継ぎ手、仕口、構造体実動実験 report
1月1日令和6年能登半島地震により、被災された皆様へ心よりお見舞い申し上げます。
昨年「実験・考察・講演」と題し、2023年11月17,18日の2日間にわたり実動実験を滋賀県職業能力開発短期大学にて勉強会を開催いたしましたレポートをご報告いたします。
手刻み同好会は今まで座学として(手刻み同好会顧問)構造家の山辺豊彦氏よる構造の勉強会が計6回行われ、ひととおり終了しました。
今回はいよいよ実験をまじえての勉強会です。会員、一般、学生と満員御礼。これまで経験と知識に従って施してきているものの実験・数値化とあって、全国各地から多数の手刻み大工さんも集まりました。
準備するにあたり、今回は大阪の羽根建築工房が主体となって企画から準備や実験体の加工を担当。どのような実験するのか?何を体験したいのか。
同好会メンバーの中で意見を出し合いました。
(2.3か月に一度のzoom定例会で取りまとめます)
結果、各工務店や大工さんが普段施している、仕口・継手・軸組(貫)の強度はどれくらいあるのか。どこからどのように崩れていくのか(弱点はどこか)を、機材を用いて荷重をかけ、数値化を図り、まずは知ることを目的としようという事となりました。
滋賀職業能力開発短期大学校のサポートにより実現することができました。
まずは構造体から
山辺先生の解説のもと、さあ実験開始です。
まず始めの実験体。片筋交い くの字筋交いです。改修時に有効か?どの程度の耐力を担ってくれるのかを確かめます。中間に設けた控え梁がどうはたらくか。柱の補強と筋かいの座屈防止が図れているかをみていきます。
軸組の実験では耐力壁に荷重(見かけのせん断変形角が1/120、1/60、1/30rad)をかけていき、引張圧縮を繰り返しながら、試験体が破壊されるまで行います。※実験体の材種:桧(土台)、杉(軸組)ひびが入っていく様子、たわみゆがみ、ぎしぎしという音、体感する事で身体に落とし込んでゆきます。
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こちらはたすき筋交い+貫の軸組です。びくともしない貫。いい仕事をするのですね。
仕口の実験
土台と柱の仕口では、短ほぞ金物止めと長ほぞ込栓との耐力比較や、大入腰掛蟻落とし、半ほぞと扇ほぞ、そして出隅柱では柱勝ち仕口の両ほぞ込栓打と片ほぞ込栓打+片蟻掛け、と次々実験が行われました。実験は軸組4点、仕口・継手7点の予定で一日と翌日午前中をかけて行われましたが、一日目に浮上した疑問改善点を次の日の即座に追加実験体として付け加えたのは、手刻み同好会の情熱がとてもよく感じとれた瞬間でした。
実験後の贅沢な講習会
実動実験をおえて、2日間をともにした同業他社さん同士も何となくの一体感と疲れが増したところで、堀辺安嗣氏と代表の野池政宏氏の登壇「ブレイクタイム」と称した内容は、木の良さや、職人の大事さなどお話しいただき、会場全体が木にかかわることに誇りを感じ、又、仕事の大切さを感じ、おそらくですが、皆これから進むべきことへのエネルギーに変化する瞬間だったのではと、両者からエールをいただいたように感じました。
最後は山辺先生の実験の速報から、データの解説をいただき、実際目にし体験したあとの説明はしっくりと身体に定着し、実りの多い2日間でした。
滋賀職業能力開発短期大学校の皆様、ご協力ありがとうございました。手刻み同好会では今回の実験データを元に、山辺先生や山辺事務所の皆様のお力をお借りし、引き続き考察してゆきます。実験も続けていく予定です。
後日行われたzoom定例会では、貫の強さ、足元の弱さ、金物の重要性、実験の傍らで討論しておられる大工さん、LIVEの興奮度。など、その他多数意見交換で改善点や次回検証したいこともあげられており、更なる向上を目指し、これからも手刻み同好会は進んでいきたいと思います。
次回は1月19日 徳島から林業家 和田善行氏が来阪されます
只今絶賛参加者受付中です。
次回のお知らせ「木構造と手刻みに相応しい木を知る」
只今メンバー募集中です!関心、ご興味のおありの方は是非、事務局までご連絡ください。
以上、「実験・考察・講演」手刻み同好会による勉強会のレポートでした。正会員 アトリエクーシェ 一級建築士事務所 神野由美