ENDER MAGNOLIA クリア感想
完クリしたっぽいので感想を殴り書きしていきたいと思います
ネタバレ有りなので注意してくださいね。
【システム面】
前作の時点で十分快適なUIだったので、下手に変更されず手間のリソースも割いた印象。
大きく変わったのがセットできるスキルが3×2だったENDER LILIESに対し、ENDER MAGNOLIAでは四つ固定になっていること。
これはバランス面でも語りたいのですが、操作の煩雑性やプリセット切り替えキャンセルを使った悪さ対策もあるかと思います。
空中攻撃でも上左右移動が可能になったことで、序盤の時点で空中機動力がシンプルにやりやすくなっているかわり、高度なRTAレベルで要求される技術を用いたシーケンスブレイク対策はされた印象がありますね。
MAPは前作の時点でも親切でしたが、今回は前作と比較して有無ができました。
全体地図の時点で大まかな地形構造を把握できるようになり、既に行った場所に隠されたモノをその場で彷徨わずとも地図を見て考察できるようになっています。
一方でそのフロアに入った時点で大まかな出入り口を示唆するラインが廃止された。これはどの方向に進めば出入口があるのかわかりやすいシステムだったのですが、いずれ入手できる移動強化アビリティが無ければ行けない場所をも教えてしまうことにも繋がっていたので「行けない場所は無理せずさっさと別の場所に行ってシナリオを進めろ」と言外にプレイヤーを示唆しているのかと思われます。
まぁ上述した通り、シーケンスブレイクでENDER LILIESではシルヴァさえいればほとんどの所は無理矢理突破できてしまった感あるので、前作は前作、今作は今作に合った仕様変更と言うべきでしょうか。
私は初回プレイ時点で難易度ハード設定で遊びました。
前作かなりやりこんで自信があるのと、オマケ要素を入手するための通貨を多く入手できるからですね。
この難易度設定は前作では一回クリアしなければ解放されなかった要素ですが、今回では最初から弄れるようになっているので、メトロイドヴァニアに慣れたユーザーや前作ファンに歯応えあるプレイを提供するためにした仕様変更だと思われます。
これはかなりのグッジョブ設定。
また、難易度を変える要素はプレイヤーが自分で好きなように弄れるのですがスタッフ側が用意してくれている難易度ハード調整は実に巧みだと思います。
体力はノーマルモード据え置きにして、敵の硬さで単純に難易度を上げているわけではない。
一方で敵の行動速度は1.5倍とかなり強化されており、ノーマルモードの時点で敵の攻撃力が高いので敵の動きを見極めなければ即死するバランスに仕上げている。
死亡ペナルティの低いゲームなので、この難易度ハード設定は本当に上手いと思います。
プレイヤーをイライラさせず、ハラハラさせる設定になっている。
【バランス面】
【全体的な感想】
前作の時点で十分遊びやすかったのですが、続編ということでさらにバランス面は上手く調整された感触があります。
上述しましたが操作の猥雑性を排除し、シンプルでわかりやすくしたことで間口を広げています。
シーケンスブレイクがしにくいこと、プレイヤーの誘導が上手いことからシナリオの運びがスタッフ側の想定通りになるよう本当に巧みに調整されています。
これは前作よりフロア数を多く設けて探索面の楽しみを増やしたため、必要だったことなのでしょう。
ただ何処かスタッフ側の思惑通りに動かされている感を常に感じた所もあったり。
まぁ不親切極まりないゲームより、思惑通りに動かされようが快適に遊べる方がいいに決まっているよな!とは高難易度や詰め込んだ要素が多すぎて混乱するメトロイドヴァニア系ゲームをプレイして思う結論ではあります。
【探索面】
そんなわけでちょっと探索面は他のメトロイドヴァニアと比べて親切が過ぎてストレスフリーなかわり、解いた時のカタルシスが少ない所がありますね。
これを両立するのは難しいというか不可能だと思うので、仕方ない落とし所だったよな、と納得しています。
ただ、モーションや背景の造り込みがしっかりしているので、絵面で新アビリティを使って新たな場所へ行けるようになったカタルシスを補っているのは流石の一言。
ENDERシリーズはビジュアルが魅力の一つなので、そこをきちんとスタッフ側が理解しているとわかって安心できます。
ただ、私は前作をかなりやりこんだのでほぼ詰まることなくすぐさま謎解きができたので、バイアスかかっている感想だとは思います。
前作で空中攻撃した時に「このゲームの空中攻撃って落下しないからホバリングとして使えるな…」と気づいたのはプレイ開始からかなり経過した後のこと。
さらに今回は空中上左右移動もできるようになったので「空中攻撃移動→空中ジャンプ→空中攻撃移動→空中ダッシュ」の順番を踏めばかなりの距離を空中移動できると最初っから知っているのといないのとでは、探索面のストレスが全然違うでしょうから……。
前作から輪をかけて幼女が強いシリーズ。それがENDERシリーズ。
