOM IN THE MIST」は霧の中で咲く花……煙の国で産まれた花のことなので出生や生い立ちを考えるとライラックのことを指していると思われます。
fogやsteamの方が煙の国に合いそうですが、実際にMAGNOLIAをプレイするとわかるように「煙の国」という設定の割にあまりスチームパンクしていないので、mist=穢れの霧という意味なんだと解釈しています。

前作のサブタイトルが黒騎士をはじめとした仲間たちを指していたのに対しメインタイトルとサブタイトルで主人公とパートナーの立ち位置が前作と逆転しているのですね。

【花言葉から】

マグノリア=木蓮から。

  • そもそも前作が百合というタイトル名に反して睡が劇中で目立っており、テーマ的にも重要な意味を持っていた

  • なので今回もライラックが主人公なのにマグノリアがタイトル名になっているとも言える

  • なので繋がり

  • 木蓮の花言葉は「忍耐」「威厳」「崇高」「自然への愛」「持続性」

  • おおよそノラの出自、境遇に一致するがENDER=終わらせる者としての意味が付くので一気に不穏な意味合いとなる。

実際にEDでは「自然への愛」以外は全てノラは「終わらせる者」としてその選択をしました。
「自然への愛」はそもそも技術国家である煙の国という舞台の時点で終わっているので、むしろ「自然への愛」を取り戻すという形になります。

ただノラというよりホムンクルス全体の出自、正体を考えたうえで、ライラックの出自と「ホムンクルスと人は変わらない」という主張を考えると「自然への愛を終わらせる」とは「穢れと共に生きていた古の民の文化を終わらせる」という意味にもなります。
「持続性」「忍耐」が本作ではネガティブな意味合いとして使われているのでそれら全部の禍根を断ち切り、征服された古の民も、侵略してきた煙の国の民も、手を取り合って新たな道を歩いていこう、という意味合いが込められているのでしょう。

またノラは公式イラストでは大鎌を持っている方が多く、劇中でも「ミリアスの死神」と死神らしさを強調されているので発売前の時点で「終わらせるマグノリア=死神のノラ」だと予想できた方はいたんじゃないかと。


ライラックの花言葉は

  • 「友情」「思い出」「純潔」

  • 「純潔」は百合の花言葉にも含まれる(前作繋がり)

  • ホムンクルスも人も同じだと主張し、どちらも助けてお互いに共存し合うことを理想とするライラックの思想は「友情」

  • ライラックのそういった理想の根源はおぼろげな記憶に残った女性(リリア)との「思い出」から

  • 概ね「純潔」さ故に数少ない「思い出」から「友情」を霧の中で咲かせたライラックらしい花言葉

また、木蓮はその名の通り、ライラックも木に咲く花なので、そういった意味でもちゃんと繋がりを持たせています。
木蓮の開花時期からライラックの開花時期に繋がるのでそういった意味で「持続性」→「友情」とも取れなくもないですね。
主人公なので仕方ないですが、ライラックはリリアをはじめとした多くの人々に多くの役割を期待されて逃がされ、その使命を全うしたのでそういう意味でも花言葉の「持続性」「思い出」が混ざっており、開花時期繋がりはあるとも言えるかも……?

ちなみにこのあたり、前作のリリィちゃんとは正反対ですね。
リリィちゃんは状況証拠からおそらくファーデンが「最悪の事態になった時を考慮した切りたくない切り札」として製造、保管されていた娘だと考察されています。
期待されていると言えば期待されているけれど「その役割は全うしてほしくない。自分たちで事態を解決するのが一番」なわけなので。ファーデンだって、本当のリリィだって、フリーティアだって、リリィちゃんにあんな過酷な使命を背負って欲しくなかった。
ライラックとノラはその点、最初っから煙の国の現体制をぶっ壊すために逃がされ、役割を果たしたので正反対というわけです。

概ね前作と比較すると、ものすごく前向きなタイトル名、テーマだということがわかります。

【ライラックの出自】

前作と同じOPで目覚める構図
リリィちゃんと違って紋章印が額に無い

【出生と正体】

2/2 追記/編集

発見された時の赤子のライラック
赤子と言っても産まれたてというほどではない

コメント欄で指摘していただいたのですが、フロスト家の複製体の赤子を浄化柱のコアとして設置していたのでは?という説を支持致します。

浄化柱は本編ではリリアが接続されていた施設、装置ですが、その名の通り穢れを浄化するためにデクランとアベリアが共同開発したモノです。
ただその中身を見た調律師長ヨーランの記述いわく「こんなものを造って穢れを浄化して救われるものなんてあるのか?」と、彼が忠誠を抱くアベリアに疑心を抱かせるほどの代物だったと仄めかされています。

tips「穢れた予言書」には
「古の民は根源の地(地下)で生まれ、還る。(略)地上に遺ったアベリアの還りを待つ」
と報復と復活の野望が書かれているあたり、元々古の民は地下で出産し、地下に埋葬する文化があった(ENDER LILIESの時点でその文化があるのが示唆されている)ので、アベリアはそのためにフロスト家を起ち上げミリアス家と協力し、最終的に煙の国を穢れで自滅させる本編のような計画を百年以上かけて進めていたのではないでしょうか。
その計画の最終兵器が浄化柱である、と。

