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【短編小説】友達ライセンス

「なあ祐也、俺とお前は友達か。」
いつもと変わらない放課後、同級生の健二は
少し考えたような顔をしていたかと思ったら
ポツリとそんな言葉を口にした。

いつもノーテンキな健二のセリフとは思えない
「急にどうしたんだ、なんか悪いものでも食ったか
腹痛いなら保健室一緒にいこか。」

「いや、違うんだ。
昨日の晩ふと思ったんだよ、ボクサーには
プロ試験があるだろ。合格したらはれて
プロボクサーを名乗れるんだ
棋士だってなんだってライセンスがあって
証明があるじゃんよ。でも友達ってのは
そういうのはないだろ、だからなんというか
俺が一方的にと言うか」

健二はまだゴニョゴニョ言っている
僕はこいつを今まで少し馬鹿なクラスの
ムードメーカーだと思っていたが
どうやら意外と繊細な一面もあるみたいだ
こーいうのが思春期って奴なんだろうか

「なるほど、つまりお前と僕は友達だよって
言葉にしなきゃ不安なわけね。」

「でもよ、健二のとこの上のあんちゃんは
フリーターをしながら大体いつも駅前で
ギターを弾く自称プロギタリストだろ。
僕んちの隣に住む浩一郎おじちゃんだって
仕事もしないでいつも駅前のパチンコ屋に
入り浸っている本人曰くパチプロじゃん。」

「友達である証明がほしいなんて
お前ちょっとカワイイとこあるんだな
そんな細かいこと一々気にせずさっさと
帰ってゲームしようぜ、心の友よ」








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