一月一酒 第29回
初出:月刊ハンガリージャーナル 2006年12月号
Egri Cabernet Sauvignon Selection, 2004
醸造所:Gróf Buttler Borászat
産地名:Egri borvidék
「ガレージ・ワイン」「ブティック醸造家」-ワイン醸造家の間では、少量の高品質ワインを醸造することをこう呼びます。国外ではすでにごく普通のトレンドとなっていますが、ハンガリーでこの流れが生まれたのは、この数年来のことです。
このタイプの醸造家はそれぞれ異なる特徴をもっていますが、共通点もあります。彼らは進化した醸造家です。オープンで好奇心旺盛で視野が広く、冒険をする勇気があります。旅に出て試飲をした経験を、自身のワインに試みます。このタイプの醸造家はたいてい少量のワインを醸造します。ときには一つ一つの樽ごとに異なるワインを造ります。
もちろんこれらのワインは、細心の注意を払い、熟考の末に仕上げられます。このようにして個性の強い、特別な、興奮をもたらすワインが生まれるのです。今回で本コラム5回目の登場となるGróf Buttler社のワインも例外ではありません。
同社は先祖代々エゲルに住むBukolyi家により1999年に歴史的人物バトラー伯爵の名を冠して創設されました。この新しい家族経営による醸造所の目標は、古き良き伝統と最新技術の効果的な結合により、最高品質のワインを生産することにあります。
現在40haを超える同社所有のブドウ畑には、エゲル地区の中でも最良とされるSzarkás、Ráchegy、Kis-Eged、Nagy-Egedが含まれます。そしてそれぞれの畑にはエゲル地区に適したハンガリーとフランス原産種の厳選されたブドウが栽培されています。注意深く栽培されたブドウにより細心の注意を払って醸造されたワインは、最高品質のバリク樽(オーク材の新樽)にて熟成されます。
今回ご紹介する同社のカベルネ・ソヴィニョン・セレクション2004は凝縮されたルビーの紅い色を持ち、その香りはクロフサスグリの実、プルーン、胡椒、シナモン、ヴァニラ、上品なオークなどの特徴が見られます。
この快活な酸味を持つ辛口ワインを一口含めば、タンニンが口内を愛撫し、その豊かな果実の香りは舌の上に長く残ります。
多層的で優雅なこのカベルネ・ソヴィニョン・セレクションの適温は18-19℃で、豚肉、羊肉、子牛肉、牛肉、ゲームなどを使った料理やハードタイプ・チーズのお供によく合うでしょう。
コルクを抜いたらデカンターにあけて、芳醇な香りが立ち上がってからお召し上がりください。
原文:Szilaj Eszter
訳文と画像:高久圭二郎