
出雲駅伝過去最高5位 アイビーリーグ選抜の出雲駅伝当日に密着
出雲駅伝過去最高順位である5位を獲得したアイビーリーグ選抜チーム。アイビーリーグとは、アメリカ北東部のある8つの私立大学の名称である。今年は1区2区4区で区間2位を獲得する快挙であった。持ちタイムがとてもはやく、中には1区を走ったKieranは10000mで27分17秒の記録を持っている。
今回は出雲駅伝当日の朝食から表彰式まで、1日全てを密着した。彼らが5位入賞を果たした舞台裏に迫る。
詳細はYouTubeにも掲載されています。是非御覧になってください。
出雲駅伝当日の朝食
朝8:30分。出雲駅伝当日。選手たちはホテルのビュッフェで朝食をとっているようだ。食の文化の違いもあるだろう。彼らは普段、レース当日はどんな食事をとっていて、食の文化が違う日本ではどう工夫をしているのだろう。
1区を2位で走った、5000m13分8の記録を持つキエラン・トゥンティベイト選手は
「普段はオートミール、もしくはベーグル。今日はないのでご飯とパンですね(笑)」
とこたえた。また、駅伝について
「駅伝は普段のレースと違って自分がチームのために何をできるか考えなくてはいけない。順位よりタイム差が大事。」
と語った。
キエランは10キロ付近のロードレースは約1年ぶりのようだ。
また、他大学の選手について、調べているかと聞くと
「彼らが十分に早いことを知っているから、調べることは重要ではないと思っています。調べたとしても、私の戦略には影響しない。5000mで13分15~25の選手が走っても、他大学の選手は強く調子もいいので、差は大きくないと考えています。」
数日前に日本についてから、出雲駅伝のことしか考えていないようだ。時間があったら、京都とか東京に観光に行ってみたいですけど、この遠征は観光目的ではないので、と笑いながら語った。

ペリー選手(左)とキエラン選手(右)
5区を区間9位で走った、5000m13分38を持つ、マシュー・ペレイラ選手は日本の食事を
「最高。食感が完璧。他の米よりも、もちもちでお箸を使って食べやすい。私は日本の食事が楽しいです。」と嬉しそうに語った。
また、マシューは今回の出雲駅伝の戦略として、前半区間に強い選手を配置し、残りのメンバーでそのいい流れを維持するというもののようだ。
昨年、3区で出雲駅伝を走りうまくいかなかった経験を活かし、今年はロード練習を増やし、5月にはトラックシーズンを終わらせ、夏は出雲と秋のレースに向けてしっかりと準備をし、調子はいいようだ。

次はハーバード大学で4区を2番で走ったエイサー・アイバーソン選手。5000mは13分26秒。日本に来るのは初めてのようだ。日本はとても美しく、特に出雲は山もあって自然がきれいと感じたようだ。また、朝練が楽しく、とても平和な場所だと感じたようだ。

自然の美しさをとても気に入ったようだ。
レース当日の朝練は2分歩き、2分ジョグをするのを5キロに到達するまで繰り返し行うようだ。レース前に流しておくことを目的としているようだ。
最後に5000mを13分52秒の記録を持ち、3区を8番で走ったロバート・ミランダ選手と5000mを13分41秒の記録を持ち、6区を7番で走ったタイラー・バーグ選手。
ロバートは普段の朝ごはんの日本バージョンにしたメニューを食べていると語った。また、タイラーは午後のレースの時は普段はクリームチーズとベーグルを食べるようだ。

落ち着いてインタビューにこたえてくれた。
それぞれの区間配置に関して、満足しているかどうか聞くと、タイラーは
「私はここにいれるだけで満足ですが、この数か月は8~10キロの為の練習をしてきたため、3区で完璧。とても楽しみにしています。」
と語った。
また、ロバートはフルマラソンに向けての練習をしているため、一番長い区間で満足しているようだ。10.2キロある6区だが、マラソンに比べたら短いと感じているようだ。
選手たちは競合として、駒澤大学と青山学院大学が強いと知っていると答え、ライバル視をしていた。
目標を聞くと、
「8位入賞は本当の目標ではない。だが、過去を見たら、タイムでは上位ランクに位置しながら結果を残せておらず、最初は結果を出さなくてはいけない。しかし、私達は私達自身に大きく期待している。8位以内、またはその先の3位以内という目標は、まだ達成していないからこそ、それを達成できる自信を持つのは大事」
と、語った。
アイビーリーグの選手が出した自己ベストはかなり前であり、今はトライアスロンやマラソンなど他の競技を行っている選手がいることや、日本までの長旅を考慮したら、5000mのベストが日本人の大学生と比べて早くても、関係はないと思っているようだ。
ただ、選手の中には5000mで自己ベストを出せるくらいの調子がいい選手もいるようなので、今年はとても楽しみにしているそうだ。

会場出発
10時30分。それぞれ支度を済ませ、ロビーに集合していた。これから出発するようだ。
監督のジャック・フォルツさんとコーチ兼マネージャーのジョーダン・マンさんは楽しそうに談笑していた。