……ライラッ君は一応両腕で懸垂崖登りするけど、片腕懸垂崖登りしたリリィちゃんってなんなんだよ……。
【キャラ性能】
これは「入手タイミング調整は上手いけど歴然とした強弱はある」という印象。
前作での最初に入手できるスキルであるシーグリッドに相当するリトは使いやすいリキャストスキルですが、素直な性能が過ぎて終盤に入手できるレリックなどとのコンボ性が悪く、最終的には他スキルに枠を譲ってしまう所がありましたね。
一方で序盤に入手できるヨルヴァンは最初は「コイツしかいつでも使える遠距離攻撃役がいないのでコイツを使うしかない」だったのが中盤以降レリックが揃うと化け物みたいな強さになるので始終使っていました。
鎖の獣は入手タイミングが上手いですね。
まだレリックやパリィが揃っていない時分に手に入れるので、ガチンコ勝負しなければいけない場面で「無敵時間+カウンター」性能はとっさの緊急回避として頼りになる期間が長かったです。
最終的にはゴリ押しする方が楽なので、終盤でも他キャラに負けないくらいの性能として強化した時のリキャスト時間をもっと短く調整して欲しいな、とも思います。
前作の黒騎士に相当する、相棒とも言えるノラは斧か鎌ばっか使っていましたね……。
斧は前作のゲルロッドに相当する性能なので、強くて当然なのですが。
鎌は総合バランスが良すぎて剣を食っている印象が。
というか剣の良い所が見当たらない。
オートスキル勢のフギンとムニンは鳥&犬セットが流行っていたこともあって明らかに安定堅実性能になっていますが、片割れを入手しないままクリアしちゃった人もいそうです。
バステ付与してくれるのがかなり嬉しい。
後半で入手するローナは使う機会が少ないうえに使いにくい分、超火力を発揮するのでこれは良調整だと感じました。
本作のボスに固定型はいない分、明らかに遠慮していませんね。ボスが気絶した時に零距離設置するとエグい勢いでHPゲージを削っていく。
七號はリトの枠を奪っちゃう罪深い奴です。ちょっと強すぎる。
まずもって基本的に七號は機動力補助スキルとして使える点で便利なのに、奥義は全体攻撃且つ部位破壊までするので超使いやすい。
機動力補助という性質上、緊急回避としての側面もある。
こいつが役に立たない場面が無い。いや設定からして強いんだけどさ。
ナーフされたら困りますが、最終的に他のリキャストスキル勢も七號並みになってほしいというか……。
魔女リュサイは……単独というより、ヨルヴァンと組んだ時の性能がエグいんですよね。
なんで二人いっぺんに遠距離攻撃できるんだよ。花の魔女とシーグリッドをいっぺんに呼び出すリリィちゃんと別方向で強すぎるぞ。
最終的に遠距離攻撃勢なのにワイドショットとドリルで接近戦を仕掛けることになるのですが。
ものすごい勢いで敵の体勢ゲージが削れて、こっちのSPゲージが溜まる強力コンボ。
オマケにイレイェンの系譜で、零距離発射奥義の威力がエグい。
ただ単独性能は普通だと思います。ヨルヴァンとのコンビがヤバい。
レイボルクは前作のユリウスと似たような立場ですね。見た目からして......。
本人性能はぶっちゃけ強い。機動力補助としての性能もある。
でも入手タイミングが遅すぎて活躍する場面が少ない。
今後追加アプデされるであろう二週目やボスラッシュで評価が変わる印象です。
七號と組んだら色々と悪さができます。こいつはこいつでノラの立場を奪いかねないので、入手タイミングが遅いのも納得なのですが……。
あとバランスの話ではないですが、ユリウスと似たような立場なのに対し、本人よりマスターの方がシナリオに大きく関わりすぎて「で、お前自身は結局なんなの?」感が強くてユリウスやファーデンほど思い入れを強く持てないのが口惜しい。
もっとレイボルク自身の活躍を劇中のテキストでちらほら書いていてくれたら良かったのに、と思います。
【苦戦したボス】
終盤は大体楽勝気味だったのですが、ぶっちぎりで苦戦したのは
魔女リュサイ
イレイェンの系譜で浮いているうえにワープする。
バステ付与魔法で攻撃してくる。
回復する手下を召喚(攻撃してこないだけヘニール叔父さんに比べたらマシ)
何よりまだこちらがさほど強化されていない中盤開始直後に戦う。
以上が揃った結果、一時間くらい彼女だけで詰まりました。
イレイェンが序盤で戦うボスだっただけにまだ有情な部分があったのが、中盤ボスということでかなり強化された感じですね。魔女のくせに物理攻撃までしてきやがる(攻撃チャンスになるけど)。
七號は本人自身よりコンセプト自体で苦戦したタイプですね。七號を先に攻略していたら、七號の方が苦戦したと思います。中盤開始直後に戦うボスはやっぱ強い。
【シナリオ】
前作と違ってキャラが喋る……というかENDER LILIESが喋らなさすぎたので、その分シナリオが複雑になった印象があります。これ穢れと古の民の設定をちゃんと把握していないと全然意味わからんぞ。
一応本作だけでも古の民と穢れの設定はTIPSで確認できますが、本作だけしかプレイしたことない人はどうなんでしょうね?
