シャドーハウス エドワードについて考える
アニメ二期放送も近いシャドーハウスだが、今回はエドワードの心情考察記事。
彼が今後起こす行動の予想とか能力考察とかそういうのは無い。あくまで心理面で。
なおアニメのみ試聴派の方には先に断っておくが、原作最新巻の11巻のネタバレ込みでお話するので注意していただきたい。
【性格と知能】
【嫌な奴】
言うまでもないことだがエドワードは嫌な奴である。
それもとびきり嫌な奴である。
だから気に入った!
【洞察力は確か】
お披露目では正直……というか基本的にケイトが絡むとエドワードは毎回彼女にしてやられているのでちょっと残念な悪役気味なところがあるが、冷静に見てみるとやっぱりその能力はかなり高い。
エドワードがケイトを反乱分子として執拗に付け狙うのは事実的中していることであり、彼の嗅覚の鋭さを物語っている。
オマケにケイト本人にはそれを悟らせていない。まぁケイトの言うことも当たってはいるのだが、彼女はどうも自分の頭の良さが敵を作るということに無自覚なところがある。
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これは正確な推測ではないが、当たらずも遠からずといったところのエドワードの推理。
バーバラ自身は現状維持に腐心しているのだが、バーバラ個人はケイトにある程度心を許しており、彼女が動きやすい環境を整えてしまっており結果論としては近いところを突いている。
エドワードの油断ならぬ所は、子ども時代はバーバラをかように軽蔑していたにも関わらず、上記の引用した台詞のように現在では決してその存在を軽んじてもいないという所である。
基本的に、策を練っている段階だとエドワードはかなり慎重なのだろう。
ただし策が上手くハマって予想通りの展開にご満悦になっていると足元をすくわれるタイプ。
一言で済ますと「詰めが甘い」。
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また、視察に来た時は今度は逆にケイトに一杯食わせている。
能力バトルでは能力の情報を敵対者に渡さないのは基本。
シャドーハウス(作中施設での意味)全体で言えばエドワードの方が有利な立場にあるとはいえ、彼も決して自由な権限を持っているわけではないことを考慮に入れるとかなり彼は善戦している方と言っていい。
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スパイというか、単なる情報提供者に仕立てたサラの士気が落ちないように文面では気を遣いつつ、要するに「お前に情報や状況操作できるほどの才覚があるなんて最初っから期待してねーよ」という冷酷だが人選がきちんとできているエドワードさんである。
他人に過度な期待は寄せないタイプなのだろう。まぁナルシストだからかもしれないが……。
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正直エドワードは敵としてはかなり厄介で恐ろしい総合能力を誇る。
これだけ知恵が回るうえで、すす能力は圧倒的に子どもたちより上なのだから始末に負えない。
彼が本領を発揮できないのは、幸いながらシャドーハウスが一枚岩ではなく行き過ぎた競争意識のせいで互いに足を引っ張り合う構造になっているおかげである。
ケイトは皮肉にもぶっ壊そうとしている組織の構造そのものに現状守られている面がある。
【口喧嘩は得意】
年長からの嫌味を華麗に嫌味で返すエドワードさんの図。
シャドーハウスはかなり陰湿な嫌がらせが横行する場所で作品なので、舌戦が得意というのは大変なアドバンテージである。
まぁ敵を作りやすいということでもあるがな!
