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シャドーハウス 世界観設定周り考察
シャドーハウスを読んでいて疑問に覚え、自分の中で「こうじゃないかな?」と考えた考察をいくつか書いてみようと思います。
【大人になったシャドーは『元』家族に会ったらどうするのか?】
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このように「大人」になったシャドーはすす島内でおおっぴらに仕事をしている。
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しかし「大人」になったシャドーとは、元々はこのすす島領民の子供なのである。
「大人」になって屋敷の外で仕事が許されるほど出世するまでにかかるスピードは個人次第ではあろうが、エドワードや上記画像のお姉さんを見る限り優秀なシャドーは20代くらいで既に外での仕事をし始めている模様。
であるならば、10歳前後くらいの子供がシャドー家に引き取られて「大人」のシャドーになり再び島に姿を現すまで短期間だと10年くらいしか経過しておらず、子供時代の面影が濃く残っている人物の方が多いだろう。
※※※
なら「大人」になったシャドーは奪い取った「顔」の元々の家族と出会う機会があっておかしくない。
問題は、「顔」を乗っ取ったシャドーには「顔」の人間時代の記憶など全く知る機会が無く、元々の家族と出会っても相応の対応が取れないということなのである。
端的に言うと久々に会った家族に超不自然な態度を取ることになる。
【A:恐れ多いので村人から声をかけないのでは?】
シャドー家に引き取られた時点で、村人出身とはいえもはや立派な貴族である。
衣服も身綺麗で豪奢なものを纏っており、気品漂うよう子供時代に教育されたこともあって「大人」になったシャドーは見た目だけなら完全な貴族だ。
よって村人たちに「『元』家族とはいえ、大人の貴族になったシャドー家の方に家族のように接するのは恐れ多いことだからやめなさい」というルールを洗脳させているのだと思われる。
はじめてのおつかいしているコマの外の遠くで「エドワードったらあんなに立派になって……」と涙ぐむ母親とかがいるかもしんない。
【大人になったシャドーに生殖能力はあるのか?】
品の無い詮索だが、婚姻制度がきちんとある以上は考えたくなるのが人情というもの。
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シャドーハウスが出来てから約60年ほど時間が経過している。
現在のシャドーハウスのルールが成立するまでに長い期間が必要であったことは想像に難くないが「大人」の中でもトマスや村長のテイラーなどは40代くらいはあるように見え、「顔」をまだ見せていないがジョゼフなどは50代くらいはあるように見受けられる。
これくらいの年齢の「大人」がいて婚姻制度があるのなら、シャドー同士の子供、純粋なシャドー家のシャドーが生まれていてもおかしくはない。
【A:基本的にナルシストだから興味はない】
「大人」になるまでの教育課程で「顔」である生き人形とお影様との絆は深く結ばれることになる。
これが合体することによって「大人」になる都合上、ナルシストになりやすいように見受けられる。
大体、シャドーハウスは競争を煽ることで優秀な個体を選出する方針を取っているが、このせいで足の引っ張り合いが起き「信用できるのは自分だけ」という考え方に帰結しやすい環境なので、ラブロマンスやらとは程遠い。
よって、現状「純粋なシャドー家二世」は産まれる能力の有無うんぬん以前に、それほど「大人」たちが互いに接触し合わないという結果になっていると考えている。
【シャドー家は貿易をどうやっているのか?】
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シャドーハウスの象徴的アイテムとなっている感もある珈琲だが、あんなにすす炭が有難がられる寒村とした風体の地域で、コーヒー豆を地元で生産できるようには思えない。
それ以外にも香水の原料となる香油や布に、豪奢な調度品(これはミラーハウス時代からの物も多そうだが)などすす島だけで生産できそうにない代物を大量にシャドーハウスは消費し続けているので、島外と貿易しなければシャドーハウスは維持できないはずである。
それだけのモノを買い付ける資本はどこから出ているのか?