バスに乗り、現地に到着。とても気温が高い。
レース2時間前の11時に1区集合場所に到着した。
キエランはいつもスタート前にエスプレッソを飲むようだ。

出雲駅伝スタート
1区がスタート。キエランが1区で区間2位。ウィルも区間2位の好スタート。
3区のタイラーが2位で襷をもらった後、後ろから来た青山学院と駒澤と一緒に先頭集団に途中までつき、後半は後ろに下がって1人でレースを進める。

区間8位だった。
4区のエイサーは区間2位。5区のマシューは区間9位。6位で襷をアンカーのロバートへ繋いだ。5位城西大学とは12秒差であった。

ロバートは区間7位で走り、城西大学を捉え逆転し、5位でフィニッシュ。
アイビーリーグ史上最高順位の5位を獲得した。

大喜びのジョーダンコーチ
出雲駅伝レース後
レースが終了。待機場所で明るい雰囲気の様子だ。何名かの選手とジョーダンコーチがインタビューにこたえてくれた。

6区を区間7位で走ったロバート。「いいレースでした。6区を6位でスタートし、5位でフィニッシュできたのでよかったです。今日はそれがチームに対してできる事でした。」
とレースを振り返った。
5キロ地点で城西大学に追いつき、少し後ろについて走った後、5~8キロ地点では何度も揺さぶりをかけたが、城西大学は離れなかったようだ。残り1・5キロ地点でスパートをかけ、引き離すことができたようだ。追いつかれるのが怖く、全てを出し切ったようだ。
また、駅伝について「自分の国、町で走っているような応援だった。地球の反対側なのに、半分くらいの人がアイビーリーグをサポートしてくれているような感じがしました。このような経験をできることに対してとても感謝しております。」

応援してくれた方々にとても感謝をしていると語った。
2区を区間2位で走ったウィル。昨年と同じ区間で、昨年は力不足で結果が振るわなかったが、今年はとても満足そうだ。
8秒差でスタートした先頭の青山学院に追いつき、先頭を途中まで走ったことがとても楽しかったようだ。昨年よりもかなり気温が高く、真夏のようと感じていたのにも関わらず、昨年よりも1分はやいタイムで走り切った。

最終学年でいい結果が出せてよかったと語った。
次は1区を2位で走ったキエラン。楽しかったよようだ。また、今の調子を出し切れたようだ。
誰も先頭を走りたがらないような雰囲気を感じ、先頭を引っ張った場面もあった。キエランがラスト1・5キロでスパートをかけたが、青山学院の鶴川選手にラスト400mで抜け出されてしまったようだ。

彼も先頭を引っ張りたくなかったようだ。
次に、5区を走ったマシュー。
「チームで1番私が弱いが、あまりタイムロスをせず去年よりも走ることができてよかったです。」
と謙虚にこたえた。
また、マシューは途中城西大学に抜かれたが、それに関して
「抜かれたときに、相手がどのくらいのペースで走っているか感じなくてはいけない。今回は城西大学に抜かれた後に30秒ほどついたが、このままではラストまではもたないと感じ、自分でペースを決めて走った。」
と、駅伝での走り方を学んでいるようだった。

6区のロバートのためにも城西には抜かれたかったようだ。
最後にジョーダンコーチ。
「とてもエキサイティングなレースで、みんなゴール後には喜んでいた。今年はOBなどからも沢山の支援をいただいて、結果も過去最高順位の5位だった。」
また今年の戦略として
「強い選手を最初の区間に配置し、前で走ることを重要視した。過去には距離が長い区間に強い選手を配置していたが、それはチーム全体が強ければできる事だと思う。8位入賞を狙うなら調子のいい選手を前半の区間に配置した方がいい戦略だと思った。」
アイビーリーグはヨーロッパなどの様々な国へ遠征に行くことがあり、中にはパーティーをしてレースを少しだけ走るといったものもあるようだ。しかし、この出雲駅伝は説明会などもきちんと行って、素晴らしさを伝えていたようだ。ファンがコース全体に並び、悪い走りをしたら恥ずかしいと感じ、経験したら絶対出たくなるようなレースと、数か月前に選手に伝えれたことが今回の5位という結果につながったのではないかと考えているようだ。
3年以内に8位入賞を掲げ、そのために今年は説明会を行ったり、OBの方々がスカウトを手伝ってくれたようだ。その結果、目標をわずか1年で達成した。来年以降の目標として、毎年トップレベルの選手をスカウトできるわけではないが、今年が一期一会でとれた入賞ではなく、毎年入賞できる
チームを作って、出雲駅伝に挑むと語った。

最後は日本語で、応援してくれた方々へ向けお礼を言った。

日本人のように、深々とお辞儀をして賞状をもらっていた。
次回は前日刺激の様子や日本に来てからの行動、出雲駅伝後の打ち上げなどを記事にする予定です。
是非御覧になってください。