トマスにしろテイラーにしろライアンにしろ、格上の相手にはちゃんとヘコヘコしているし嫌味を言う相手やタイミングもきちんと選んでいる。
我慢できる分には我慢するし、やり返せるならやり返しておく。
感情に身を任せず冷静に頭を回転させられる能力があるという証拠だろう。
逆にケイトにああも翻弄されるのは、なまじ相手の方が格下で情報を与えてはならないという条件下だからなのだと思われる。
書いてて気づいたけどこれって結局はやっぱ油断していると詰めが甘いって話になるのか……。
【確執のクリストファー】
【光ある所に影有り】
エドワードはクリストファーと同期であり、この四人は「最高の世代」と子どもたちからは称えられている。
しかして実態としては慕われているのはクリストファーのみであり、他の三人は劣等感を抱いていたようだ。
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エドワードは認めたくはないだろうが、現状の彼に多大な影響を与えた人物がクリストファーであることは否めない。
従来のやり方に捉われない凝ったお披露目の演出、旧来の既得権利にぶら下がる年長者たちへの軽蔑、新しいやり方を模索しより良い結果を得ようとする野心。
この革新性は、クリストファーそのものである。この二人は性格は正反対だが新しいやり方でシャドーハウスにより貢献したいという気持ちは全く一緒だったりする。
11巻で明確に示されるまでもなく、クリストファーの存在が語られた7巻時点で十分、エドワードはクリストファーに対して強いコンプレックスを抱いていたことは伺えていた。
強い上昇志向を抱くのはシャドー家の仕組み上当然の成り行きだが、エドワードが殊更に強いのは、子ども時代に周囲からクリストファーと比較され続けたことが原因ではないかと推測できる。
敵を作りやすい性格のエドワードと、年下をすぐに懐柔してしまう理想的な兄像を体現するクリストファーでは、彼を正統に評価する子どもは少なかったようである。
皮肉なことに、それこそ敵対的立場にあるクリストファー自身とマリーローズがとくにエドワードを高く評価していたように見受けられる。
【これはライバル心なのか?】
かく言うエドワードだが子どもの頃はクリストファーとバリバリに対立していたような様子も無かったりする。
そもそもしょっちゅうケンカでもしていたらもっと子どもたちの間で「僻み野郎」だの「紅茶星人」だの誹謗中傷されていただろうが、今の子どもたちを見る限りエドワードたちの存在感は単に薄かったくらいの印象しかない。
プライドと計算高いエドワードが、そういう結果になるのが明白なのにクリストファーと対立するわけがないというのはまぁ当然のことだろう。
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しかしプライドの高いエドワードのこと、内心「いつかどちらが上か白黒はっきりつけてやる」などと思っていたとしても、不思議ではない。
だがクリストファーと決着をつける機会は永遠に喪われた。
結果、行き場のなくなった子ども時代の劣等感は「シャドーハウスに貢献し、シャドーハウスそのものであるおじい様に認められることでクリストファーを越える」という形に結実したのではなかろうか。
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私は忍者と極道が大好きだし、ベルセルクも好きだしるろ剣も武装錬金もガングレイヴも好きなわけで、要するに親友でありライバルでありしかし二人の間にあるのは爽やかな友情ではなく確執であるという、そういうライバル関係が大好きである。
なのでそういうフィルターが大いに入っていることは自覚しているわけで、このエドワードとクリストファーの間にあるものは果たしてライバル心なのかというのは、あまり自信を持って言いにくい。
そうだといいなぁくらいのお話である。
なお、クリストファーが本当に死んだのかどうかはアンソニーの証言しかないので実際の所は不明なのだが、どの道エドワードの立場からすればクリストファーは大人になれず死んだという情報のみを信じるしかないので、この説を揺るがすことではない。
いずれにせよエドワードに何かしらのシナリオ的な決着をつける時にはアンソニーが深く関わりそうで、クリストファーに執着心を抱いているとしたら中々エドワードが不憫だと思わずにはいられない。
【三人の絆】
エドワード、アイリーン、ジェラルドの三人は同期の友で、非常に仲が良い。
あの皮肉屋なエドワードが、掛け値なしの本心から二人を信頼していることが劇中の端々から伺え、そしてアイリーンとジェラルドもまたエドワードを支えようという気概が見える。
シャドーハウスにおいて同期はある種の絆で結ばれやすいようである。
恐ろしいお披露目を共に潜り抜けた共感なのか、それとも生き人形同士が同郷だからという無意識の親しみが成せる絆か。
いずれにせよ、この三人の絆は親友というより兄弟に近い感覚がある。
異性のアイリーンが混じっているのにとくに性を感じさせないやりとりをするというのも大きい。