浄化柱は機械制御され、コアとして生きた人間が使われているのでそういう意味では巨大なホムンクルスと言えます。
穢れに対して強い耐性を持った巫女の器(デクランとの戦闘前の台詞)であるライラックをコアとして置くことで、多くの穢れを吸収し耐えきれるスペックがあり、暴走しないよう制御された――いわば人工の穢者の王
これは煙の国を亡ぼすだけでなく、大陸の他の国家にも侵攻可能な強力な兵器として運用可能なので、野心家で倫理観が無いデクランはそれに乗った可能性は十分ありえます。


こんな出自のライラックが「ホムンクルス=穢れた人の成れの果て=穢れに耐性が無い侵略者の末裔」と人間は変わらないと主張するのは、こういう意味でも重要な意味を持ちます。
穢れを生み出す恨み、憎しみで相対するのではなく、共に手を取り合って生きていこうと。

まぁ同じ人間だからこそ些細な違いで争いが起き、憎しみ合い、恐れるのだとも言えますが……。

ギルロイが「死の雨が降り注ぐ中、フロストの人間だけが平気で歩いていた」と慄きながら語るシーンは「似ていて非なる人間だからこそ恐ろしく、受け入れ難い」と言えます。
前作での「白巫女」たちも「崇拝」の対象としてプラス方向で特別扱いされていたのは同じなので、ライラックの同じ目線で共に歩いて行こう、という思想がどれだけ異端かは理解していただけるでしょうか。

【リリアが拾った理由】

ところで上述の説の場合「リリアたちが根源の地を調査する前に、根源の地に浄化柱が設置されていた」という矛盾が生じます。

ただアベリアは古の民そのものであり、その遺跡についての知識は誰よりも深いので調査するまでもなく根源の地が何処にあり如何なる場所かは知っていて当然なので、秘密裏に設置するのは難しくありません(力仕事はホムンクルスがやってくれますし、彼らは黙秘命令を拒否できないので……)。

ではなぜリリア、ノラ、ラーシュの調査隊が派遣されたのか?それをなぜアベリアとデクランは止めなかったのか?

おそらく、領主であるケイン・ミリアスは弟のデクランがアベリアと協力して良からぬことを企んでいるのを見抜いていたのではないでしょうか。
ノラはリリアのホムンクルスでフロスト家に送り込まれたスパイですが、同時にリリアもまたミリアスへのスパイとして使われていた感があります(ライラックが育った生体研究所はミリアスの管轄下なので、リリアはミリアス家にかなり優遇措置を取られていたと取れる)。
リリアはフロスト家に対する忠誠心があまり無い様子の女性に見受けられるので、ケイン・ミリアスからの要請に応えるというよりその要請権限を使ってアベリアやデクランの妨害ができない調査が可能だったのだと私は考えています。


この結果として、コア=巫女の器であるライラックが回収されたことで、浄化柱が浄化装置として機能しなくなった。
そして、穢れが浄化しきれず死の雨が降る原因となった。

実はこういう流れではなかったのか、と考えられないでしょうか。
ギルロイ=ケイン・ミリアスが死の雨を降らせたのはフロスト家だと決めつけていましたが、この説だとある意味ではそうではあります。
ただアベリアとデクランは以前はまともな人格の持ち主だったとも証言されているので浄化柱を設置時は、本当に少数の犠牲で国を守る装置として考えられていた可能性だってあります。
しかしリリアがコア=ライラックを回収してしまい、再びコアを設置する隙が無くなったせいでアベリアとデクランが狂っていったのだとしたら……ENDERシリーズではこっちの方がしっくりくるやるせない話だと思います。


なお余談ですが、死の雨が降っても割と技術でなんとかなっている煙の国と、降ってきた途端にあっという間に亡国した果ての国との差はなんなのか……となりますが、ENDER MAGNOLIAはENDER LILIESの続編で数十年後の世界のお話なのです。
果ての国が亡国した原因を調査されていないわけがない。その対策を立てていないわけがない。

