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『美味しんぼ』=カニエ・ウェストだ!アニメ版ベストエピソード11選

『美味しんぼ』ほど「強烈な時代性」と「エバーグリーンな魅力」を両立させた作品はあるだろうか?

いや、ある。

それがスタジオジブリ唯一のTV作品『海がきこえる』です。

しかし、それはまた別のお話……。

ということで(?)、今回は『美味しんぼ』、中でもYouTubeでも太っ腹に無料配信されているアニメ版に焦点を当て、そのベストエピソードを紹介していこうと思います(なぜ突然『美味しんぼ』の記事を書いたのかという理由は、後々)。

有料記事ですが、無料の範囲でもある程度ガイドとして機能しますので、ぜひ。

1. 究極のメニュー

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記念すべき第1話。

「『美味しんぼ』が特におもしろいのは初期」というのは多くの『美味しんぼ』ファンが認めるところだが、その理由の一端が、ヒロインでありW主人公の一人「栗田ゆう子」の可憐かつ天真爛漫な少女のようなキャラクターデザイン。

アニメ版は原作連載開始からすでに5年後にスタートしたので、そうした原作初期の絵柄は反映されていない。ぜひそのあたりは原作を手にとってみてほしい。

では、アニメ版におけるこの第1話の見どころはどこか?

それは「原作の第1話と第2話をまとめたスピーディーな展開」「初期ゆえの尖ったキャラクター性」「80年代の社会を反映したオフィスや銀座の風景」だ。

その中でも特にここで注目したいのは「初期ゆえの尖ったキャラクター性」。

主人公である山岡士郎の、大手新聞社の上司、社主、そして各界の権威に屈しない、どんなものにも噛み付く野生の狼のようなキャラクターはまぎれもなく初期の魅力。これがだんだん周りに振り回されてオチに使われるキャラとなっていくのだから、連載漫画というのはなんとも生々しく残酷だ。

そして「フォアグラよりアンキモの方が美味い」という『美味しんぼ』の作品全体を貫くアティテュードが早々と登場する回でもある。

きっとこれを観た後は、結婚式の披露宴でフォアグラを食べるたびに後ろめたさを感じてしまうことだろうし、居酒屋で妙にアンキモをありがたがってしまうはず。

しかし、安いアンキモは化学調味料が入っているため『美味しんぼ』精神に反するのでご注意を。

2. 士郎対父・雄山

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山岡士郎、栗田ゆう子のW主人公よりも『美味しんぼ』の顔であるライバル 海原雄山、そして山岡たちの拠点となる料亭〈岡星〉、後に山岡一派の中心メンバーとなる優しくも狂った成金・京極万太郎が初登場するエピソード。

注目は「『美味しんぼ』のなかでも特に食べてみたい料理」として挙げる人が多いはずのメニュー。

それが、京極万太郎に供される「ご飯と味噌汁と鮎の塩焼き」だ。当時と現在では鮎の塩焼きの価値が大きく異なることも重要要素だが、見どころは美味しんぼメンバーの中でも料理への感動表現が大げさな京極さんの本領発揮っぷり。

もう一つ気になるのが、集められた天ぷら職人たちの死んだ顔。あいつら一体何者なんだ…。

3. 野菜の鮮度

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『美味しんぼ』特有の「傲慢な権力者の食べ物の好みを調べ、強引に生産地に連れて行き“本物の味”を味わわせて感動・改心させる」系エピソードの代表格。

オープンしたばかりのデパートの野菜に次々ケチをつけて社長を怒らせ、100億超の広告出稿を失いかけるというのは、作中でも特に山岡がとんがった回かも。

それと栗田が階段から落ちそうになって劇画調になるカット、何の意味があるのか?

もしかしたら『美味しんぼ』はあそこで転げ落ちて意識不明になった栗田が見ている夢の物語なのかもしれない。思えば『美味しんぼ』、途中でサイキックな要素も出てくるからな……。

4. そばツユの深味

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屋台でラーメン屋ではなくそば屋を始めたという、変わった若者が主人公の回。

しかし2025年にこのエピソードを見る場合、全く話は異なってくる。

銀座に屋台があるということ、そばが妙にバカにされていること、東京の佃周辺と思われる街の風景など、あまりの時代の違いに驚かされることだろう。

失われていく東京の風景を収めた、日本のアニメ史に残る名作映画『機動警察パトレイバー the Movie』と見比べてみるのもいいかも。

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