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購買時事ネタ:「買えない時代」に考えたい3つの観点~1).2つの納期遵守率

2つの視点で考えてみると、
本当に対応すべきことが見えてくるかもしれません

ある購買関係者の集まりで、「納期」をテーマにできないかとのリクエストをいただきました。ただ購買関係者には間接材担当の方もいます。ゆえに直接材担当の方の関心が高いと思われる「納期」は、共通テーマとしては取り上げにくいとなりました。しかし現状は日々報道が続くなど、注目のテーマです。そこでそれならばと、私に宿題として声がかかりました。
このような経緯から、基本的な内容ではありますが、「納期」に関連したトピックスを3つ取り上げてみました。

1).2つの納期遵守率~回答納期と指定納期
2).発注方式への理解~3段階の発注提示と例外対応
3).リードタイムモデルとデカップリングポイント

半導体調達が問題になっていますので、それに絡みそうな観点も留意しました。ただし取り上げたトピックは、四半世紀前から取り沙汰されているものです。人によっては、既知かもしれません。一方で、需給逼迫の状況なのに、誰もこれらに着目し、採り上げない不思議さも感じます。
ゆえに、慣れ親しんだ内容を繰り返すかもしれませんが、しばしお付き合いいただいて、皆様の何かの役に立つのであれば幸いと思います。なお詳細に入り込みすぎると、「木を見て森を見ず」に陥りがちなテーマでもあります。ゆえに基本線で記述しますが、その点はどうかご容赦ください。

1.2つの納期遵守率~回答納期遵守率と指定納期遵守率

多くの購買部門は、サプライヤー評価に携わることもあり、納期状況のモニタリングと評価を担当していると思います。その主要評価項目にまず含まれるのが納期遵守率です。納期遵守率とは、その意味通りに、設定された納期通りに納入が行われた比率を指します。
一般に、次の式で計算されます。

納期遵守率=納期通りに納入された数 ÷ 発注数

しかし皆さんは納期遵守率に2つの種類があることをご存じでしょうか。
回答納期遵守率指定納期遵守率です。目的や用途が異なりますので、それを把握し、上手に使いこなす必要があります。

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2.回答納期遵守率とは何か

回答納期遵守率は、サプライヤーが「発注に対して、いつまでに納入します」と納期回答してきた納期(これを回答納期と言います)がどの程度遵守されたかをみるものです。

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すなわち、次の式で計算されます。

回答納期遵守率 =回答納期通りに納入された数 ÷ 発注数

回答納期とは、サプライヤーが「納入します/できます」と回答してきた納期で、それに基づいて回答納期遵守率は算出されます。サプライヤーがやると回答してきているのですから、目標値は99.9%など限りなく100%に近いものとなります。そして買い手企業の生産スケジュールは、一般にそれに基づいて組まれすので、もし遵守されないとなると、買い手企業での生産ライン停止などのとんでもない事態が生じかねません。

電子取引が発達していなかった昭和の頃は、注文書もファックス、納期回答もファックスか電話で手間がかかる仕事でした(ファックスの送受信確認にわざわざ電話をしているなんてこともありました)。しかし、電子取引が普及してきた1990年代になると、当初は専用回線、のちにインターネットを使ったEDI(電子データ交換)により、クリックするだけで納期回答を行えるように簡便化しました。実施のハードルは下がっていきました。

回答納期遵守率は、サプライヤーが「納入します/できます」としてきた納期回答に基づくものです。したがって、目標値は99.9%など限りなく100%に近いものとなります。そして未達成の場合には、サプライヤー側の状況を確認しないと、買い手企業での部材欠品による生産停止などの重大事態が繰り返されてしまいます。

回答納期遵守率が悪い場合の原因は、大きく2つ考えられます。1つ目はサプライヤーの生産ラインが頻繁に停止しているとか、品質不良で予定数が出荷できないとなど、サプライヤー側の生産実力面の問題が生じている場合です。そうなると買い手企業が人を送り込んで共同改善をすべきかもしれませんし、場合によってはサプライヤーの切り替えも視野に入ってきます。

他方、サプライヤーにとって重要度が低い顧客であることが原因の場合もあります。重要顧客の注文が優先されて、平然と回答納期が破られていることが、特に需給逼迫時には起こりえます。買い手企業の購買幹部が他社系列のサプライヤーを訪問したら、「実は他社の方に回しているので」がわかったことが実際にありました。しかし需給逼迫時に代替サプライヤーを探すのは簡単ではありません。「購入に十分なサプライヤー基盤(サプライヤーベース)を確保しておく」という取引先管理の失敗が根本にはありますが、買い手企業での在庫保有や、設計部門も巻き込んだ部材仕様変更検討などを考える必要が出てきます。

しかしいずれにせよ、回答納期(「やります/できます」回答)が守られないようだと、挽回策もなく大混乱になりますので、ぜひ守ってもらうべきものです。

3.指定納期遵守率とは何か

一方で、指定納期遵守率とは、買い手企業がサプライヤーに発注時に指定した納期通りに、どの程度サプライヤーが納入できたかを見るものです。

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すなわち、次の式で計算されます。

指定納期遵守率 =発注時に指定した納期通りに納入された数 ÷ 発注数

実をいうと、サプライヤー側の営業部門でも、この指標を「要求納期遵守率」と名称を変えて、顧客のムチャぶり度を観るのに使ったりもしています。

発注先(買い手企業)が重要顧客で競合サプライヤー他社に取られたくない場合には、この指標を向上させるべく、サプライヤーが頑張ることもあります。サプライヤーの生産リードタイム(材料投入から完成までの期間)よりも短い納期発注(場合によると、材料発注から材料納入、そしてそれをライン投入して完成するまでのトータル期間)を充足するために、製品在庫・半製品在庫・原材料在庫などの在庫保有、他社の注文を押しのけて特急生産などで対応してくれることがあります。

一方でムチャぶりが相次ぎ、指定納期(要求納期)遵守率が悪い、通常の買い手企業は、筋が悪く面倒な顧客とみなされ、需給逼迫などでサプライヤーの立場が好転した場合には、真っ先に”切る顧客“になりかねません。

したがって、指定納期遵守率には、その理由とともにも目を配っておく必要があります。前述の回答納期遵守率同様に、サプライヤーの能力不足に起因している場合も少なくありません。「普通はこれくらいの納期であれば」、あるいは「事前設定した標準納期を指定したのに守れない」、「以前に比べても納期が長期化している」といった場合には、回答納期遵守率と同様の対応策が必要です。

しかし一方で、買い手企業の指定納期が、サプライヤーにムチャぶりを強いた(極端な例では突然に「明日持ってこい」など) 結果の場合には、買い手企業側で業務オペレーションを見直すことも考えなければなりません。もちろん買い手企業側も単にムチャぶりをしているのではなく、相応の社内事情があってと思われます。買い手企業の社内調整力が購買部門に求められるところです。

4.このタイミングで納期遵守率の使い方を再考してみよう

このように、納期遵守率には2種類があります。皆さんは、それぞれの目的を把握したうえで、自社の弱点の発見と克服にうまく使いこなせていらっしゃいますか? ちょうど今、需給逼迫で納期が注目を集めています。納期遵守率の使い方を見直す絶好の機会かもしれません。

一方で、特に指定納期遵守率の如何は、買い手企業の発注の出し方にも大きく関わります。ゆえに、次の「2).発注方式への理解」で発注の仕方に目を向けてみます。

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