その一つが浄化柱だったのですが、さらなる次善の策をあらかじめ用意していたと考えてもそう無理はないかと。
また、同じ死の雨でも濃度が果ての国と煙の国とでは違い、圧倒的に果ての国の方が危険だったとも考えられます。
何せ果ての国の穢れの元を辿れば、穢土の地で怨みの塊となった古の民の成れ果てである、人の原型すら保っていなかったマジ化け物である穢者の王なので……。

【育てられた環境と教育】

ライラックは発見したリリアが育てていました。
生きる術に必要なために調律師としての教育を施していましたが、人間たちよりホムンクルスたちの方が多い特殊な閉鎖環境のためライラックはホムンクルスに対して強い親しみを持った子供に育ちました。

なぜリリアがライラックの存在を秘匿したのか?これは理由が幾つかあると思われます。

  • 調律師の殺戮を始めたギルロイに見つかってしまうことを危惧した(ライラック発見時、死の雨が降り始める前後どちらかはわからないのでこれは不明)

  • アベリアの次の身体の乗り換え先として目をつけられることを危惧した

  • 上述のことを無視しても、巫女の器で根源の地から発見された赤子ということで『特別扱い』されることは避けられない。命も危ない。ライラックが自衛できる程度に成長するまで育てていた

結果的にこの自衛能力と元々の潜在能力が高すぎて劇中での大活躍に繋がってしまったのかと思われます。

【性別論争】

リリィちゃんいわくライラックもまた穢れに対して強い耐性を持っていることや、先述のデクランの台詞から巫女の血筋であることはほぼ間違いないです。

……こうなると巫女=女性なので、ライラッ君男の子説を否定することになりそうですが、ンなもん自由に解釈すればいいンだよ。
本編でもライラッ君は一人称を使わない、性別どちらかをたずねられたり特定する描写が無いため、意図的にどちらに取ってもいいようにシナリオが書かれた節があるので……。

前作のリリーズは全て少女でしたが、魂の複製体を性別の違う赤子に入れたらどうなるのか?という点に関して答えは出ていませんしね……。

【果ての巫女】

初遭遇シーン
魔術学院の奥で出会うけれど背景がかなりENDER LILIESを意識している

前作主人公のリリィちゃんのこと。
本作でも登場し、喋られるようになりました。

煙の国に来た理由は隣国であることと、お墓を作り終えたので、生きている人間と触れ合うために旅に出かけただけとか。
一応巫女の血筋を探しているような描写はありましたね。

劇中ではそのような様子は一切ありませんが、ライラックの見えないところで黒騎士と会話していたんでしょうね(石板見せてもらってテンション上がっている場面は黒騎士がリリィちゃんにしか聞こえない声で何か言っていると思う)。


外観年齢は前作EDの14~6歳くらいのイメージから、18~20代前半くらいにまで成長した印象。

ただし穢れによってリリィちゃんはまともな身体ではなくなっているうえ、ENDER MAGNOLIAの世界は「前作から数十年後」と明記されているので、ほぼ間違いなく成長と老化は鈍化しているのだと思われます。

着ている衣装はあまり変わりないものの、長袖でスカート丈が長くなり、肌の露出を極限まで抑えてフードまで被っているのは触手を隠すためでしょう。
これでも前作真EDのラストバトルで真っ黒になるまで汚染された状態からよく回復したものです。穢れはなんだかんだ言って巫女の体内で本当の意味で浄化されるのかも。

片目を隠しているのはフリーティアの髪型を真似たのか、片目だけまだ穢れの影響が残っているからなのか。

ちなみにフードの色が黒いのは黒騎士に併せたからだと尊いなとか……。


また、リリィちゃんは「もう自分のお守りは使えない」と言っていることから、フリーティアを浄化した際に再びお守りが限界を迎えた模様。まぁ許容量的にそうなるわな。
ファーデンが用意していた機械でもう一度修復しなかったのは、材料が足りなかったんでしょうね。

本人の穢れも抜けきっていないことから、重度の浄化は行っていません。たぶん黒騎士に止められている。

触れているだけでダメージを負う高濃度の穢れた水を抜けた先で休んでいたリリィちゃん
かなり辛そうにしていましたが、ライラックは「痺れて少し辛い」程度で済ませていた
おそらく蓄積された穢れ濃度の違いで苦痛がライラックは大分マシなのだと思われる

喋ることができたり、色々古代魔術に対して知識があることから、旅に出る前に黒騎士から教育を受けたりファーデンやイレイェンの研究記録などを読んだ可能性がありますね。
ちなみに前作で喋れもしないリリィちゃんに代わってtips読んでいるのは黒騎士説が濃厚です。黒騎士がなぜ果ての国の文字を読めるのか?という点も彷徨って白巫女の血筋を探している間に、暇潰し兼情報収集のため学んだという説が有力。

