短編小説
「今日はパーっと遊ぼうよ。」
そう誘ってくれた友達とオールでカラオケって約束して、ふと気付いたら1人だった。
あれー?っておもったけど、どういう経緯で1人になったかは思い出せない。相当飲んだのかもしれない。
ま、いっか、と、家路に着く。
幸いにも終電まで時間があったし、ちゃんとSuicaも持ってた。無事帰れるだろう。友達には今度会った時に謝ろう。別に今謝る必要もないだろう。
Suicaをタッチして改札を通ろうとしたら、ゲートが開かない。残高不足か?と思ったが僕はSuicaに結構入れておくタイプだし。おかしいなと思った。
駅員さんに聞こう、そう思って駅員さんのいるところへ行き「すみませーん?」と声をかけた。だが返事がない。人影が見えるからいないわけではないと思うんだが…なんなんだ今日は。
「すみませーん??」さっきより大きな声で叫んでみたもののまったくの無視。
そこへ車掌さんみたいな方が通ったから「駅員さん呼んでくれますか?」って図々しいかと思ったけどお願いしてみたら、こっちも無視。
イラっとして、「おい、聞こえてんだろ?無視してんじゃねーよ!?」そう怒鳴ったが周りの通行人もまったくの無視。というか、声が届いてない感じ。おかしいと思った。いったいどうしたのかと。
そうだ、と、友達に電話してみた、こっちもやはり無視きめこまれてる。
終電まで時間があるし電車は諦めてウロウロしてみることにした。コンビニ、アパレル、スムージー屋さん。ことごとく無視。
これは何か僕に問題があるんじゃ、って自分の体を見たら半透明。
意味がわからなかった。死んだのか?でも、見た目の怪我はなさそうだった。
なんなんだよ、どうしちまったんだよ!?
するとさっき電話した友達から折り返しの電話が来た。
「なんかおかしいんだよ!誰もなんの反応もないんだよ?お前どうした!?どこにいる??」話せる相手ができた僕は立て続けに質問した。友達は「落ち着けよ、お前が望んだ世界だろ?」と、言ってきた、意味がわからなかった。とりあえず落ち合って話をしてみることにした。
「おっす。」「おっすじゃねぇよ、誰に何を話しても反応ねぇじゃねぇか、何か心当たりないか?」僕は問いかける。「お前本当に覚えてないのか?カラオケすぐ飽きたって言ってぶらぶらしてたとき、変な占い師みたいなやつに占ってもらって、そこで透明人間になりたいんすよーとか言って、そしたらその願い叶えますとか言われて爆笑してたら意識無くしただろ?」言われるとなんとなく思い出してきた気もしないでもないでもないでもない。
「じゃぁなんでお前まで?」「そりゃ目の前でお前が見えなくなったら面白くて俺も透明人間になりたいって言ったにきまってんだろ。笑」
1。透明人間どうしは認識できるみたいだ。
2。占い師はどこかへ行った。
3。透明人間は食べることも飲むことも、人と話すことも、できないみたい。
どうしたらいいかわからなかったが、とりあえず男の夢の女湯に入ってみようと思った!
近くの銭湯を見つけて、ドアを開けようと思ったらスカスカスカスカ掴めなかった。
透明人間はドアを開けることも容易ではないらしい。
「どーすんだよー!」僕は降参ですと両手を上げた。
友達は急に「すこし腹減って来ないか?」って言ってきてけど、それは言わないようにしていた言葉だった。何も掴めないから何も食べられないんだろ?目に見えてがっかりする僕を友達は不思議そうな顔で見ていた。
「どうせ何も食べれないんだよ…気付けよ、察せよ。」そういうと友達の顔色が青ざめてった「じゃ餓死しちゃうんじゃ!?」「それがオチだろ…それまでに占い師見つけないとなぁ…どこにいるかわからない人を見つけることの難しさ。そして餓死するまでに見つけられるかの難しさ。でも何もしないで死ぬのはごめんだよ。占い師、探そうぜ!」そう言って2人は記憶を頼りにまた街をうろうろしだした。
2人とも透明人間になった時に意識が飛んでいて、その隙に占い師がいなくなった。
ばばぁだったから、そんなに遠くへはいけないだろうと、手分けして走り回ることにした。僕が曲がり角を曲がる時、どすんと何かにぶつかった。もう1人の半透明の人間だった。「わー!ごめんなさい!!」そういうと「大丈夫大丈夫、君も透明人間になりたいって馬鹿な願いを叶えてもらったの?」そう言われて、「そうです。」と、素直に答えた。
「私はね、透明人間じゃなくて透明人間狩りのほうなの、ごめんね。」そこで目の前が真っ暗になった。
透明人間は透明人間を食べるしかないらしい。ごめんねって言われても、って思ったけど、まぁあの世で食うより食われる方が気持ち悪くないかなと思った。end
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