美女⑨ー➀
滝田警部補は仲さんから借りた書類に目を通し
慌てて西条巡査を呼んだ
西条巡査も書類に目を通し驚愕の表情を浮かべていた
解らない訳ではない
それこそが今回の有彩と信一の繋がりに近づくだろと
二人は踏んだ
西条巡査と滝田警部補は車に乗り
○県○市に赴いた
最初に行った市役所には過去の表記
所謂住民票をお願いした
信一の名前も
有彩の名前も
そこには記載されてはいなかった
次に市内にある病院を周ってみた
データには残ってなど無く
新しく出来た病院や看護師も当時を思い出す事は困難だった
途方に暮れる二人だったが
一泊し次の朝土地の所在地の持ち主から
辿れるかもしれないと踏んだ二人は
朝の珈琲を飲みながら
目的地まで運転した
○県○市○番町
ここは昔…それこそ滝田警部補が巡査の時だった頃の話になるが…
個人病院があった
昔に比べれば小さい町医者だったが
近所の方達や他県からも行列が出来るほど
患者さんの口コミで腕が良いのは確かだった
12年前…
事件は悲惨なものだった
男の子と家族が滅多刺しにされ
院長である高杉誠さん一家が惨殺された
幼子までが犠牲となった事件は犯人が解らず未解決事件になった
犠牲になった幼子には唯一生存者が残り
女の子を救い出した
白くて小さな手には傷だらけの真っ赤な流血が流れていた
丁度さっきまでかくれんぼしていた兄妹
兄は妹をかばうよう守ろうと抱き合っていた
勿論警察が入り鑑識官も目を背けたくなるほどの惨劇だった
滝田警部補は微かに聞こえる泣き声で
この娘を発見した
傷が治り次第女の子は施設に容れられたと
後に知った滝田警部補
段々と記憶が戻り
あの悲惨な現場を思い出していた
次回に続く…