浄化を用いずとも凄まじい戦闘能力を持ち穢れについての知識が深いので、旅に出た理由は今回のように穢れに苦しむ人々を救う手助けをする、というのもあるのかもしれません。

カッコよく逞しく成長しましたね……(元から逞しいスーパー幼女だった気もする)。

【真EDについて】

「え!?もっといい手段無いのか!?」と驚いて探したけれどクエストを見たらアレが真EDだったという、ハッピーエンドとは言い難いのがENDER MAGNOLIAの真ED。

まず真EDとそれをしなければいけなかった原因をまとめていきます。

  • 「煙の国」のエネルギーは「根源の地」から引き上げた魔力。労働力はその魔力で稼働するホムンクルス。この二つに依存しすぎていた

  • 穢れの浄化手段が「煙の国」には無いため穢れへの対抗手段は非人道的だろうがホムンクルスという技術に頼るしか無かった

  • このため「根源の地」から魔力を引き上げることにリスクがあっても、それによるシステムが実質崩壊しているとわかっていても、止めるに止められなかった

  • ライラックとノラが真EDで選んだ手段は「根源の地」の魔力を解放して死の雨=穢れの充満を止めること。だがそれをすると上述のエネルギーと労働力問題が浮かび上がり、穢れに関しても根本的問題は何も解決していない

  • しかしこのままの体制とシステムがいつまでも保つわけがなく、劇中時点で既に崩壊していたので前作ENDER LILIESのような穢れに満ちて国民全てが穢者と化してしまうよりはマシな選択ではある

言ってしまえばENDER MAGNOLIAとは、前作ENDER LILIESで「もし救国の手段が間に合っていれば…」のifを本編シナリオに持ってきたと言えます。

【前作ENDER LILIESの救国手段】

これはLILIESでは「惜しくも間に合わなかった」という感じで描かれていますが、果ての国が健在であったとしても問題は山積みでした。

  • フリーティアが白巫女たちに自分の穢れを分散することを了承していたら?

  • それが一度でも行われてしまえば、必ず国家保持のために行われ続ける。結果的に数えきれないほどの穢れに苦しむ巫女のクローンが生まれ続ける

  • これは事実上、ENDER MAGNOLIAのホムンクルスとクローン白巫女=通称リリーズとほぼ変わりない

また護符の再生が間に合い、フリーティアの穢れが彼女の中で徐々に収まっった場合でも

  • フリーティアの穢れを浄化するために製造されたリリーズを放置するわけがなく、彼女たちは動けないフリーティアに替わって果ての国の穢れを浄化し続けることになる

  • 果ての国の王は一番成長しているリリーズを一人預かっており、彼女の遺体があるのは寝室であった。つまり果ての国の王は白教の象徴である白巫女と王権を併せた王室の子を作り、担ぎ上げようとしていた

  • リリーズ製造のためには生まれたての赤子が必要である。そもそもリリーズ製造方法自体が倫理的に大問題

  • 以上のような、我が子のように慈愛を以て育て接していたリリーズが不憫な人生を歩み続けることで、フリーティアに負の感情が溜まり、彼女がため込んでいる穢れが増加し、やはり死の雨が降る可能性は高かった

さらには穢土の地からの古の民の成れ果ての侵攻の危険性は未だあり、リリーズという穢れのコントロール手段を手にした果ての国が他の穢れに苦しむ国家に対して大きなアドバンテージを得てしまうことから、国家間バランスが崩れ大陸全体が不穏なことになる要素が山盛りだった。


こういった事情は前作の時点で考察されており「そもそも古の民の住む大陸に侵略した数十年前の時点でゲームオーバー決定だった」というのが考察勢ファンの総意でした。

その「決定されたゲームオーバー」を覆すためには、ENDER MAGNOLIAの真EDのような思想しか無い。いや正確には……

【古の民の末裔と侵略者の民の末裔が手を取り合うこと】

結局、これしか無いのです。

不当に仲間を、土地を、全てを奪われた古の民たちはそれでも復讐の念を浄めて穢れと共に上手く生きてきた歴史も伝統も捨てなければいけない。
アベリアが暗躍していたように、穢れによって侵略者の末裔たちを絶滅させた先で待っているのは、古の民本人である黒騎士ですらドン引きするレベルの穢れ果てた土地なのだから。
そんな所で復興するほど、古の民やその末裔が残っているかと言えば……。


