美女⑩ー➁ 最終話
信一が街まで下りてきた
その頃麻里子は滝田警部補と西条巡査を待っていた。
一刻も早く来てと願いを胸に
新ためて自由となった麻里子は好奇心とは違う
生き延びる為に周りを見渡した
用意周到の信一は注射器等は彼のリュックに運び出され あるのはペットボトルの水と少しの食料だけだった麻里子は貪るように鷲掴みしながらお腹に食べ物を食い散らかした
まさに本能のままの行いだった
他の女性達の部屋へ行き鍵穴をこじ開けようとしたが頑丈な仕掛けにより尖端は届かなかった
生きてる自分に出来る事はもう無いのか…
落胆に近い願いが麻里子を突き落とす…
その時だった
キュルルル キュルルル ネジをこじ開ける音がした
我にかえり
振り返る麻里子が目を向けると
大柄な男が立っていた
男は胸元に手を入れる
もはや私は撃ち殺されるかと思った麻里子
男は麻里子に
「新崎麻里子さんですか?私は滝田警部補です。先程電話してた自分です」
えっ驚いた顔とともにコクリと頷く麻里子
「やっとあなた達を見つけられた もう安心してください さあ私がヘリまで運びます」
西条巡査に身柄を渡し
滝田警部補は山小屋を捜索した
部屋は仕組みのある部屋が数カ所あり
全てが防音対策されていた 一つ一つ特殊な鍵開けを使いピッキングする
中々手強したが全ての女性達は無事に部屋に出る事が出来た
変わっていたのは
若い女性が好む部屋で清潔感ある部屋で
快適空間さえ思わせる部屋だった
まるで自室に居るかのような錯覚さえ思わせる部屋で 雑誌もついさっき出たであろうものばかりだった
滝田警部補は変に頷いた
この空間なら逆に逃げたいとは思わないだろうと心理をついた監禁飼いだった
ペットボトルの水があり
食料も少なめだがちゃんと栄養を考えた献立となっていた
綺麗なベットにルームウェアも用意されていた
益々解らなくなる程の監禁場所だった
信一は何者なんだ…
俺には解らないが身柄確保し
取り調べで解るだろう
ヤツの言う事を聞きたい
滝田警部補はヘリに戻り
麻里子に問いかける
「彼は先生を迎えに行くと言ってたんだね 所で山本有彩と言う女性は知ってるかい?山小屋には居なかったね」
麻里子は驚き疑心暗鬼とも言える表情を浮かべ
「私達はずっと一人の人にお世話されておりました。信一さんだけです 山本有彩さんなんて方は一度もお会いしたことはありません。」
この女性は何を言ってるんだ
確かに俺は有彩を目撃してる
でも有彩について俺は何を知ってる
信一については大体は解るが有彩はガールフレンドじゃなかったのか?
いや 確かに存在してた
滝田警部補はもう一度麻里子に対して問いかけた
「彼にはガールフレンド居たかい?」
麻里子はまたしても不思議そうに
「多分ですが いいえ 彼からは言われる前に私がフォークで刺したので」
滝田警部補はますます混乱になり
これ以上は麻里子に対して問いかけるのをやめた
そして一室だけどうしても開かい扉があると
報告をうけ踵を返すと現場に戻った
先日大雨で土砂崩れした土から人間の死体があちこちあった
それは鑑識に任せ
急いで開かない扉の一室に向かった
中々開かない扉を抉じ開け
目に入ったのは…
女性物のウイッグと化粧品 衣装が何着がありミシンも置いてあった
鑑識を呼び
更に細かく調べると農園の土が付いたエプロンやスコップ等があった
アイツは女装癖もあるのか?
急いで科捜研を呼び調べさせた
職員はデスクのペンとドアノブ等調べると
「全て同一人物です」
詳しくは調べてセンターで見てないと解らないと言われ押収するよう指示した
そしてクローゼットを開くと
赤い糸で滝田警部補の写真を中心に他にも盗撮したであろう滝田警部補の周りの写真と一人の白髪の老人が赤い罰印が描いてあった。
車椅子もあり
ロープと透明な袋が数枚あった
山本有彩の影など何処にも存在しなかった
その時だったスマホの着信音が鳴り
非通通知の表示が浮かび
周りに静かにさせてから
滝田警部補は出た
「もしもし」
「滝田警部補 この電話を受けたと言うことは僕はもうあの小屋には戻れないと言う事ですね」
信一だった
続けて話す信一
「えっ何故なの?私あの部屋お気に入りだったのにもう戻れないの?」
今度は女性の声で信一に話しかける
驚いた滝田警部補は受話器の向こう側に向かい
「信一君先程の女性は山本有彩なのか?」
「はい ですがちょっと違う僕達は一心同体で多重人格者なんですよ」
ここにきて漸く腑に落ちた滝田警部補は
「出頭する気はあるかい?容疑者の君を許してなどいない」
「悪いが僕は殺人鬼でもない。更に詳しく聴きたかったら僕を逮捕しても何の罪にもならないよ 僕はもう行かなきゃさよなら」
そこで通話は途切れた
電話を切った瞬間だった
悲鳴に近い発狂したとも言える雄叫びをあげながら
滝田警部補めがけ飛びかかろうとする老人が襲ってきた。
喚きながら身柄確保された老人は写真に写ってた老人だった
「俺の部屋を滅茶苦茶にしやがり俺を裏切ったのかチクショー」
年老いてるとは言え腕力のある老人は暴れ回る
信一に裏切られたのがショックだったのであろう
拘束され部屋から出された
老人が拘束されたのを知ってか
また通知音がなった
「もしもし」
「滝田警部補 その老人が今回の巷の殺人鬼で12年前にも滝田警部補が探し求めてた犯人だよ」
信一だった
ふとクローゼットの隠し扉にノートとパソコンと日記が残ってた
今までの経緯と殺人者ではないもの
敵の懐に入り込みいつしか提出する証拠となるであろう記載された古い新聞紙の記事等が挟まれていた。
その頃信一は空港に居た
「ねぇ信一これで私達のリベンジ返せたわね」
山本有彩だった
演劇が趣味なのは誰も知らなかった
背格好が似てる二人は信一はウイッグを被り
化粧して搭乗した。
二人を見極めるには難しいほど二人とも美しかった。
完