祈るように作る /水晶体に映る記憶vol.28
あなたの光になってくれた歌は何ですか?という質問があれば、迷いなくこの曲と答える。
中村佳穂さんの、「忘れっぽい天使」「そのいのち」
夜に勝てない時、朝が鬱陶しいとき、必ず来る試練から逃げたくてたまらなかった時、何故かこの曲を聴くと安心して眠れた。
彼女の曲は、感想を言葉で表すことが難しい。少なくとも私が今持っている語彙ではその一部すら上手く表せる自信がない。
だから、ぜひ先ほどの歌を聴いて感じてほしい。
そんな彼女の曲を生で聴ける機会が生まれた時、嬉しさでどうにかなりそうだった。
友人が作ってくれた機会。わたしたちが座った席は偶然にも会場どまんなか。顔の表情まで見える、とても近い席だった。
19時。彼女が現れ、声帯を振るわせた瞬間、マスクの中が涙でグショグショになった。厚着をしてきたはずなのに、全身鳥肌が止まらない。
踊るように歌う、こっちまで音の一部になっているよう。音楽を具現化したら、こんな人の形をしてるのだろうな…と壇上を見つめていた。
演奏が終わって、彼女が
また健やかに生きた先に会いましょう、らぶゆ、と言った。もう自然と手を振ってしまうくらいには愛しさが止まらなかった。
終わった直後、私は二つの気持ちが相反してあった。
ここで感じたことを、なにも曇りなく書きたい。
でも軽率に言葉にしたくない、この感覚のまま、記憶に刻みたい…
しばらく葛藤した結果、文字に残したい気持ちに負けた私は、たった5分だけ、考えないで書くことにした。
iPhoneのメモした時間には「10/28.21:42」とある。ライブが終わったのは、21時だから、かなり鮮度が高い文章だった。
少なすぎる文字数の中、私の感じたことが、要素として溢れてくる
彼女の歌は、誰かに向けた祈りのような気もするし、自分自身に向けた願いのようにも思えた。
そしてその祈りを受け取った時、
自分の奥の奥の方に隠していた袋のようなものがパン!とはじけて、溢れた。
「私も、彼女が一曲一曲を作るように、ものを作りたい」
新曲を作るために、彼女は故郷、奄美大島にいったそうだ。そこで、散歩をしたり、話したり、音を拾ったりして、歌を作った、と。
購入した彼女のzineには、そのお散歩の時に収録した、奄美大島の環境音もCDで付属されていた。
「作る」ことに対しての彼女なりの聖域を感じた。そこじゃないと、作れないもの。彼女じゃないと、作れない音。
そして恐れ多いのだけど、私もそういう感覚を知っている。作る楽しさ、嬉しさ、悲しさ。そこに集中してると、抜けれなくなりそうな怖さも。全部まとめて私は作ることが好きなのだ。
ライブ中、曲を聴きながら、私は次作りたいものをずっと考えていた。というより思い出していた。
ずっと放置していたzineの3ページ目、内側に意志を宿す靴下、コラムの連載だってしてみたいし、アクリルか水彩色鉛筆で書くイラストだって好きだ。
その中でも………
zine、作ってみようと思う、まず。
今年2022を締めるものはそれだと思う。
先日、素敵なフォントを作るデザイナーさんと知り合ったのだけど、彼にもその話をした。もしバイブスが合えば、フォントのデザインをしてほしい、と。こうやって、仲間を集めて作っていく感じ、すごく好きだったな、思い出したよ。
年末まで、頑張ってみる。
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