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第1話 多重人格の人と付き合うということ
多重人格。今は、解離性同一性障害という。
多重人格の人と付き合ったことはある人は手を挙げて。その人には、いくつ人格があった?
私の相方さんには、人格が20以上ある。実際は、いくつあるかわからない。一瞬だけ登場したものはカウントできないし、人格と呼べないものもあるから。
付き合い始めて半年以上経つけど、今までのことをnoteに書いてもいいと相方さんが許可してくれたので、少しずつ書いていこうと思う。
そもそも多重人格なんて存在するの?
「多重人格なんてドラマの中の出来事」「もしいたとしても、多重人格のフリをしているだけ」「演技しているだけ」そう思う人もいると思う。わかる。私もそう思っていた。だって、多重人格なんて都合がよすぎるじゃないか。どんな悪いことをしても「私じゃない。ほかの人格がやったんだ」って、普通では考えられない言い訳ができる。
でも、相方さんは、自分の言い訳のためにほかの人格を使ったことがない。それどころか、ほかの人格に振り回されることもある。
無邪気な人格「レイ」
相方さんと付き合い始めて間もない頃、一緒に行きつけのカフェへ行った。
「こんにちは」と、ほかの常連客にあいさつする。ここのカフェでは、客同士が親しくなることがよくある。しかし、私と相方さんが付き合っているのは誰にも言わずに秘密にしていた。だって、恥ずかしいじゃないか。
相方さんと向かい合って座る。注文したコーヒーを飲みながら、しばらく相方さんと話していた。そのうちに、相方さんがふらふらして、テーブルに突っ伏した。
この頃の私は、相方さんが意識を失ったときに必ずしていたことがあった。
相方さんの意識が戻るのを待って、それから、
「誰?」
と聞く。ほかの人格になった可能性が高いから、誰なのか聞くのだ。
「レイだよ。」
レイちゃんだった。よかった。「攻撃的な人格じゃなくてよかった」と、心の中でほっとする。元に戻るまでレイちゃんと話すことにしよう。そんなことを思っていたら、レイちゃんが声をかけてきた。
「ねえねえ。」
「ん?」
「(相方さんと)デートした?」
「!?!?!?」
危ない。コーヒーを口に含んでいたら吹き出すところだった。声が大きかったが、誰かに聞かれただろうか。慌てて周りを見回す。こちらを向いている人はいないようだ。これは、セーフだろうか。ドキドキしながらレイちゃんのほうを向き直す。
「(小声で)した…よ…。」
「そうなんだー。」
これは危険だ。何を言われるかわからない。相方さん、早く戻ってきてー。
しかし、私の心の叫びが通じることはなく、レイちゃんは常連さんのところに歩いていく。ちょっと待って。なんでそっちに行くのー!
「レイだよー。」
…な、なるほど。あいさつしようと思ったんだね。
「レイちゃん、こんにちは。」
常連さんもレイちゃんのことを知っているので、不審に思うこともなく相手してくれる。「みんないい人だな」と、思う。
幸い、「デートした?」以上の爆弾発言が飛び出すことはなく、相方さんに戻ってくれた。それからしばらくして、帰ることにした。
相方さんを家に送る途中、カフェでの話をした。
「さっき、カフェにいたとき、レイちゃんが出てきてね。」
「うん。」
「デートした? って言われたんだけど。」
「!?!?!?」
相方さんの顔が一気に赤くなる。やっぱり覚えてないよね…。