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ところでジェラルドとアイリーンは表情筋が死んでいるくせにめちゃくちゃ短気で腹筋にダメージを与えてくる。
とくにアイリーンはかなり攻撃的であり、堀江由衣ボイスで上の画像の台詞を聞ける日を楽しみにしている。
ジェラルドは先ほど引用した画像のように「エドワードが前を走り自分たち二人がサポートする」と言っているが、この二人の血の気の多さを見るに結構エドワードが二人をフォローしている場面は子ども時代の頃から多かったのではなかろうか。
アイリーンは思ったことをストレートに口にするうえ行動にも移すし、ジェラルドは研究班特有の空気読めない天然だし、先にも挙げた通り口喧嘩が上手いエドワードに二人は救われる場面も多かったのではなかろうか。
ぶっちゃけた話、エドワードは自分一人で駆け上がろうと思えばできるだけの才覚があると思う。
下手をすると二人に脚を引っ張られる危険性すらあるというのに。
それでもアイリーンとジェラルドのフォローをしながら駆け上がろうとするあたり、彼の人間臭さが滲み出ている。
シャドーハウスの魅力的なところは、嫌な役目を担わせられるキャラですらなんだかんだでどこか憎みきれない人間らしさがほんのわずかな登場シーンでも伺えるところだと思う。
【反乱分子の想定】
大人たちの棟ではエドワードが危惧する反乱分子の想定は、とくにされていないように見受けられる。
トマスにしろライアンにしろ、シャドーハウスへの叛逆を企てるシャドーを想定して奔走するエドワードを嘲笑しているところすらある。
とくにトマスの危機感の無さは致命的であり、つい最近まで子どもたちの棟の管理者をしており現状把握をかなり正確にできる立場だというのに、11巻ではストーリーのターニングポイントの一つとも言うべきほどの軽率な曝露をしでかした。
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これは大人たちの幹部級が無能だというより、エドワードの生育環境が成し得た実感と言うべきだろう。
彼は誰よりもクリストファー政権下の子どもたちの棟の実態を見てきたシャドーであり、いわゆる「余計なこと」を考える余地を与えられた生き人形たちと直に接したであろう経験を持つ。
存外慎重派なエドワードのこと、案外クリストファー本人にこれらの苦言をした可能性すらある。
というか、クリストファーはエドワードのそういう的確な批判者、野党としての立ち位置を高く買っていたのではないかとやっぱり勝手に妄想している。
子どもたちの棟ではクリストファー以前と以後がくっきり分けられるほどの内部意識の差が生まれており、模範的なシャドーであるエドワードが反乱分子の想定をするのは大人になって即生まれた危惧ではなかろうか。
生き人形に対してドライな感情を持つ模範的シャドーであるエドワードが、そのような思考回路に至るのかどうかは疑問ではあるが、ウェットな感情移入をするマリーローズとバーバラを間近に見てきた彼が「大人になる時に生き人形は実質死ぬ」という事実に耐えられないシャドーが生まれ始めていることは理解できる下地はあったとは思う。
情で理解したのか論理で理解したのかはわからないが、いずれにせよエドワードの想定は的確で、シャドーハウス全体で見ればぶっちゃけ彼はクリストファーが好き勝手やった後の尻拭いをさせられている立場と言える。
まぁ敵がいればネズミを摘まみ出して功績に出来るとポジティブに受け止めているのだが。
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ただ事態はエドワードが入手できた情報よりさらに複雑で、彼が危ぶむケイトの抱える秘密は、エドワードが想定している以上に重大である。
というか、それがわかってしまえばもうなりふり構わずケイト捕縛、あるいは抹殺にまで走るだろう。悠長にはじめてのおつかいをしている暇などない。
これらケイトとエドワードはじめとした情報戦のやりとりはシャドーハウス(作品としての意)の大きな魅力である。
【まとめると】
エドワードって正直貧乏籤引いているよな!って思う。
シャドーハウス全体が成熟し、より事業を拡大しようという時期にクリストファーにバーバラという益にも害にもなる爆弾を抱えてしまった。
シャドーハウスというシステム維持のために、この爆弾処理にエドワードは孤軍奮闘している。
情報のやりとりが子どもと大人で隔絶しているために起きた不備を、必死にエドワードがなんとかしているという具合だ。
アイリーンとジェラルドの性格がもっと社交的であるならば、他の大人たちにこれらの危惧をもっと柔和に懐柔戦略で浸透させることができたのかもしれない。
だがこの二人は明らかに能力偏重型で社交性はマイナスに振り切っており、顔がめっちゃ怖い。
顔というものに対してコンプレックスを抱くシャドーという種族にとってこれは痛手と言え、エドワードの肩にのしかかる仕事量がとにかく多すぎる。
ストーリ上は敵対的立場にあるエドワードであるが、彼は彼なりに幸せな道を辿って欲しいと願ってしまう。