ペルソナ5 金城が好き
P5プレイヤーからは「マジかよお前」と思われても仕方ないタイトルだが本当に金城が好きなんだから仕方ない。
switch版が出たのでプレイしているわけだが(アニメの方は見ていたので本編シナリオは把握済)、私はP5だとどちらかというと悪役側、中でも金城が好きである。
一応言っておきますがキャラクターとして好きなのであって、人間の屑だってことは重々承知していますよ……?
【クズのブタ野郎】
リアル金城が出てくる場面は大体これくらいしかないのだが、拉致同然に女子高生をクラブに連れてきて、追って来た学友の写真撮って脅迫と強請を始めるクソ野郎である。
5人合わせて300万円とかいうやたら現実的な数字を出すあたりが皮肉と風刺にまみれたペルソナらしい。
なお仮に素直に300万円支払っても強請たかりは家族友人親類縁者に広がるだけで根本的解決にならない模様。
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ちなみに現実的に考えてここまで大っぴらに法律的に真っ黒の脅迫やるのは、やる側としてもリターンに対してリスクが高すぎてヤバい。
渋谷の表社会ですら大きな噂になっていたのだから、金城は本来ならブタ箱入り秒読み段階だったはずである。
それがそうならなかったのは獅童正義に賄賂金を送ることで渋谷周辺の警察含む裏表に圧力をかけていたのだということが終盤わかる。
奥村社長の件を考えると、そもそも怪盗団が狙わなくても吾郎ちゃんに適当なところで始末されていた可能性も十分高い。
そう考えると金城はむしろ怪盗団に命を救われたのかもしれない。まぁひっそりと闇から闇へ葬られている可能性もあるが……。
【豚の貯金箱というモチーフ】
「札束で殴る」は最早定着したワードのような気もするが、シャドウ金城は「金こそが最強の武器」という信仰心に近い極端な拝金主義者として描かれている。
このブタの貯金箱の形をしたブタトロンに搭乗して引きこもることでシャドウ金城は戦うわけだが、堅牢な装甲に守られ強力な火砲で攻撃できるブタの貯金箱型戦車は、金城の金に対する考え方を象徴している。
金で身を守り、金で他人を支配する。
金城のこの拝金主義をシンプルに「豚の貯金箱型戦車」というモチーフに集約させて提示し、実際にその強さをプレイヤーに味合わせるのはビジュアル面とゲーム性を融合させるゲームならではの演出であり、ペルソナシリーズの魅力であると言える。
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ただ、この豚の貯金箱というモチーフは金城の心の拠り所であると同時に、コンプレックスの象徴でもある。
パスワードの語呂合わせからするに、金城は自身の外聞評を重々承知しており、そして深層心理ではとても気にしており劣等感を覚えていた。
だからこそ「ブタのようにブサイクで卑しい自分」を「攻防共に併せ持った最強のブタ型貯金箱戦車」に乗せることで、コンプレックスをプライドに昇華させていたわけなのである。
実際、他のパレスに比べて金城パレスは現実離れしてブッ飛んだ光景やモチーフといった認知の歪みが少なくやたらと現実的で(せいぜい雨のように降り注ぎ池のようにプールされた紙幣くらい)、金城が歪んだ欲望の持ち主ではあっても現実から目を離さない、離せない現実主義者でもあったとも言える。
とくにその象徴と言えるのが、パレス攻略中に聞こえる金城の弱音や本音であり、シャドウをとっちめる前から卑屈な態度を取るのは金城くらいである。
そして戦闘で追いつめてしまえば……
最終的に「ブタ」というモチーフと自己を混同し「ブタの貯金箱」という殻に引きこもって安心感を得ることに囚われてしまい、「金城潤矢」という己自身の価値をどこまでも認められず、成長することができなかった人物だと言える。
その象徴が現実世界で置換された金城の「オタカラ」で……
子供銀行のジョーク紙幣が金城の「オカタラ」=「欲望の核」であったことや、ご大層な金庫の中に仕舞っているのがブタの貯金箱という幼稚さを考えると、金城の深層意識の中枢は小学校低学年前後の頃から止まってしまっていたと見れる。
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この「パレスはやたらと現実的」でも「本人の精神は幼児レベルで止まったまま」というアンバランスさが金城の魅力だと私は思う。
表層意識ではリアリストの拝金主義者を気取っているが、深層意識では幼児時代からのコンプレックスを遂には癒すことも転化することもできず、トラウマをそのまま武器にして破滅してしまった男というのがなんとも同情の念を禁じ得ない。
このあたりジョジョの荒木飛呂彦先生の言う「弱さを攻撃に変えた人こそが怖い」に通じるところがあると思う。
【金城の弁解と返答】
怪盗団のまっとうな反論はあえてすっ飛ばして金城の醜い自己弁護だけあえてスクショっているわけだが、この金城の言葉だけはそれほど間違ってしない。
