【解説】 FBI SWATとは?
※ 内容は限られた公的情報や画像資料等を参考にしているため、全てが正しいとは限りません。参考程度にご覧頂ければ幸いです。
この記事では、世界最大のアメリカの法執行機関(LE)である『FBI』が保有する2つの特殊部隊を、2パートに分けて解説します。
FBIとは
あなたはこれまでにFBIという組織名を、TV番組や映画等で耳にしたことはないでしょうか?
Federal Bureau of Investigationの略で、日本語では連邦捜査局という、アメリカ司法省(DOJ)に属する法執行機関の1つです。
FBIという組織を簡単に説明すると、国中のエリートを集めて、圧倒的情報量/権限/教育/予算をもとに、連邦法(国レベルの法律)に違反する、組織犯罪、州をまたぐ犯罪(地域警察レベルでは管轄が分かれてしまう)、テロ等の地方警察では対処の難しい比較的に“大きなヤマ”に対処するアメリカの警察機関の一つです。
その名の通り、捜査に特化した国家機関であり、基本的には突発的に起きた事件の対処ではなく、徹底的に調べ上げた容疑者宅への強制捜査(Raid)等を得意としています。
LEとしては組織規模も世界最大で、アメリカ国内に56もの分局があるだけでなく、日本の大使館をはじめ、世界にも拠点を持っており、国外の捜査活動を行うこともあります。
(国外捜査の例として、2021年には世界中の犯罪組織向けに“高度に暗号化された通信ができるアプリ”を意図的に開発・流通させ、それを信じて利用した犯罪組織のやり取りを全てチェックしたうえで、世界中のLEと一斉摘発をしました。このほか、同年ハイチ大統領暗殺事件にも捜査協力しています)
窃盗や交通違反等のありふれた犯罪には対処しないため、FBIが人々の目に触れる機会は滅多にありません。
そのため、多くのアメリカ国民にとっては「ドラマや映画にはよく出てくるけど、実際に見たことはないし、どんな仕事をしているのかイマイチわからない」組織というところでしょう。
FBIの特殊部隊
多くの人がイメージするFBIの姿は、スーツにサングラスだったり、FBIの文字が入ったジャケットを着た『Agent (捜査官)』や『Gman (Gメン)』とも呼ばれる、『Special Agent (特別捜査官)』が一般的でしょう。
海外ドラマで描かれるような、FBIにおける“花形”な人たちですね。
しかし、そんなFBIにも特別捜査官の一種として、特殊部隊が存在し、『SWAT』と『HRT』という役割や練度、指揮系統の全く異なる2つの部隊があります。
これらは同じ『FBIの特殊部隊』ではありますが、あくまでも『全く別の部隊』であり、お互いに関わり合う機会は滅多にありません。
このパート1では、このうち『FBI SWAT』を先に解説したいと思います。
HRTについてはパート2をご覧下さい。
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FBI SWATとは
FBI SWAT
SWAT (Special Weapons and Tactics)は、1973年に創設されたFBIにおける初動対応部隊で、FBIの特殊部隊としては最も多く出動している部隊です。
※ SWATという部隊名自体は、アメリカの多くのLE特殊部隊が使っているため、あくまで「FBIのSWAT」になります。世の中のSWATと名のつく部隊の全てがFBI SWATという訳ではありません。
FBIが米国内に持つ56のField Office (地方局)に部隊が割り当てられており、各支局ごとに最大42名の隊員が所属しています。一部支局では更に担当地域ごとに部隊が分かれることもありますが、いずれにしても各支局の管轄する地域の危機に迅速な対応ができるようになっています。
56支局それぞれに配備されていることもあり、LE系特殊部隊としては世界最多の所属人数で、米国全土で1000名以上が所属しています。
これらの各地域に点在する地方局のFBI SWATは、Local SWAT (地域SWAT)とも呼ばれています。
部隊ロゴはシールド型の縁取りに、アメリカ国旗、FBIロゴ、SWATのシンボルである鷲と雷、創設年を表す73が描かれています。
この意味を要約すると「1973年創設のFBIのSWATが、アメリカの盾となり、国民と憲法を守る」といったところです。
