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忍者と極道 救済なき医師団の強引な救済をバトル展開から見る
あけましておめでとうございます。
本年西暦2024年令和6年もよろしくお願す!!
2024年が始まり連載も再開です!細かいことは抜きで楽しんでいただければ!
— 「忍者と極道」公式 (@nin_goku) January 1, 2024
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忍極が無事連載再開されたうえで、全話無料公開(去年末もやっていたのですが)しているので、これを機に現在連載中の第五章「極契大壊嘯」編のテーマとバトル展開の流れが一致していることに気づいた記事内容となります。
【救済に固執しすぎて冷静さを失う】
救済なき医師団との初戦である歪罹井戦から「ん?」と違和感を覚えていたところなんですが、今回の「極契大壊嘯」での戦いでは
「追い詰めた忍者に対して王手を確信した救済なき医師団が、冷静さを失ったところで逆転される」という流れが一貫されているんですよね。
ギリギリ違うかなーと言えるのが美陀戦くらいでしょうか。
実際にスクショを交えつつ流れを見てみましょう。
【歪罹井戦】
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歪罹井さんはこれで勝利を確信し、斗女たんを文字通りに殺して
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麻薬で夢見ってしまうほど油断し背後を隙だらけにしてしまいました。
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結果、まさかの現代版身替わりの術で首ちょんぱ。
……これでもなお後に数ページ足掻くのだから忍極の人間はちょっとおかしい。
【美陀戦】
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一方で美陀は催眠に完全に堕ちてから、情報を引き出そうとしました。
とはいえこれは舐めプというより今後の極道の戦いを有利に導くための絶大なアドバンテージとなるので、判断自体は間違っていませんね。
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しかし予想外の自白内容に聞き入ってしまった結果が、逆転の糸口となっています。
ただこのように美陀は情報の引き出しよりも確実にトドメを刺す方を選んだあたり、一番油断していない救済なき医師団の一員だったと言えます。
さすが精神科医だぜ冷静さを中々失わない(あとたった1ページでさっさとそれだけの展開に持って行くスピード感近藤先生心底尊敬ェッス)。
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しかし時既に遅し。美陀が逆に催眠術にかけられ形勢逆転。自殺した!
【嫌慈&叛巻戦】
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これはまず嫌慈の献身的自爆によって忍者たちにさらなる弱体化を重ね、叛巻は戦闘当初は嫌慈の犠牲を無駄にしないため、冷静に安全確実な大量出血死を狙っていました。
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しかし右龍の怪物じみた超人的身体能力で、せっかく嫌慈が用意してくれていた血清を奪われオマケに戦闘続行が可能となったことで叛巻は憤怒。
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どの道今まで通りの戦い方でブッ殺せると、迂闊にも真正面且つ身動きができない空中移動で接敵し
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血を浴びせて電撃を喰らわせる血風怒禱剛雷漢で形勢逆転され、そのまま直で押し切られて灰になりました。
【艶道戦】
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一方で艶道は左腕しか使えなくなったうえに、自分の本気技を解禁できるという圧倒的有利な状況下になったうえ
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艶道の「救済」を理解した上で憤怒100%ブッ殺すと決めた相手には堂々名乗る裏社会の礼儀をしておきながら、挑発と逃げを選ぶシーノの態度に冷静さを失うという事態に。
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結果、シーノに誘導されて共に麻薬水に浸かり、自分の極道技巧を封印されて近接戦闘戦に持ち込まれ、さらには非実在右の暗刃を喰らって敗北。
【孔富戦】
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そしてDr孔富は双子の兄との文字通りの合体極道技巧驚躯凶骸で以って、二対一で左虎を圧倒。
