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⒉一升瓶とぎゅうぎゅう冷蔵庫

〜台所奮闘中〜

ハタチで嫁に来たのは製造加工業の会社を経営する家で、本社は東京にあり、家の裏には三人のおばさん達が来る小さな工場があった。隣の市にも10人前後が働く工場があり忙しい。朝から取引先の電話が鳴る、材料の入荷や来客で目まぐるしい。家の中は義父の仕事場でもあり、秘書兼付き人の様な義母も忙しい。必然的に電話取次や来客対応は嫁のワタシがすることとなる。お腹の大きな新人OL??がお茶出しや寿司、蕎麦の出前なんかを手配する。余談だけど、寿司屋さんの休業日には催促のお客さんはウチに来ないんだよね。

夕方になり裏の工場の熟練従業員が帰ると、義父と義母はオセオセの作業に取り掛かる。その日一番仕事に集中している時間だ。昼間の電話催促には「大丈夫です。必ず今日出荷します!」と答えていたからね。まだ少しも取りかかっていない依頼の品を全力で加工して箱詰めして、配送センター最終受付ギリギリ間に合わせるぞ、と車をすっ飛ばす!ヒヤヒヤ💦それから夜中の晩ご飯ってことも珍しくない。

そんな綱渡りの日々、ストレス解消法は、・・・あ、義母のストレス解消法なんだけど、隣に住む義母の姉(ワタシには怖いおばさま)と二人で、この狭い町内での買い物に行く。「三時間は私を探さないでください。町内全店制覇ショッピングし放題ツアー」だ。山の様な食材のほかに服やら生活雑貨やら、大枚叩いてわんさか買い込む事が爽快らしい。ありがたいです♡が、

ウチは相撲部屋なのか?これは仕入れなのか?ハタチのワタシにこれらを調理できるのか?そして誰が食べるんじゃ?冷蔵庫はすでにパンパンだよ。義母のすごいところは買って来るだけ!しかもレジ袋から戦利品を取り出し「これ、炒めると美味しいよ」とか「赤ちゃんのために2倍食べなくちゃ」と次から次へとワタシの目の前に積んでいく、汗、汗もでない。実家では小鳥の様な食生活をしてたワタシが、いきなりライオンの餌を差し出された感。あっぱれ!嫁思いの優しいお義母さんのお気持ち、パンパンの冷蔵庫にぎゅうぎゅうと詰めさせていただきやす。

月イチで酒屋さんも来るんだ。サザエさんの三河屋さん的な感じで。醤油、みりん、酒を一升瓶で2本ずつとセブンスターのワンカートンを4〜5本。このウチにはやっぱり相撲取りがいるとしか思えない。調理するときはこの一升瓶を抱えて注ぐのだよ、小鳥の様に食べる細くて折れそうなこのワタシが。ジャバっとワサッと作るんだよ、ここでは。つわりだとかお腹が張って、とか言ってらんない!お相撲さんが「ぶつかり稽古」を繰り返すうちに怖くなくなるってやつだね。やっぱりココ相撲部屋じゃん!!

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