FBI SWATはイザヤ書に由来する「私を遣わしてください」(Mitte Me)をモットーとしており、これはFBIに限らず、米国の様々なLEのSWATチームが掲げているもので、奉仕に志願する意思を示したものです。
ただし、局によっては異なるモットーを部隊章等に記している場合もあります。
Enhanced SWAT
56支局のSWATの中で、特に大都市や犯罪多発地域を中心に14のチームがEnhanced SWAT (強化部隊)として指定されています。
この強化部隊は、基本的に他支局SWAT同様の任務を行いますが、通常の部隊よりも最大所属人数や扱える機材・技術が多く、海上任務や海外展開することもできます。
平時における任務や採用する装備は、地域SWATと同じですが、入隊試験は地域SWATよりも厳しいものとなっています。
また、地域SWATでは困難な状況の場合、近隣の強化SWATが応援に駆けつけることもでき、地域SWATよりもさらに広い範囲を管轄することから、Regional SWAT (地方SWAT)とも呼ばれています。
SWATの主な任務
公式にあげられている任務は
人質救助
車両停止
航空機、列車、バスの強襲
大量破壊兵器(WMD)関連作戦
逃亡者の追跡
要塞(拠点や家屋)の強襲
人員保護
ハイジャック対応
狙撃作戦
となっていますが、実際には他にも
対ギャング作戦
対テロ作戦
イベント警備
地域とのコミュニケーション
交流イベント運営
各種ボランティア(災害派遣など)
国内法執行機関への訓練
海外法執行機関への訓練
海外で起きた高度な技術が必要な事件捜査
といった任務にもあたっています。
2015〜2019年の間に、FBI SWAT全体で合計5175回の任務を遂行しており、DOJに属する特殊部隊としては最多の出動数です。
(実際は56支局に部隊が分散しているため、支局ごとによる出動数にはばらつきがあります)
レイド以外の、事件現場に応援として出動する場合には、地域警察のSWATでは対処の難しい人質事件やテロ等の場合に出動します。
FBIの地域SWATでさえも対処できなければ、最寄りの強化SWATが応援に来ることになっていますが、このレベルの場合は強化SWATでなくHRTが派遣される場合がほとんどです。
参考資料として米国会計検査院(GAO)による連邦戦術部隊に関する報告書も掲載しておきます。
勤務形態と採用
仕事としては常勤でなくパートタイム制で、隊員らは月に2~4日、32時間以上は訓練等を行い、事件や任務のない平時は特別捜査官(俗に言うGman)としての仕事にあたっています。
(チームリーダー等の一部役職ではフルタイムとなる場合もある)
募集は志願制で、Tactical Recruiting Program (TRP)を通じて、FBI内部だけでなく他の法執行機関や軍隊からも候補者が集まります。
(特に米軍のアフガニスタン撤退後は、明らかに元軍人と見られる隊員が各局で増えている)
前述の通りSWATはパートタイム制なので、候補者は選抜試験を受ける以前に、はじめの2年間は平時の仕事でもある特別捜査官としての試用期間があります。
TRPにより軍や法執行機関での経歴が認めらて入隊をする場合を除き、捜査官からのキャリアアップとなると、そもそもFBIの捜査官になるためには、いくつかの指定難関大学の学歴や体力も必要となります。
なので、FBI SWATはインテリと歴戦の猛者揃いの特殊部隊とも言えるでしょう。
試用期間を経たあとは選抜試験があり、
射撃
問題解決
体力
意思決定
逮捕テクニック
命令を守り命令に従う能力
などの要素で高い基準を満たす必要があり、さらに疲労、ストレス、強迫などの極端な状況下であっても最大レベルでそれらを実行することが求められます。
これらの要件をパスした者がSWAT隊員の資格を得ることができますが、承認を得た後も続けてNew Operator Training School (NOTS)および対WMD(大量破壊兵器)の基本訓練プログラムも完了する必要があります。
これらは半年以上続く訓練となっており、それを乗り越えてようやく実働メンバーの一員となります。
恐らくFBI HRTを除けば、“SWAT”の名がつくLE系特殊部隊としては入隊が最も難しい特殊部隊と言えるでしょう。
こうしてSWATとして経験を積み、特に技術や軍歴のある隊員は、その後インストラクターやチームリーダーの資格へと進む場合もあります。
