左右

僕の席の左には君がいた。
席は自由なはずなのに。
話したことのない君がいた。
決して美人というわけではない。
でも、愛らしく、
午後の日に照らされる君は、
僕にとってかけがえのない存在だ。

僕の席の右には、
近くに住む友人がいた。
席は自由なはずなのに。
友達だろ。とかいうくせに、
毎日、話しかけてくるわけでもなく、
ただそこに、いた。

真ん中の僕はクラゲのように浮かんでいた。
気になる人のもとへ、行きたいような、行きたくないような。

席は自由だ。
僕が移動すればいいんだ。

だけど、決してそこから動けないんだ。

だって地縛霊だから。
机の上には花瓶が置かれているから。

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