自治体発行「多様な性・LGBT対応 職員向けハンドブック」調査報告③
最終回の今回はアウティングについての項目をまとめていく。
過去記事はこちら
①性自認の定義、同性愛の定義、公共施設の性別区分運用
②災害対応
アウティングとは、
といった定義で、各自治体、概ね共通している。
★「自死さえあり得る著しい重大な深刻な人権侵害です」という脅迫
アウティングの項目はなぜかいずれの自治体も、パッと見て感覚的に恐怖を惹き起す、強い言葉が踊っているのが印象的だ。
いわく
「自死、自殺に追い込む、生死に関わる、著しい、重大な、深刻な、決して行なってはいけない、人権侵害です、絶対にやめましょう。」
他の項目と比べても、
アウティングの項だけが異様に感情的で偏った文言であると感じた。
他者に対して基本的に親切で善良であろうとする、そして裁判で訴えられたりなどしたら人生が終わるんだ、と思っているごく普通の大多数の人達に対して、
こんな文言を県や市という行政が公的な指針として出すことは威圧・脅迫以外の何者でもないと思う。
おまえは特権持ちのマジョリティであり、その言動は人を死に至らしめる重大な人権侵害になるぞよ、とされて、冷静で居られる人はほとんど居ない。
★男子大学生たちの事例
その裏付けとして挙げられがちなのが、ある男子大学生たちの事例だ。
挙げている自治体は、
16件/37
といった具合で、
と書き添えている自治体もあるが、おおむね「Aさんはただ想いを告白しただけだったのに、ゲイであることを周囲にバラしたせいで死に追い込んだBさん」と印象づける書き方をしていることに変わりはない。
岡山県などは、報道されている「転落死」ではなく、明確に「自殺」したと書いてしまっている。
自治体のガイドラインが感情的に強い言葉を使っているが、この事件についてこそフラットに見ないといけない。
あなたならどうするだろう?
ちょうど今、ある歌舞伎俳優の件が騒がれているが、
「アウティングが彼を追い詰めた」「被害者が被害を訴えたのが悪い」「被害者の性別を隠して報道しないメディアが悪い」といった声がすでに出てきている。
二次加害を(おそらく本当に善と信じて)正義ヅラしてして行なってしまっている人たちが居るのだ。
大学の件にしても、このような印象操作で事実をねじまげて利用され続けるのは相当な二次加害だと思う。
自治体のガイドラインも、たびたび事件のことを引っ張り出し本まで出してしまった活動家も、「性的少数者の養護者」たちの声も。
カミングアウトを受けた人物は、自分の選択したことではない相手の言動によって、一方的に心理的負担・責任を負わせられながら、たった一人で問題に対峙しなければならない。
一般の善良なる市民へ、そう思わせるには十分な威圧である。
★他の「暴露」と何が違うか?
こういったリプライが私に届いたが、
性的指向や性自認の暴露と、人種や出身地暴露の何が違うかと言うと、
「へーそうなんだね」で済まない場合が発生するということである。
性的指向や性自認をカミングアウト(告白)されたら……
同性から、好きだと告白されて体をベタベタ触られたり行く先々に着いてきてストーカーされたり、
といったことは「人種や出身地の告白」では起きない。
女子トイレや女子更衣室を共有していた人物から「実は私、男なんだよね、これからも共存してね❤」とカミングアウトされた女性が、自他の女性の尊厳を守りたい場合はどうすれば?
誰にも影響を与えない個人で完結する情報と違って、他者との「関係性」「そのうえでの要求」にも関わり得るのが性的指向や性自認である。
なんらかの「関係の構築(構築への要求)」がなされ得る。
そうした情報を告白される側は「告白されないこと」を選ぶ権利はない。
そうして受けた告白には、
自分と相手、周囲と相手の関係性におけるなんらかの要求など、
自他の尊厳安全にかかわる問題が含まれてくる。
そんな場合でも己の内にのみ秘めねばならない。
これは、「他の尊厳安全を劣位に置き、恣意を振るう特権を与える」という理不尽な勾配あるルールだ。
たとえば「オレ、子供が性的に好きで好きで、ひそかに興奮してるし家でもオカズにしてるんだ。もちろん、園児に手を出したりはしないよ?でも、○○先生にはどうしても聞いてほしくて……」
と同僚の保育士が相談してきても、誰にも言ってはならない。
というのに近いかもしれない(たとえが悪い💢とまた怒られそうだが、近いと言うか、LGBT「Q、P」とかだとそれも入ってくる可能性が普通にあるよね)。
「へーそうなんだ」で終わらせられない重大な問題も含むものを
一律で「アウティング禁止!」としてしまうとそれこそ
生命の危機に追い詰められる「告白の受け手」が出ると思う。
★男性への影響
とかくLGBT差別禁止問題では、被害に合うのは女性と子供だけだろ、と思われがちだが、
アウティングに関してはさきほどの大学の事例でもわかるとおり、男性だってかなり影響を受ける。
の示す通り、パワハラ防止やセクハラ防止としてすでに「性的指向や性自認」に関することがしっかりと含まれてしまっている。
うっかり、
もしくは女性従業員の尊厳安全を守ろうと思ったり、
自分が男性の先輩や上司から告白を受けたことで対処に困り精神的に追い詰められて相談したり、
といった場合に、訴訟や人事異動や解雇、減給などのリスクがありえる。
性被害者の告発ですら、「アウティングだ」と言われる理不尽な現状だからね。
以上、性の多様性ハンドブックに関する調査まとめでした。
なお監修や参考文献に出てくる団体名や活動家名もわりと気になったのだけど、ちょっと怖いんでまたそれはいずれかの機会に。
今回調べた自治体は下記の37件。
あなたの住む街は含まれていたかな?
ここにない自治体も、〇〇県 性の多様性 職員向け などで検索すると出てくるかもしれません。
暮らしに深く関わる内容なので、ぜひ急いでチェックしてみてください!
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