Specialized
SWATの職務
SWATには以下の職務/資格/特殊技能があります。
Assaulter (攻撃班≒基本職)
Breacher (突破班/特殊技能)
Sniper (狙撃班/特殊技能)
Fast Rope Specialist (ラペリングのプロ資格)
Assaulter
AssaulterはFBI SWATにおける最も基本的な職務で、事件現場に出動する隊員のほとんどがこれにあたります。そのAssaulterで構成された部隊編成はAssault Teamと呼ばれることもあります。
それ以外のBreacherやSniperはそこから派生した特殊技能(専門資格)という扱いになります。
Breacher
Breacherはショットガンや丸ノコ等のガジェットを用いて、施錠されたドアなどを突破する専門知識を持った隊員に与えられる資格です。基本的にはAssaulter同様に行動し、その技術が求められる場面で活躍します。
Sniper
Sniperはスナイパーライフルによる狙撃技術を極めた隊員に与えられる資格です。Sniper資格を得るには海兵隊のスナイパー養成所で非常に厳しい訓練課程をパスする必要があります。
狙撃/監視という任務上、見晴らしのいい建物や場所でAssaulterとは別々で行動します。
Team Leader
このほか、すべての隊員をまとめるSenior Team Leader (STL)、その中の分隊クラスの人数をまとめるTeam Leader (TL)、その補助を行うAssistant Team Leader (ATL)でSWATは構成されています。(チーム内で基本的にSTLは一人、TL及びATLは複数人いる場合がほとんどです)
Other Sqecialized
その他の職務
このほかSWATではありませんが、現場でSWATや捜査官のサポートを行う専門技能特化のグループを紹介します。
FBI Medic (医療班)
Special Agent Bomb Technician (爆弾処理班)
FBI K9 (警察犬ハンドラー)
Tactical Air Operation Officer (ヘリパイロット)
これら専門職の隊員はSWAT同様の装備を着用し、SWATに同行することがありますが、あくまでSWATではなく独立した専門技術グループ(別部隊)で、訓練等も独自に行っています。
また、戦闘部隊ではないので銃を持って現場に出ることは少なく、銃を持つかは状況や局によって異なります。
FBI Medic
MedicはTacMedと呼ばれることもあり、事件現場での戦術医療に特化したグループです。
「捜査」とは証拠を収集・保全し、容疑者を突き止め、逮捕し、事件の真相を明らかにすることです。
SWATも必要であれば、容疑者に銃を向け、発砲することがありますが、あくまでそれは逮捕のためのオプションややむを得ず行うものであり、容疑者の死亡は極力避けなければなりません。
そのため、危険が想定される現場には、チームの負傷だけでなく、容疑者の救護のためにも、SWATと一緒に出動することが多いです。
SWATの隊員らも応急処置的な戦術医療訓練は行いますが、Medicは医療器具満載のTSSI M9バックパック等を背負い、より高度な医療で負傷した民間人やSWATを救護することができます。
隊員の多くが長い救急医療の経験を持ち、事件現場等の特殊な状況下で専門的な救急医療を行うことができます。しかし、あくまで戦闘部隊ではないため、装備については部隊(支局)にもよりますが、必ずしもSWAT同様の最新装備という訳ではありません。
SWATのお下がりなのか、それともひと目でMedicと分からせるためなのか、理由は定かではありませんが、SWATの装備のマルチカム(迷彩服)化以降は、RG装備(緑の戦闘服)で紛れていることが多いです。
また、局によっては『FBI SWATのMedic』と、SWATの職務の一部として組み込まれている場合もあるようです。
Special Agent Bomb Technician
通称『SABT』と呼ばれる爆弾処理班(EOD)のグループです。ボムスーツを使うこともありますが、そのレベルの爆弾事件は滅多にないため、多くの場合はMedic同様にSWATに似た装備で現場にいます。
