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デュラハンは心の友 第1話 俺氏、デュラはんの寄り合いから逃亡する。

あらすじ

俺、デュラハンのデュラはん。
異世界にトラック転生したら、何故かデュラハンになってた。仕事放り出してプラプラしてたら拾ってくれたのがキウィタス村のボニたん。ボニたんめっちゃええ人で、同僚から匿ってくれるん。俺は代わりに村の周りの魔物倒したりしてるん。
でもなんか最近不穏なんよな。

第1話 俺氏、デュラはんの寄り合いから逃亡する。

 5年くらい前、トラックに轢かれてこの世界に転生したらデュラハンやった。
 ねぇデュラハンって知っとる? 頭を抱えた騎士っぽいやつ。別に困っとるわけでもなくて、物理的な話。最近アニメでも割と有名。
 でもなんつーか、首とれてるって死んでるってことやんね? 息しとらんし。
 転生したらすでに死んでたってなんなん!? クレーム入れてもええんちゃう!?
 と思たけど、案外悪うない。

 飯も食わんでいいし夜にプラプラしてるだけ。そんで今はなんか、この村の警備員になった気持ち。
 あ、俺がいる村はキウィタス村っていうん。街道からちょっと離れたとこにある人口100人くらいの小さい村でさ。10年ちょっと前にできたばかりの開拓村って聞いた。
 デュラハンっていうのは死を告げるものでさ、死ぬ人が出る家に行って家の人が戸をあけたらタライ一杯の血をぶっかけるん。それで姿を見られたら鞭で目を潰さんといかんらしい。
 意味わからんやろ?
 でもフレーバーテキストにもそう書いてある。なんか頭の中にアイコンがあってやな、『ステータスオープン』とか唱えると、脳内にいわゆるステータスが出るんやわ。そこの自分の種族にカーソルあわせるとそうポップアップが出る。
 なんだこの不条理。職業選択の自由はないのか。
 ここはステータスとスキルありきの世界線。

 まあそんなことを言うても仕方ないし、と思うて俺はいわゆるデュラハンの寄り合いから逃亡した。本来はデュラハンて妖精らしくて世界のことわりからは逃れられんらしいんやけど、俺の魂は転生者だからか縛られんらしい。よかったよかった。
 そいでプラプラしてた時に会ったんがボニたん。
 ボニアなんとかいう長い名前なんやけど、覚えられんかったからボニたん。デュラはんとボニたんいうとなんか漫才コンビみたいやなと勝手に思とる。

 ボニたんはキウィタス村で神父さんしてる30代くらいの男子。30代を男子いうんかようわからんけど、20下回るくらいにしか見えんからまあええやろ。身長は170センチくらいで茶髪のひょろっと痩せてる眼鏡似合いそう文系男子。お約束のエルフかなんかかと思たけど、耳尖ってないから違うんかな。
 もう会うて5年くらいたつけど容姿は全然変わらんし、でもTPO的に種族って聞いてええんかわからんからそのままや。案外俺小心者。だってボニたんはこの世界の最初の友達なんやもん。
 みんな逃げちゃうし、そら首もっとるから仕方ないし……。
 でもボニたんとはなんか気が合うて、そんなわけで俺の昼の寝床は教会倉庫。別に棺桶で寝たりはせんのよ。たまに元同僚が探しにくるんやけど、教会に籠っとれば見つからんっぽい。
 ボニたんに聞いたら妖精は普通は教会に入れんのやって。妖精いうと手のひらサイズのイメージなんやけどな?
 まぁ俺の前世知識でもボニたんから聞いた今世知識でも、妖精は少なくとも善なるものやないみたい。そのせいかな。
 俺?
 信仰心とかないからやと思うけど全然平気。

 昼間は自宅教会の倉庫を警備して、夜間は村の周辺を警備しとる。
 この世界はお約束の中世ヨーロッパ系ファンタジー史観で、なんか狼とかゴブリンとかちょくちょくやってくるから。
 デュラハンて戦闘能力高いんな。鞭使いでなんやかっこええ浪漫職。転生した時から既に鞭レベル4やったから、なんでかヒュンヒュン使えて楽しい。やってきた狼やっつけて森の奥に捨ててくるん。死体をそのままにしとくとゴブリンとかくるし。ほんま嫌よね。
「デュラはん~?」
 あっボニたんが呼んどる。
「何何~?」
「隣村の方で大きな魔物が出たんだって。またお願いしていいかな~?」
「オッケオッケ、今晩行ってくる!」
「ありがと。デュラはん大好き。倒せてボーナス出たらまた面白いものお取り寄せするね」
 サムズアップ!
 デュラハンやから頭の反対側にある右手に上がった親指を俺は確認できないんやけど。大好きいわれたら張り切らんとあかんわ。
 ボニたんは俺の倒した魔物とかを教都本部に報告して報酬をもろてる。ボーナス出たら魔法の眼鏡とか面白魔法グッズを色々買うてくれる。こないだもろためっちゃ切れ味ええ魔法のナイフとかキャンプに便利。倒せたらなんか買うてもらお。

「デュラはんならきっと大丈夫。でも無理だったらちゃんと逃げて帰ってきてね」
「大丈夫やて、なんとかしたるわ!」
 そんな強いんかな。
 ボニたんが『きっと大丈夫』いう時は失敗する思とる時や。
 でもデュラはんがんばるで!
 まぁ無理やったら逃げてこよ。
 それにしても大きいてどのくらい大きいんやろ? 俺より大きいんかな。
 多分俺2メートル超えとる思うけど。前に1回切り株の上に頭置いて自分の全体像眺めたことあるから多分正確。
 うーん、まあ俺死んどるからなんとかなるやろ。そう思って出かけた夜の山。

 死んどるからか夜目が効く。
 ホーゥホーゥと鳴くフクロウがどこにいるかもわかっちゃう。多分投石したら当たるけどそんな可哀想なことはせんで。夜の山はいい匂い。なんか解放感。別に束縛されてるわけやないけど。
 さてと、魔物てどうするかいな。むやみやたらに歩いても山は広いし大きいし。
 そういう時はデュラハンの固有種族スキル、スピリッツアイを起動する。生命力を感知できるん。
 デュラハンって死を検知するわけやからか、こういう謎いスキルがあるん。
 生命力ってなんなん? っていう疑問も湧いたけどわからんもんは考えても仕方ないわ。

★1章

★2章

#創作大賞2024 #ファンタジー小説部門 #デュラハン  

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