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【記憶より記録】図書館頼み 2302#1

 随分と間隔が空いてしまった「図書館頼み」
 がしかし、これにはワケがあるのです。と言うのも、宮城県立図書館が1月末から2月25日まで閉館(整理のため)となったのですね。
 そのような訳で、過日(1月13日)は平素よりも多めに借りてきたわけですが、読書的満腹感には遠く及ばず、結局のところ書店で仕入れてきた本や蔵書の一部を再読しておりました。そのような経緯もあって、此度はそれらの本も +α して記録しておこうと思います。
 ※凡例:No comment = 推して知るべし

1:北海道のニシン漁と青山家 
  -旧青山家漁家の魅力-
  編集 発行:北海道博物館
従前から「北海道と言えばニシン」という思いを強くもっている。昨今、大量のニシンが接岸し、海が真っ白になっているなんて話を聞いたものだから、なおさら気になって借りてしまった。北海道博物館が編集・発行しているだけあって、北海道におけるニシンにまつわる文化が、良質な写真と資料によって過不足なくまとめられている。

2:江戸の糞尿学 
  著者:永井義男 出版:作品社
今月一のヒット作。破廉恥な装丁に著者の挑戦的意思を感じ取って借りてみたのだが、それは単なる ” こけおどし ” ではなかった。かような本を相手に「芳ばしい」というのも滑稽だが、事実として良質な芳香を放つ一冊であったことに違いない。時系列的な変遷のみならず、糞尿の出処から処理するまでのシステムに関わった人々への眼差し、そして糞尿が循環していく様を丁寧に辿っており、本書が一人の作家(小説家・江戸文化評論家・中国古典翻訳家)によってまとめられている事実に感銘を受けた。挿絵も明瞭かつ豊富で、資料としても有用だと感じている。巻末の付録「小説・天保糞尿伝」もオツ。手元に置いておきたい一冊である。
 
3:崖っぷちの木地屋
  -村地忠太郎のしごと-
  著者:松本直子 出版:未來社
 No comment

4:南木曾の木地屋の物語 
  
-ろくろとイタドリ-
  著者:松本直子 出版:未來社
 No comment

5:たばこの日本史・七話 
  
-伝来から専売制度の終焉まで-
  著者:菊間敏夫 出版:文藝春秋
口直しには最良の一冊となった。マヤから始まる壮大な物語は、日本における専売制廃止の話にまで広がりを見せる。根付製作を嗜む人間としては、喫煙の風習やキセルについてより深く知ることができて有意義であった。昨今では嫌われている煙草にも、現代人の乏しい想像力では遠く及ばない程の歴史的背景を内包していることが分かる一冊。かく云う私は、就職すると同時に煙草を止めた人間ではあるが … (苦笑)。

6:江戸の親子
  -父親が子どもを育てた時代-
  著者:太田素子 出版:吉川弘文館
大胆な副題にそそられて借りた本ではあったが、予想以上に面白かった。数多の時代小説で描かれる武家・町人の親子関係の情景について、合点がいった事も少なくない。ややもすれば誤解を生じさせるような副題ではあるけれど、史料燧袋ひうちぶくろをなぞりながら、当時の社会制度や冠婚葬祭の場面、そして学びの場を通して、客観的かつ合理的に説明していることに感服した。

※なお、フォローさせて頂いている たまむし@古書クラブ さんの記事に面白いコンテンツがあったので、合わせてリンクさせて頂きます。(勝手にリンクさせて頂きました。御免下さい。)

7:江戸のハローワーク
  
-現代の職業のルーツは江戸時代にあった-
  著者:山本眞吾 出版:双葉社
古の日本人が糧を得るために就いた仕事は多岐に渡る。それは職人歌合などの資料を紐解けば窺い知ることが可能だろう。本書は、副題にある通り、江戸時代の職業を、現代の職業に紐づけようと試みているのだが、その想いが結実しているかと言えば甚だ疑問である。だが、各職業について深めようとしている点に好感を持った。歴史好きの中高生にお薦めできる一冊か。

追記:今月購入した本 & 蔵書

8:耳鼻削ぎの日本史(購入)
  著者:清水克行 出版:文藝春秋
著者の清水克行氏については、高野秀行氏との共著「世界の辺境とハードボイルド室町時代」で知った。中世日本史に造詣が深く、ユニークな研究をされている研究者だと認識していたが、かように戦慄を覚えさせる題名の本を出すとは思わなんだ。書店で見つけた時には、流石の私も心が波立った。内容は、一見して事例の羅列に過ぎない様にも思われるが、一筋縄ではいかない緻密さと意外性を感じさせてくれた。終盤には指や爪にまで話が及ぶが、地政学的な切り口による考証は、非常に興味深かった。冒頭で登場する「百瀬の耳塚」は、かつて私が暮らしていた地域(父の仕事の都合で3年程住んだ)からそう遠くない場所にあることが分かり、曰く難い感傷と共に、当時の田畑の風景や匙些末な出来事の数々が思い起こされたことは、本書が与えてくれたオマケであろうか … 。余談はここまでとして、私の中に出来上がりつつあった、日本の中世から前近代にかけての刑罰の既成概念を崩してくれたように思う。再読を重ねることになりそうだ。

9:鹽壺しおつぼの匙(蔵書)
  著者:車谷長吉 出版:新潮社
言わずと知れた車谷長吉。本書は表題作を含む短編集。誤解を恐れず記せば、こうした文学作品からしか得られない無形の力(動機もしくは意欲とでも言うのだろうか … )があるような気がしてならないのである。自分で気付いていないだけなのかもしれないが、そういう力を必要とする時に自然と手にしてしまうのだろう。車谷長吉については、別な機会に触れたいと思う。

 さてと … 25日まで、何を読もうかな … 。
 これもまた贅沢な悩みかもしれませんね。

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