弱体化った忍者に地獄への回数券と自身の身体改造と重ね掛け強化した孔富は「自分たちは忍者を超越た。極道は忍者よりも強し」という宣言までして、嘲弄しますが……。
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「自分は相手よりも強い」というのは正に慢心。猪突猛進。
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結果、左虎の策と罠に陥って拘束され、本来ならこれにて「ブッ殺した」になっているはずでした。
仲の悪い華虎ちゃんの照拳の余波で運良く逃れはしましたが、ここから先は本当の「二対二」の戦いに。
【本当に強い者】
孔富の「今、自分たちと極道は忍者より強くなった」と宣言し、そんな孔富の「救済」を理解しつつも否定する左虎とのやりとりで思ったのですが、これ第五章の日常パートで愛多総理が既に対抗「救済なき医師団」の傲慢な救済への対抗スタンスを示していたんですよね。
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これは戦いの中で、それぞれのキャラクターたちが同じようなことを言及しています。
斗女たんは「どんなに辛く苦しくても、その先に幸せがあったかもしれない赤ちゃんまで殺すんか」と、己が境遇を思い出しながら憤怒、
右龍は四章ですが「辛く苦しいことがあった時、捻じ曲がらないだけの何かと巡り合えたのはただの幸運者」と、孔富と同じ意見を言いながら、それでも悪事カマすのは絶対に許さない。
極道の首魁である極道さんですら「強者が弱者に常に勝つとは限らない」と言っており、第五章は一貫して忍者と極道の強弱逆転がテーマになっています。
そんな中で、第五章のボス極道である孔富が「自分たちは忍者よりも強い」と宣言し、それを否定する所にまで持っていったシナリオ運びは見事という他ない。
作者神心底尊敬ェッス。
【窮地や逆境でも立ち上がる者こそが強い】
これは結局、愛多総理の上述スクショの台詞でもそうなのですが、今まで挙げたバトル展開でも同じことが言えるんですよね。
今回の麻薬水テロで忍者は既に弱体化っている。
だから
斗女たんはあらかじめ入手していた情報から対抗策を用意し、体を張った作戦を最初から立てていた。
長は相手の催眠術の条件の穴を見抜き、自分の能力の多さを生かして隙を突いた。
右龍は自称バカで頭を使うのは苦手と言いつつ、最大限に頭を使って仲間の援護と自分の特異体質を生かして強行突破。
シーノは相手の能力を分析して弱点を突き、そのうえで覚悟をキメて無理筋を貫く。
左虎は「凍剣執刀」という技のバリエーションの豊富さで、いつも通り冷静に憤怒して調子こいた孔富を罠にかけただけ。
弱者になったからって諦めず、へこたれず、さらにもっと痛い目を見て傷つくことすらも承知のうえで、それでもやっぱり立ち上がって戦う。
※※※
とくに主人公だけあってシーノはレイドボスみたいな本作最強キャラ候補レベルの華虎ちゃんに満身創痍状態でエンカウントするという絶体絶命最悪な逆境を迎えながら
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「このまま死ぬのなんて冗談じゃねぇ」という意志で以って打開策を瞬時に思いつき実行。
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シーノの強い意志と発想と妙技は忍殺番長の華虎ちゃんを満足させるものでした。満足させちゃったとも言う。
※※※
「生きることは辛い」「救われる可能性なんて絶無に近い」
ここまでは、繰田兄弟と左虎右龍兄弟の共通観念です。
でも、それでも這い上がれる者こそが強い。それは忍者だから強いとかそういうのではなく、愛多総理や病院で働く医療関係者にテロの被害を少しでも軽減しようと戦う公人たちも同じくらい強いのである。
逆境、不幸に見舞われて心折れてしまった救済なき医師団の皆さんの弱さそのものは、決して悪いわけではない。
忍者たちが許せないのはあくまで「自分たちが心折れた時に縋った麻薬という救済を、無辜の都民に対して強引に押し付けた」ことのみ。「救済したい」という意志自体はむしろ尊重している。
※※※
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んでまぁ毎度の如く結局愛多総理の熱苦しい一言にオチがつくのですが。
救済なき医師団も、割れた子供たちも、つまりは極道みんな全て「もう遅い」「諦めた」「この世界を見限った」から弱い。
でも取り返しのつかないテロを起こし、死んでしまった者にすら「遅いことなど何もない」と愛多総理は言う。
一見すると「諦めるな」「強く在れ」というテーマに見えて、実のところは「もしかすると生きていればほんの少しでもいいことがあるかもしれないよ」という陳腐と言えば陳腐なのですが、しかし大変良く練られた残酷なシナリオの中で描かれるテーマが、燦然と輝く。
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そしてその「少しでもいいこと」は別にサブカルオタのニチアサキッズ沼でも構わないということで……。
うん愛多総理は本当にいいキャラでこの漫画本当にいい漫画なんだけど絶妙にどこか決定的にズレている(そこに痺れる憧れる)。