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ヤンバルコシビロダンゴムシ


僕が飼育しているダンゴムシやワラジムシ達。実は種類自体はあまり多くはない。
しかし、同じ名称のダンゴムシやワラジムシを産地別で飼育している。

具体的に言えばヤンバルコシビロダンゴムシ、ツヤタマコシビロダンゴムシ、タマワラジムシの3種類を重点的に集めている。
そして今後はタテジマコシビロダンゴムシも集めるつもりだ。

上記のダンゴムシやワラジムシは地域による見た目の違いが大きく、果たして本当に同種なのか疑わしいことも多々あることが理由だ。

同じダンゴムシを地域別で複数飼育しているような物好きな人もなかなか居ないであろうから、今後はこのnoteで比較していくようにしようと思う。



今回は石垣島採集の記事でも記載したヤンバルコシビロダンゴムシ(と呼ばれている)というダンゴムシを地域別で紹介したいと思う。

一見しただけではサイズも小さく、色合いも地味なのだが、よく観察してみると紋の入り方や透明感が素晴らしいダンゴムシだと思う。

ヤンバルコシビロダンゴムシ
Spherillo sp.
本書でヤンバルコシビロダンゴムシとした種と似た個体は、南西諸島に広く分布している。
少なくとも沖縄諸島の各島に産する個体は同一種かまたは、ごく近縁な関係である。
ダンゴムシの本  奥山風太郎



また『おどろきダンゴムシ図鑑』のヤンバル産樹上性コシビロダンゴムシ(オキナワネッタイコシビロダンゴムシ?)の頁にはこのように記載がある。



ヤンバルコシビロダンゴムシはある種のシノニム(1つの種類に2つ以上の学名があること)のようなので、そうだとするとこの和名に有効性はない。
おどろきダンゴムシ図鑑 奥山風太郎


なんとも歯切れの悪い文章だと僕は思った。



『本書でヤンバルコシビロダンゴムシ"とした"』



この文章を読んだ際に本当のヤンバルコシビロダンゴムシとは一体どれなのだろうか?と僕は感じた。


各種SNSやネットで『ヤンバルコシビロダンゴムシ』と検索をしても出てくる情報が他のダンゴムシと比較しても少ない。


販売されていることも稀である為、収集するには自分で採集へ行くしかない。という非常に厄介なダンゴムシだ。
また飼育をしていても常に土に潜っていて決して楽しくないという問題児でもある。



現在、飼育しているヤンバルコシビロダンゴムシは、西表島産、石垣島産(5地域)、沖縄本島産、与那国島産の計8地域の個体である。
(まだまだ比較できるサンプルが少ないので今後も継続して採集していく)


実際に見てみよう。

沖縄本島産


石垣島IBRM産


与那国島産


現在飼育している個体で明らかに見た目が違う3種類を並べてみた。
(写真は随時追加更新予定)


色合い1つとっても違い、丸まり方も違う。
1度丸まるとなかなか開いてくれないので撮影も大変なのだが、開いた時の太さも違いが見られる。


なぜ地域によってこんなにも見た目が変わるのか。
仮説を立てて考えてみた。



1、『ヤンバルコシビロダンゴムシ』と呼ばれているダンゴムシは移動速度の遅さ故に地域による変化が大きい。

これは実際にヤンバルコシビロダンゴムシを採集してみるとわかるのだが、移動速度が異常に遅い個体が居る。
もちろん『一般的』なダンゴムシの速度で移動する個体も居るのだが、明らかに遅い個体が居る。
陸貝のように移動できる距離が短い故に地域により変化が大きく出たのではないかという説。




2、『ヤンバルコシビロダンゴムシ』と呼ばれているだけであって、実際は別のダンゴムシである説。


日本国内には学名だけが残され、写真が一切ないダンゴムシが多数存在している。
かろうじで少量の写真が残っているハンテンコシビロダンゴムシやアリノスコシビロダンゴムシは見た目も生息域も比較的ヤンバルコシビロダンゴムシに似ている。
しかも、厄介なことにハンテンやアリノスが流通することは少なく、比較するにも比較する対象が居ない。








あとはこちらの記事を読んでみてもらいたい。

http://isopoda.cocolog-nifty.com/blog/2021/06/post-8f9a51.html



この記事に出てくるVenezillo parvusというダンゴムシ。
世界中の熱帯地域に生息するコシビロダンゴムシであるが、記事内のムニンコシビロダンゴムシの例のように日本国内でも生息が確認されている。

このVenezillo parvusもヤンバルコシビロダンゴムシとして扱われている可能性が非常に高いと思う。




移動速度が遅くて、何より採集時も飼育時も土の中で丸まっているだけのダンゴムシがなぜこんなにも南西諸島の広範囲に渡って広がったのか。



某オークションなどで時々種類不明のヤンバルコシビロダンゴムシ『風』なダンゴムシが出品されているのを見つけると落札し、必ず入手経路をお伺いするのだが、購入した観葉植物の土に紛れていた。という返答がとても多い。


沖縄県外の方が沖縄で購入した植物に紛れていた。というパターンが1番多い。


比較した3枚のうちの1枚目のダンゴムシがまさに観葉植物に紛れていたダンゴムシである。
1番上にある写真と同一個体。


HPに掲載されているVenezillo parvusと見た目だけなら1番近いような気がする。

Venezillo parvus isopoda.cocolog-nifty.com より引用・転載
沖縄本島産


色彩は違うのだが紋の入り方などはどんぴしゃで一致している。
(もちろんそれだけでは判断できないが)


今後も各地の『ヤンバルコシビロダンゴムシ』を採集し、真のヤンバルコシビロダンゴムシを探したいと思う。





2021.11.25 更新







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