大体、彼をコテンパンにした怪盗団はほとんどがイケメン美少女揃いで何かしら才覚や家格を持っているので、そりゃまぁ金城が卑屈になるのもわからなくもない。
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こういったコンプレックスをさらに明確に吐いてくれたのがるろ剣北海道編の観柳なわけだが、さすがに幕末の乱世で少年時代を生きた不屈の男と、平成の日本で生まれ育った金城ではハングリー精神が違いすぎた。
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ちなみに個人的な考察だが、金城が未成年ばかりをターゲットに脅し強請をしていたのは、彼らが無知で無力だからということだけが原因ではないと思う。
金城は怪盗団のターゲットにされた大物の中では特別に若い。
外見年齢から察するに、おそらく20代半ば~30代半ばくらいだろう。
この年齢ならほんの数年~10年ちょっと前に「理想的な青春時代」を送れなかったコンプレックスを抱えていてもおかしくない。
PVでも使われた金城の決め台詞的な言葉だが「若者の明るい未来を金という形で搾り取って奪い取る」ことで内心溜飲を下げていたのではなかろうか。
とくに新島真のような「美少女」「文武両道の秀才」「金持ち」「美女検事の妹」とたくさんのモノを持っている若者の未来を奪い取るのは絶頂モノのいい気分であったことだろう。
……妄想に妄想を重ねるけど、ぶっちゃけ真ちゃんはともかくとして姉の冴さんは凄まじいハングリー精神と胆力の持ち主なので、怪盗団が手を出さずに姉妹諸共苦界に落ちたとしても、数年後には冴さんが金城を踏み潰す裏社会の女傑に成長していた可能性も十分あったような気もする……。
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怪盗団にターゲットにされた大人たちと金城の違いは、先述したように「深層意識が幼児レベルで止まったまま=根っからの手の施しようのないクズ」という点でもある。
殊更擁護する気はないが金城以前のターゲットの二人なんぞは
腐ってもかつてオリンピックでメダル獲得した名選手だった鴨志田
絵の師としては数々の評価される絵画をプロデュースする能力には長けていた班目
とまぁ根っからの悪人というわけでもなく、諸々の要因が重なって自制心が壊れた結果、ああも醜悪な欲望を抱える結果になったと言える。
しかし、金城は幼児時代のトラウマからそのブレーキをとうの昔に取り外して育っていったのであろうという点が、なんだか私にはかえって憐れみを覚えてしまう。
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それらを省みて、金城の醜い自己弁護に対して最後に反論するのが竜司という点が実に計算されたシナリオ運びだと思う。
竜司は怪盗団の中では一番「持たざる者」である。
母子家庭で決して裕福ではなく、顔も普通レベルなのだが怪盗団メンバーに美形が揃いすぎているのでパッとせず、唯一好きで取柄だった陸上という希望すら鴨志田に奪われた少年だ。
金城に比べたらまだ「持っている」部類なのだろうが、それでも「持たざる者」の苦しみは怪盗団の中で一番骨身に沁みて知っているからこそ、この反論でシャドウ金城がいよいよ観念する流れは納得が行く。
そして観念した後、ちょっとだけ黒幕の情報をゲロるのは中々にヒールとしてカッコいい散り方だ。
自らを破った怪盗団に対する挑発とも忠告とも取れる台詞であり、実際この後の怪盗団は黒幕の手のひらのうえで大分長いこと踊らされるハメになる。
【余談】
全くの余談だが、ペルソナというゲームはとにかく金を使って使って使いまくっていくらあっても足りなくなっちゃうゲームである。
とくに金城イベント開始と同時期に解禁される御船千早のコープアビリティ性能は超優秀で、金城の拝金主義を否定するシナリオ運びにしておきながらプレイヤーには金の大切さと有難みを噛み締めさせるという流れになりやすく、スタッフの皮肉が感じ取れる。
毎日のように各種ブーストのために5千~1万円以上使い続けるプレイスタイルに思わず「今日の友達料」とか「人付き合いには金がかかる」などのやたら生臭い単語が脳裏によぎることになる。
他にも女医さんに当たり前のように50万円くらいポーンと出して大量の医薬品を購入したり、毎週日曜に数万円単位で教会に寄付金叩きつけたり闇ネットたなかでガンガン金溶かしたり現実世界だけでバカみたいに金を使う。
そしてペルソナ合体でペルソナ全書からの呼び出し代金や特別措置を使えば十万二十万は平気の平左であっという間に吹っ飛んでいく。
裏ボス撃破のために本気で専用ペルソナ作り出すと目玉が飛び出る勢いで金が溶けていく。
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そんなこんなでメメントスでシャドウを轢き殺して金を毟りながら思うのだ。
「金城、班目、奥村社長、確かにお金は大切だよ……!!」と……。