爆弾が隠されている疑いのある場合には、ドローンを使って調査することもあり、実際の現場ではボムスーツよりも低リスクなドローンのほうが多用されています。
また、SABTもMedic同様にSWATに同伴したり、SWATの一部に組み込まれている場合があるようです。
FBI K9
K9は相棒の警察犬と共に隠れた容疑者の捜索や確保、爆発物の探知などを行います。
装備は写真のようにSWATのような格好の場合もありますが、こちら戦闘部隊ではないので、BDU(戦闘服)のみで活動することも多いです。
K9に関しては、全支局に配備されている訳ではなく、保有していない支局のほうが多いです。
また、HRTにもK9チームがあるのですが、FBI K9とは、同じK9でも全く別の部隊扱いです。
(HRT K9はあくまでHRTの特殊部隊員)
FBI SWATの実状
活動
ここまでSWATの任務や役職などの概要を解説してきましたが、ここからはもう少し踏み込んだ、SWATのディープな部分に触れていきたいと思います。
FBIは9.11テロ以降『テロとの戦い』に大きく力を注ぐようになり、近年のSWATの主な任務は大規模なイベントでの警備や、テロ計画容疑者宅への強襲など、対テロ作戦が多くなり、カウンター テロリズム ユニットとしての側面が強くなってきました。
このほかギャングをはじめとした犯罪組織への対処や被害が拡大しそうな危険事案などに出動していますが、場当たり的に駆けつける地方警察のSWATと違い、捜査により予め特定された拠点や家屋への強襲に出動することの方が多いのも、捜査機関の特殊部隊ならではの特徴です。
さらには政治犯などもFBIの管轄であり、あまり“悪人”のイメージはない政治家や活動家の家宅捜索を行う際にも、SWATが投入されることがあります。
これは政治主張を通すための武力抵抗、逃亡や証拠隠滅の阻止を目的としていると考えられます。
近年の重大事件としては2016年UCLAや2017年ラスベガスで起きた銃撃事件などにも応援に出動していますが、応援として後から駆けつけるような場合には、地域警察SWATと比べると到着が遅く、いずれの事件でも現場到着時には騒動が一時収束していました。
このことからも、FBI SWATは強襲と長期戦(長くなるということは、それだけ困難な状況といえる)に強く、急な出動には不向きなのが地方警察SWATとの違いでしょう。
ただ、どんな事件も容疑者逮捕で終わりではなく、その後も捜査官による現場検証等があり、その間のサポートや警戒もあるため、遅れて来て何もしないで帰るというわけではありません。
しかしながら、大きなくくりでは“FBI SWAT”といえど、実際には全56支局に分散しているため、強化SWAT指定が管轄する犯罪多発地域や大都市の支局(部隊)でもない限り、あまり出動の機会のない支局(部隊)も多く、事件等で報道写真に出てくる部隊には一定の偏りが見えます。
例えば大都市ロサンゼルス支局の部隊の事件出動数は比較的に多いですが、意外にもニューヨーク支局は大都市にも関わらず地域警察NYPDの力も強いためか出動が少なかったりします。
では、出動することが少ない部隊は、事件や任務がない平時にSWATとして何をしているかと言えば、もちろん第一には訓練、そして第二には特別捜査官としての通常業務ですが、我々の目に見える形で出てくるのは地域との交流イベントや大規模イベントの警備です。
交流イベントは支局の管轄地域の市民や、小学生~大学生など幅広い層を対象に開催しています。
各支局で年に1回以上は開催される「市民アカデミー」では、成人を対象に銃の射撃体験や訓練展示を行い、学生向けの「ティーンアカデミー」では簡単な職業体験を実施し、FBIでの仕事に興味を持って貰うための活動をしています。
このほか病気の子供のための慈善事業や災害支援にも積極的に取り組んでおり、手広くボランティア活動を行っています。
大規模イベント警備では、主にスポーツの大きな試合や軍の基地祭、フェスティバル等の警備に参加しています。
“自由の国”アメリカならではですが、「法は自由や権利を制限するものであり、そんな法の番人であるFBIは政府の犬だ」というような主張を持つ人も少なからずおり、ここまで極端ではないにしても、連邦機関には不信感を持っている人もいるため、こうした地域密着型の活動も疎かにしていません。
知名度
