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続・外国で野宿したレポ。~人生で最も体が震えた時~
2009年9月2日、午後3時27分。
カオル君と歩き出す。
談笑しながら、草原をてくてくと歩く。
この時に、ドラクエウォークがあれば、かなりレベルが上がっただろう。
しかし、ARの世界ではなく、ここでは、現実の羊や馬に出会う。
もぅいっそ、乗って駆けたい。ていうか、野生の馬を初めてみた。
予想以上に、彼らは馬であった。
てくてくてくてく。
羊である。
一匹は寝転んでこちらへ目線を向けている。
そして、ほかの羊はつがいで、たむろしている。
多分、こいつはモテないからふてくされているのだろう。
俗にいう、「一匹羊」である。来世はオオカミに生まれてくれろ。
てくてくてくてく。
なだらかな、丘を登ったり下ったり。
歩き出して1時間、時刻は4時半。
小高い丘。
のぼった。
池の傍らにはつまれた石。
さっきから何やってるんだこいつ。
もしかして、俺にしか見えてないのか??
池のほとりで石を積むその様は、地獄の河原で石を積む、「賽の河原」状態である。(仏教)
俺が、鬼よろしくその石ぶっ壊してやろうか。。おい。
しかし、フォトジェニックな場所だったので、思い思いのノリで写真を撮った。人から借りたデジカメで。
(どう考えても場違いなファッションである)
そんなこんなしてたら、もう日没である。
ここで私たちは、
「あれ?町がなくない??人、いなくない??ずっと緑と羊、時々馬じゃない??」
という気分に包まれる。
もう、会話をするネタもなく、沈黙に包まれながら、二人はただ一定の方角を目指した。
てくてくてくてく x 100
小高い丘を登ったり下りたりを繰り返し、
ようやくである。
街明かりが見えた。
次の画像の右上にぼやぁっと光る部分、これが街である。
この時、すでに午後8時くらいだ。
「やった!あそこまで行こう。多分あと2時間も歩けば着くよ。頑張ろう」
もはや、何のためにこんなことをやっているかももう不明だった。
でも、きっと終わったら「いい経験だった、昔はバカやったよ」という、さも英雄譚かのように、キャバクラで武勇伝のように語り、その話を何回もして気持ちよくなるおじさんになれる、
そんな気持ちでゴールへと歩いた。
さあ、
2時間立った時の画像がこれだ。
い、
一緒!!!
ひとつ前の画像と一緒!!!!!
まっくら!!
道も、お先も、まぁっくらやみ!!!
そして私はカオルに言った。
「・・・多分あと、2時間くらいで(以下略)」
てくてく
てくてく
2時間てくてく。
そして、私の目の前に広がった景色がこれだ。
い、
一緒ぉおおおおおおおおおお!!!!!!
ここ、3枚の写真、構図、いっしょ!!
ちがうの暗さだけ!!
いやーやばいやばいやばいやばいだってもー歩けども歩けどもずぅっと同じ景色なんですものーずっと!わたしたち!!あるいてあるいてでもツーかなーい♪あの町には届かなーい♪ナニコレ新しい地獄ですかー「賽の河原」ならぬ「徒歩の草原」みたいなーなんて言ってますけどぉーへへへ(笑)
笑えるかぁー!
約10時間歩いて、ずっと山の中。
そして、私はシャツ、カオルは短パン
暗闇すぎて、歩くのももういやだ。
寒い。
きつい。
なんでこうなった。
そんな思いがぐるぐる頭のなかをめぐって私たちはあゆみを止めた。
「おい、もう夜中1時だぞ…
日付変わっちまったよ…」
そう僕が言ってカオル君はそっとつぶやいた
「あそこで寝よう。寝袋あるし」
いや、どこー!?
あそこって、どこー??
あの暗闇??それとも、あっっちの暗闇??
そんな突っ込む気力もなく、私たちは、山の斜面に寝袋を広げ、もぞもぞのくるまって寝た。
もし、あなたが山の斜面で寝袋にくるまって寝たことがあるならばわかるだろうが、
ブレコンビーコンズ国立公園は日本のような森林に覆われた造山帯ではなく、草原が隆起したような丘である。わかりやすく言うと、ハイジの世界のブランコみたいな。
そこでは、風を遮るものがなく、容赦なく、山に風がふきつけるのだ。
私たちは、寝袋にくるまっていたが、少しでも体勢を変えようと寝返りを打とうもんなら風が、土足で寝袋の中へと侵入してくるのだ。
「寒い!!!!」
当然、安眠とは程遠く、15分ごとに風のアラームに起こされる。
それでも、疲れた足だけでも休めようと寝続けた。
頭の中でメロディーが鳴る。
「お金はなくとも 何とか生きてた 貧しさが 僕らを運んだ~♪ 」
何とか生きていけるように、僕は目をつぶった。
しかし、
寝返る → 風て起こされる → 寝る → 寝返る → 風で起こされる
こんなサイクルを十数回繰り返したところで、朝日が顔を出した。
私たちを明日に運んだのは、どうやら寝袋だった。
ここで、私は人生で初めての経験をした。
朝起きて、人間がやることといえば、お手洗いでおしっこであろう。
当然トイレなどないので、その辺の草原で私はおちんちんを山に見せつけ、おしっこをしようとした。
山風はいまだ容赦なく吹き付けている。
その時だ。
「ガチガチガチガチガチガチガチガチガチガチガチガチッ!」
私は、いまだかつてこれほどまでに人間の顎が早く上下運動をした例を知らない。
高橋名人をも超える、200連打くらいしていた。
「こ、これ以上ここにいたら多分死ぬ…、今すぐ歩いて、体温めて、はやく何か食べないと…」
カオル君を起こして私たちはゆっくりと歩き出した。
「なんでこんなことしてるんだ俺たちは??」
そんな、大きなクエスチョンマークを頭に浮かべていると、
「それは、自身が招いた計画性のなさとノリで行動した愚かさの結果だよ。人は過ちを繰り返し、不利な状況が自分に訪れるとは考えない傲慢ないきものだからさ」
と、近くにいる羊が、私たちに諭すようにに言い放ったら面白いですよね。
でも、羊は喋りません。でもそんな、メルヘンなお話もいつか書きたいです。
そう、私が当時思ったかは定かではないが、早く街について、ご飯食べたい!!!ぺこぺこ!おなか、ぺこぺこまる!!
と思っていたのは間違いないです。
太陽が真上に上った12時ごろ、私たちは、街についた。
結果、15時間は歩いた。
それは、日本からイギリスへの飛行機での移動時間に相当する。
もっと、有効な時間の使い方をできる人間になりたい。
「無駄こそ人生の近道」
という考えもあるが、これは間違いなくしなくていい無駄だったと思う。
とはいえ、街だ。
ドラクエの旅人に気分である。
全回復するべく教会を探そうかと思ったが、私たちが飛び込んだのは、地元のスーパーマーケット。
イートインコーナーで私たちは温かいウインナーと目玉焼きを食べた。
泥だらけの私たちに、周りの人達は、じろじろと怪訝な表情を向けていた。
それはそうだ。
若いアジア人が二人、泥だらけで寝袋をもって街をうろうろしているのだ。
もうそれは、あれだ、変だよ(語彙力)
そして、ぼくらは、次のバスまで3時間くらいあったので、まちを探訪したり、ヒッチハイクしようとして中指立てられたり、同じような旅人たちと話したり、それはもう、楽しかったです。(文章力)
結論。
野宿などしなくても、明日はやってくる。
しなくていい無駄は、しないでいい。
羊は喋らない。
という、教訓を得た話である。
皆様に幸あれ。はぴねす。