ENDER LILIESでは「この国は侵略者の末裔の国」「穢れとは何か?」「原住民族の報復があったのは当然のこと」「巫女と呼ばれる者たちの正体」などの謎を紐解いて行くことでシナリオの全貌がわかる構造でしたが。
MAGNOLIAの方では
「最初は冷たく自分の目的のためだけに動いていたノラが、純朴で優しいライラックと共に旅することで徐々に記憶と優しさを取り戻していく」
というストーリーと、
「ライラックとノラとは何者なのか?煙の国の災禍は何が原因なのか?」
という謎解きが平行して行われるのでややこしいことになっています。
とくに前作と決定的に違うのは仲間にならないキャラの方がシナリオにすごく食い込んでいること。
それも敵キャラがほとんど。
まぁ
ギルロイ=中盤から本人がしょっちゅう出てきて交戦もするので、印象に残りやすい。
デクラン=超悪趣味な典型的悪役の所業をやりまくってある意味わかりやすい。
リリア=キーキャラクターとして何度もライラックが言及するので覚えやすい。
とこのあたりはいいのですが
調律師長=中盤に重要キャラっぽく出てきて、その後やはり重要キャラだと後半判明するが、制服や名前のせいで他の調律師たちと見分けが付きにくく、印象に残りにくい。
アベリア=ハッキリ言って本作の黒幕と言っていいほどのことをやらかしているけれど、ライラックの保護者たちが先手打ってしまった結果、印象が薄い。フロスト家=古の民の末裔ということは開示されているので、被害者としてのミスリードをもっと早く強調して欲しかったし、正直真ラスボスだとすら思っていた。
この二人は惜しいな、と思います。というかアベリアは本当にライラックやリリアとの問答場面が欲しかったです。
「私たち古の民の復興のために、侵略者どもを皆殺しにして何が悪い?」
という被征服民族の過激であれどある程度正当な主張に対し
「過去の禍根を断って、今生きている人々やホムンクルスと共存したい」
というリリアとライラックにノラ、そして征服民族の末裔たる調律師長ヨーランの理想論的意見が対立するのはかなり重要なテーマだったと思います。
このアベリアとの対立あってこそ真EDのテーマが生きると思うので、本当に惜しい。
ENDER LILIESでは結局生き残ったのは古の民だけだったのに対し、ENDER MAGNOLIAでは二つの民族が手を取り合い、地に足着けた世界で生きて死んで行くという終わり方だったので、やりたいことはわかるけど心への響き方が前作よりも薄いんですよね......。
LILIESは徹底してフリーティアという一人の人物を掘り下げることでシナリオの重みが増したのに対し、今回はキャラが増えまくったせいでとっちらかった、というのが最終的な評価。
とはいえルヴィの存在がかなりシナリオを良くしてくれているのですが。
序盤から終盤までちょくちょく出てきて、可愛い幼女というキャッチーさがあり、ライラックと出自は違えどホムンクルスと人との共存を望み、逞しさも備えている。
なんならルヴィの存在がライラックの真EDの決断をさせたまであるかもしれない。
このあたり、リディンプションリーパーズでもそうでしたが「意見の対立」というテーマはバイナリーヘイズインタラクティブ的にはあまり重要ではなく「厳しく醜悪で残酷な世界でも、強く薄汚れて可憐に生きて、死んでいく」みたいなテーマが一貫しているのでしょうかね?
人間同士の戦いは重要ではなく、その結果として生み出される世界とどう向き合うか、というような。
……しかしリディンプションリーパーズの名前を出して思いましたが、例えTIPSであろうと古の民と穢れの設定をちゃんと開示してくれるだけやっぱりMAGNOLIAは親切だわ……。