侵略者の民の末裔たちは、自分たちの祖先がしでかした罪を知って古の民と寄り添わなければいけない。

本編でギルロイが死の雨を受けて平然としていたフロスト家の人間に抱いた「こいつらは違う生き物」という根源的、生理的恐怖を抑えて、穢れと上手く共存するスペシャリストである古の民たちの手を貸してもらわなければいけない。
強制ではいけない。なぜなら穢れは負の感情によって増すのだから。
あくまで古の民側から自発的に協力してもらわなければいけない。


よって、古の民であるライラックと、侵略者の民ホムンクルスであるノラが手を取り合って、穢れに依存した体制を破壊するのは絶対に必要なことだったわけです。

例えその結果、エネルギーも労働力も失ったとしても、それならそれなりに他の手段で生きる術を見つけられるはず。だって、人間は元々そうして生きてきたのだから。

幸い、ENDER MAGNOLIAではルヴィを始めとした一部の下層の人間のように、本来なら死に瀕するであろう状況下でも逞しく生きている人々がいました。
彼らがまだ生きたいという活力を持っている内に体制を破壊しなければいけなかった。
拙速は巧遅に勝る、というわけで例え愚策であろうと迷っている暇なんかないくらい、煙の国は追い詰められて、まだ復興の余地はある状態だった。

なので真EDはああするしかなかったわけです。
それこそライラックが真EDで言うように「終わりじゃなくて始まり」であって、一度禍根を終わらせなければ新たな生きる道を歩むことはできない、というルートだったと。

【死神】

なお「終わらせる」ために真EDでは天傘を破壊しますが、ノラは上述した古の民と侵略者の末裔、二つの代表をその手にかけています。

一つは古の民の末裔であるフロスト家の当主であるアベリアを殺害したこと。
もう一つは、ミリアス家の前当主でありそれを引き継ぎ、魂(コア)もケイン・ミリアスの複製体であるギルロイをラストバトルで破壊したこと。

フロスト家とミリアス家はフロスト家が魔法技術を提供し、ミリアス家が魔導具を作成したり、ミリアス家が製造したホムンクルスをフロスト家が調律することで機能させ続けるなど、表面上は上手く行っていた期間が長かったようです。

ただし水面下ではミリアス家は主導権を握りたがっており、フロスト家の当主であるアベリアは侵略戦争時代から魂を別人物の身体に移して生き永らえて復讐の準備を整えていたわけで、寝首を掻く機会を互いに伺い合っていた不穏な協力関係でした。

この状況をリセットするために死神ノラはミリアスもフロストもどちらの頭も刈り取る必要があったと言えます。
とは言っても皆殺しではなく、あくまで代表を殺して禍根を断つのがノラの役割なのですが(そもそもノラ自身がミリアス家の人間・・である)。

【シリーズと言ってもテーマが違う】

ENDERシリーズで正当続編なのですが、本作と前作ではシナリオのテーマが違うのです。

ENDER LILIESはゲーム開始時点ではもう何もかも終わってしまった話。
なぜ終わったのかをプレイヤーとリリィちゃんは知り、死者を悼み弔う物語。

ENDER MAGNOLIAは終わらせるための物語。
なぜ終わらせないといけないのかをプレイヤーとライラックは知り、今生きている人々と共に生きて、抗い、死んで行くことを受け入れる物語。

終わりに抗った人々と、終わらせるために抗う人々とではそりゃ色々と話が変わるわけでして……。

【ED後の煙の国】

ぶっちゃけギルロイが心配する事態はまだマシなんじゃないかな!?

確かに魔法に強く依存したあの世界で魔力供給源が切れてホムンクルスも寿命を迎えることになるわけですが、まぁそれでも個々人に魔力はありますし、前作イレイェンが所属していた魔術協会なる組織のように魔術のノウハウはあの大陸全土にどうやらあるようなので。

まぁバタバタくたばる人が続出するでしょうが、それは本編時点でも一緒だったので、違う形になっただけで……。


正直、ホムンクルス製造方法や「根源の地」という概念を知っている技術者たちが他国に渡って同じことやらかしかねない方が問題のような気がします。

ただ、穢れのスペシャリストであるリリィちゃんがあの大陸には健在で、実際リリィちゃんのおかげでENDER MAGNOLIAの真EDには辿り着けたわけですし……。
何か問題が起きそうな国にはリリィちゃんが赴いて何かしら助力や……最悪武力介入もできるしなぁ、リリィちゃん……。不死の騎士団連れているようなもんだから……。

こう考えると、ENDER LILIESは「終わってしまった物語」ですがLILIESで終わりの運命に抗い続けた人々の想いは無駄では無かった、と捉えられますね。

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