FBI SWATは、全米でも最も人数の多いLE特殊部隊ですが、そうは言ってもそれが全国に分散しており、FBI自体が一般的な事件には出動しないため、前項のようなイベント等がない限り、大抵の米国民にとって、依然FBIはサスペンスドラマの中の存在に近いです。
この記事を読んでいるようなFBIに興味関心がある方でもない限り、アメリカ人でもSWATとHRTの違いはわからないどころか、存在すら知らない人も多いです。実際装備も素人目には同じに見えるでしょうし、現地メディアでも度々間違われています。
(最近ではCBSのドラマシリーズ “FBI” に登場シーンが多数あったため、多少知名度は上がったかもしれませんが……)
このようなことからも地域密着型の活動も、FBIにとっては認知を広めるうえで非常に重視されているのです。
日本の「SAT」もドラマに出てきたりはしても、見たことある人はほとんどいないですし、興味なければ名前すら聞いたことない人もいると思います。ましてやSATとSITの違いがわかる人は更に少ないと思いますが、米国でのFBI SWATの認知度はまさにそれくらいなのです。
練度
特殊部隊としての実際の練度は「入隊には高度な技術が求められ、入隊後もその技術の維持が求められる」というようなことを前述しましたが、後述のHRTや軍の特殊部隊のようなレベルではなく、あくまで警察特殊部隊という位置付けです。
突入時のイメージで言えば、SEALsのように俊敏な動きで突入して敵を瞬時に制圧するダイナミックエントリーではなく、フラッシュバンやシールド等のガジェットを用いて慎重かつ適確に「FBIだ!動くな!」等の警告を発しつつ突入、必要であれば敵の排除を行うデリべレートエントリーを基本戦術としています。
何よりも瞬間制圧能力に特化したHRTがいるため、特殊部隊とはいえ米陸軍で例えるなら“レンジャー”であり、“デルタフォース”の役割ではないといったところです。
これはSWATの制圧能力が劣っているとか、HRTがの方が優れているとかの話ではなく、「求められている能力」が異なるのです。
それでも “レンジャー” と例えたのは、やはり地方警察のSWATよりかは、優れた技術を持っているからです。
全ての支局が必ずしもSWATのための本格的な訓練設備を備えているわけではないですが、FBIはお金持ちLEなので、近年はFBI専属火器インストラクター中心の指導だけでなく、より専門的かつ質の高い訓練を受けられる、外部トレーニング施設の正式利用も増えています。
ほかにもSWATになる以前から、実力のあった軍隊出身者も増えたりと、隊員の全体的な練度が高いため、訓練も受けるばかりでなく、他機関への指導側に回ることも多いです。
装備
『SWAT』の装備といえば全身黒色の装備にMP5を持ったステレオタイプを思い浮かべてしまうと思いますし、某人気FPSゲームではそのように描かれたFBI SWATが登場しますが、現実ではそのような黒または紺の装備のSWATは、FBIに限らず2000年以降はほとんど見かけられません。
FBI SWATに関しても、そのような黒装備は2000年以前のもので、実際には緑(OD)系装備を使用していました。
特にSWATの装備では、レンジャーグリーン(RG)という緑の単色迷彩の装備スタイルが有名です。
今ではLE装備を象徴するカラーともなっていますが、FBI SWATは最も早い段階でRGを装備に取り入れたLE特殊部隊でもあり、LEにRG装備のイメージを定着させた部隊のひとつとも言えます。
(2010年頃にはHRTも国内活動でRG装備を使用していたため、この頃の画像は素人目には見分けるのが難しくなっています)
ほかにも、この記事ではマルチカム迷彩の装備の画像も出てきています。
9.11に次ぐ衝撃を与えたボストンマラソン爆弾テロ事件(2013)以降、SWATの重要性が増し、装備の更新が加速していきます。その更新は、現在に至るまで休まず続いています。
その流れで、2016年以降は各局でマルチカムへの更新が始まり、現在ではRG装備を使うのはMedicやK9をはじめとした特技班のみとなっています。
マルチカムへの装備更新理由については諸説ありますが、迷彩効果を狙っているというより、とにかくFBI SWATは人数が多いため、最も人気があり、どのギアにしても安定供給可能な色のため、選定していると考えられます。
更新はBDUに限らず、銃から小物まで様々なものがありますが、専門的な話はまた別の機会に紹介したいと思います。
