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作品の紹介

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伝吉の手による根付や彫刻作品を紹介しています。
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【作品紹介】瓦に蛙 / かわら に かえる

 先月下旬には完成していた 瓦に蛙。  去る「災厄を喰らう」という記事で取り上げていた根付ですが、ようやく首尾が整ったので御紹介させて頂きます。 瓦に蛙 軒瓦の上に大きなヒキガエルが一匹。まるで門番のような佇まいです。  この根付の名前は「瓦に蛙」。  これもまた「丸鼠」や「草履に蛙」と同じく古典的な題材です。 1:小さな命に寄せて  作品紹介の前に、少しだけ余談を綴らせて頂きます。  此度は、穏やかな心持ちで製作を続けることが出来たように思います。それはやはり、カエル

【作品紹介】昇 鰻 / 行き先は鰻に聞いとくれ!

 古より、勇壮で勢いの良さや雄々しい姿、武運長久を表す言葉として、昇龍(しょうりゅう・のぼりりゅう)・昇鯉(しょうり・のぼりこい)といった言葉が使われてきました。  本作では、それらの例にあやかるべく、強かさと生命力の象徴として鰻に出番を請うことにしました。  それも、いつもの根付ではなくブローチとしてです。  とかく、ウナギの生命力は侮れません。  それは皆さんもよくよくご存知のことと思います。古来より「精がつく食べ物」として知られていますよね。殊に、川の産物に限って言え

【作品紹介】丸 鼠 まるねずみ

 ようやく完成した 丸鼠。  大人の「夏休みの宿題」といったところでしょうか。ぎりぎりセーフのタイミングで提出し終えたような心持ちでおります。  丸鼠 丸鼠 は、古典的な題材として数多の先達によって練られ、そして育てられてきました。それ故に、優れたお手本も多く、良い意味でも悪い意味でも影響を受けやすい題材と言えるでしょう。  僕自身は、そうした先達の影響から適度な距離感を保ちつつも、根付の「掌の小宇宙」「触れることができるアート」というアイデンティティーを学ぶための課題と

【作品紹介】尺 鮎

 夏の風物詩に数えられる「 鮎の友釣り 」。  その時節を迎えると、清き流れの川岸は釣り人の熱気で充満します。そして誰もが、良い流れをものにして多くの鮎を釣ろうと躍起になるのです。  しかしそれは、川の中も同様で … 。釣り人だけではなく、鮎の方も熾烈な 縄張り争い を繰り広げているのです。  釣る側も釣られる側も、同時に似たような時を過ごしていると云うわけです。ちょっと距離をとって眺めてみると、実に滑稽な話ですよね(笑)。  そんなこんなで、鮎釣りの解禁前に完成できて安堵

【作品紹介】陸前國 春告魚 -豊穣の海に春の訪れを告げる魚-

 三陸の海や山の食文化や慣習に根差した根付作品「 陸前國シリーズ 」の 第2弾となる「 陸前國 春告魚 」が完成したので、お披露目をばさせて頂きましょう。 1:モチーフ  作品のモチーフは、春告魚と呼ばれるメバルです。  本作では、身の厚い良型のメバル(凡そ8~9寸)を、雪氷を敷いた古い竹笊に2尾並べてみました。  場面としては、この十数分後には調理場でおろされて、美味しい煮魚となって僕らの胃袋に入る … といったところでしょうか(涎)。 2:メバルという魚  メバル