すす炭を島外に売りつけるのは、それは確かに有効で最強の切り札とも言える商品であり、最終的に島外まで支配域を伸ばそうと考えているであろうことからいつかはやるのではあろうが、現状すす炭を貿易に使っているかどうかはまだわからない。
【A:そのための精神操作能力】
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おじい様ほど完璧な洗脳能力者はいないように見受けられるが「大人」になるとすす能力がパワーアップするという話からしても、貿易を担当するシャドーはほぼ間違いなく精神操作系すす能力者であろう。
洗脳ほど極端ではなくとも、この能力を使えば商談を非常に有利な形でまとめて「安く買いつけて高く売りつける」は格段にやりやすい。
「いやいやシャドー家との商談内容明らかにおかしいだろう」と思った人間がいたとしても、真正面から文句を言いつけに行ったらあっという間に洗脳されてお仲間入りである。
こんなん反則じゃねーか。商売にならない。
※※※
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……で、ここで暗躍していそうなのがアンソニーである。
限られた出来ることの内に
すす島の貿易内容はおかしい
シャドー家の人間との直接取引は危険である
といったことを島外に教えて回り、島外にシャドー家と敵対する勢力を作り上げることは可能である。
ようするに物資面でもいつまでも現状シャドーハウスの状態を維持できるとは限らない、ということ。
【『大人』になった直後のシャドーは精神的に不安定にならないのか?】
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「大切なパートナーを犠牲にして『顔』を得るくらいなら死んだ方がマシ」
なのは年長組だとマリーローズくらいだろうが、形は多様であれどシャドーはパートナーの生き人形と深い絆で結ばれている。
そもそもちゃんとした絆を結べないと、シャーリー&ラムのようにお披露目で不合格になってしまう。
※※※
とはいえ生き人形側は洗脳がちゃんと行き届いていると
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こうなのでまぁ問題はない。
しかしこのオリーが決意表明する前ページでの主人であるオリバーの反応は
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ケイトの質問に即答することができず、一瞬の迷いがあったとも見れる。
※※※
そもそも情に訴えなくても、考えてもみてほしい。
今までずっと、辛い時も楽しい時も傍に居た自分専用の従者である。
プライベートな場面では「お茶を淹れろ」みたいな簡単な命令から「今後館の中でどう立ち回ったら良いだろう?」といった立ち入った相談までして、生き人形の意見を汲んで(より正確には影響を受けて)シャドーは大人になっていく。
こんな大切な存在と一体化して「完全な存在」になるのはそれはそれで魅力的な話かもしれないが、しかし一体化直後はふとした拍子で「おいエドお茶を淹れてくれ」と私室で誰もいない空間に反射的に話しかけるといった醜態をしてもおかしくないと思う。
そもそも身の回りの世話をしてくれる専用従者が「大人」になった途端に居なくなるというのは普通逆じゃないのかってくらい理不尽で不便な話である。
大人の棟にも「顔のない人形」はいるだろうが、彼らは専用従者ほど気が利くわけでも暇でもないだろうし……。
※※※
個人的に、「大人」になったシャドーが足の引っ張り合いをして競争意識のマイナス面ばかり出ているのはこの根源的な埋められない「喪失感」が影響しているのではと思ったりしている。
というか、だからこそナルシストになりやすいというか。
逆に言うと、その「喪失感」を強固な仲間意識で補い合っているエドワードら三人はそういう意味でやはりメンタル面が崩れにくい難敵なのではとも思っている。
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【アンソニーに同郷への情けや躊躇は残っているのか?】
『同期』の生き人形たちは、皆同じ村の出身者である。
よって、ジョンやルイーズにシャーリーにパトリックは皆本当は顔見知りで、元々ジョンとパトリックは喧嘩友達だったくらいである。
それを洗脳珈琲によって忘れさせて「生き人形」にさせていたわけだが、アンソニーはとっくのとうの昔にその洗脳が解けている。
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つまり、今更な話だがアンソニーはエドワード、アイリーン、ジェラルドと同郷の馴染みなのである。
アンソニーは登場場面でそういったことを述べていないが、ようするにシャドーハウスに反旗を翻すということは、同郷の馴染み――の顔をした連中と敵対する覚悟が既に決まっているというお話だったりする。
いや、アンソニーほど長く完全に洗脳が解けてしまっているなら後輩にも同郷出身の顔見知りがいて、彼ら彼女らが脱落したり大人になって乗っ取られていく光景を見るという過酷な体験をしてきただろうということでもある。
ちなみにこれはローズマリーも同じことが言える。
彼女がいつもぽやーっとしたお姉さんだったのは洗脳が解けていたせいで疲れが溜まりやすく、心労が重なった結果あのような表向きの顔を形成していったと見れる。
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※※※
このように情深いが故に不器用なマリーローズ&ローズマリーと、合理的に目的を達成しようとするアンソニーは結局意見の相違が生じてしまったようである。
アンソニーの心情はおいおい物語が進むと語られるであろうが、正直シャドーの「大人」よりアンソニーの方がメンタル面で読めないところが多く不気味で怖い。
【最後に】
これは既にファンたちの間でされている考察だと思われますが(あまりまとめ記事やツイッター感想などは読まない方なので世間的な評価や考察に詳しくないのです)、「アンソニーは本当に一体化していないのか?」というのは現段階で突っ込んで考えても仕方ねーよなと。
あくまでアンソニーの自己申告でしかないため、情報不足すぎて是非どちらも証明のしようがない。悪魔の証明みたいなもんです。
個人的に「ストーリーが進めばいずれわかるであろう」という方向性の考察はあんまり興味がないんですよね。
いわゆるストーリー展開予測、設定予測の考察。世間的にはこっちの方が考察としては主流ですけれども。
もちろん私も多少はしますが、どちらかというとキャラクターの心理面を考察(妄想ともいう)する方が楽しい。
……そういうわけで、現状一番の楽しみは、はじめてのおつかいから帰ってきたら自分の管轄をトマスにしっちゃかめっちゃかにされていたエドワードの面であったりする。
これも全部エドワードの顔芸が面白すぎるのが悪い。