地域章
近年他のLE特殊もRGやODの緑色系装備にシフトしているため、似たような装備の部隊も多々ありますが、FBI SWATの場合は必ず『FBI』のパッチが前後に貼ってあるので見分けがつきます。
(非常に稀に“POLICE”パッチを貼っている例はありますが、基本的に世の中の多くのPOLICEパッチのSWATは、FBIのSWATではないと考えていいです)
特にSWATの場合、所属支局を明確にするため、コールサインをはじめとした様々なパッチを使用するのですが、なかでも「FBI SWATならでは」なのが、筆者が『地域章』と呼んでいるパッチです。
56支局それぞれに配属するSWATたちは、同じFBI SWATといえど、実は皆全く同じ装備を使用しているわけでなく、支局が違えば使う装備も異なります。
そのため、同じFBI SWATでも「私が所属するのは〇〇支局のSWATです」というのを分かりやすく示すためのパッチが、この「地域章」です。
カッコイイものからポップなものまで、その支局の雰囲気を象徴するかのようにデザインは各局様々で、もしFBI SWATの画像を調べる際は注目して見てみると面白いでしょう。
支局ごとの装備の違い
さきほどの画像の、カリフォルニア州にある4つの支局の装備を細かく見てください。例えばBDUやヘルメットは同じでも、迷彩カバーをかけたり、かけていなかったりします。
プレキャリは、サンフランシスコとサクラメントが“JPC”というものを使用しているのですが、サンディエゴとロサンゼルスは“PICO”というものを使用しています。
装備採用については連邦機関ということでヘルメットやプレキャリ、銃器等の大抵の装備がFBI全体で『一括採用 (契約)』されています。
基本的に隊員たちは、これらの採用品のみしか使えず、規定外のものを使用するには許可等が必要なため、大半の隊員が使用例のセオリー通りの装備を使用しており、装備を再現するにあたっては例外的アイテムに対する自由度は高くありませんが、そこがいかにもお役所的でFBIの威厳ある風格を際立たせているとも言えるでしょう。
(さきほどのマルチカム採用理由もこれに関わっていると思います)
先程のプレキャリについても、他にもいくつか使用例があるのですが、皆自由にそれらを使っているのではなく、FBIが契約する大体5種類くらいの中から、各局で決めたものを使っているという感じです。
ほかの装備品も同様で、ある程度決められた装備の中から、局によって組み合わせが異なるため、一見局ごとに装備が違い、「自由なのかな」と思ってしまうかもしれませんが、全くそんなことはなく、大体が「セオリー通り」なのです。
このように各支局ごとに装備の「色」があるので、そういう意味でも、装備再現をする際には、先ほどの地域章は重要なアイテムだったりします。
いずれにせよ、とにかく自由に使いたい装備を選べるという訳ではないので、ほとんどの隊員が「装備は支給されたものを使っているだけ」といいった様子です。
とにかく人数も多いので、サイズも一定のものでまとめて納入されているようで、体格に合っていない装備品を使う隊員もしばしば見られます。
最後に
ざっくりとした内容ではありましたが、FBI SWATという特殊部隊を、2015年から研究し続けている筆者なりに、なるべく初心者にも分かりやすいよう解説してみました。
ここまで長々と読んで下さり、本当にありがとうございます!
少なくとも日本と比べれば、治安の悪いアメリカという国で、民間のトップ企業や他の安全な仕事の公務員になることもできたであろう聡明な方々が、日々危険を顧みず、人々の安全と治安維持に尽力しています。
FBI SWATという職業を、少しでも多くの人に知っていただけたら、筆者としても幸いです。
もし、この記事を見て、そんな彼らSWATの装備に興味をもった方は、「なんちゃって」ではなく、彼らに敬意を持ってきちんとFBI SWAT装備を揃えられるように、その心構えを含め、0から解説もしています。
この記事に逸れずに集めれば、同部隊の装備を無駄金なく確実に揃えられます。ぜひご覧下さい!
なかなか時間が取れず、内容は古いままですが、また改めてnoteに移籍したいと思います。
FBI HRTを解説するパート2もぜひご覧下さい!
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