【取材記事】映像はきっかけ。ゼロから作る体験を通して、人生の舵を切る人を増やす
はじめに
この記事は、河崎呈さんが人生において大切にしていることや向かいたい未来について伺う中で、これから彼と新しく関わる人に向け、彼の人柄や想いを伝えるために執筆されたものです。
以前インターン生として関わらせていただいた枝廣が取材・編集を担当。若者の「好き」や「やってみたい」を大切に関わってくれる呈さんだからこそ、筆者の「やってみたい」に応える形で、今回こちらの記事に携わらせていただけることに。
ときには筆者の所感や経験談を交えながら、投げかけたい質問をぶつける中で、彼の価値観の深掘りを試みました。リアルでラフな対話の温度感から、呈さんが大切にすることのひとつでもあるフラットな関係性も伝わったら嬉しいです。
河崎呈(かわさきてい)
1984年岡山県出身。LiveYourDreams株式会社、ジャンプアップ株式会社代表取締役社長兼CEO。Youtubeチャンネル「動画センセイ」を運営。世界中の子どもたちの知的好奇心や未来の職業選択肢を広げるために、映像制作事業を中心に日々奔走中。
▲インターン当時、オフィスで開いてもらった誕生日会。
うわっつらではなく、互いを受容しあう場所を
ーーまずは、呈さんが目指す理想の世界って、どんな世界?
多様性が受け入れられ、お互いの個性が尊重し合える世界かな。その人のありのままが受け入れられる、そんな世界。まだまだ「所詮うわっつらだけでしょ」って思ってしまう世の中じゃないですか。本気でお互いをナチュラルに受け入れる状態が実現できないものかと思ってる。
そして、「世界を作りたい」というより、「場所を作りたい」の方が正しいかもしれない。それが今僕が作っている「JUMP UP CITY(※)」というもの。「自分にこれはできない」と決めつけ道を閉ざしてしまうのではなくて、何か新しいことに挑戦しようと思える、そして失敗しても「いいじゃんいいじゃん」と思える場所があったらいいなと。
JUMP UP CITYとは
若者を対象に無償で提供するオンライン映像プログラムであるJUMP UPに登場する、学びのバーチャル舞台。プログラムは、映像を「見る」→「創る」にシフトすることで、「自分に備わっている未知の可能性に気づくキッカケをつくる」ことをミッションに掲げる。社会人基礎の講義も提供。
自身の物語を描く、映像制作の魅力
ーーその中でも特に、映像制作という分野を選んだ理由は?
まず、絵などの創作物と同じように、作ったものが必ず形に残るから自分が歩んだ道を振り返りやすい。できてる、できてないの基準が漠然としていないから、やりがいにつながりやすいと思う。映像がよくわからない人にも「こんなの作ったよ」と見せたら「すごいじゃん!」って伝わりやすく、作ったもので人と人がつながりやすい側面もいい。そして、表現を形にする過程で、自分自身の物語を思い描くこと。それは、その人が向かっていきたい素敵な未来を考え、描く機会にもなる。
テレビやAbema TV、YouTubeなど、映像が生活に浸透する中で、自分を表現できる手段が多様化しているし、そういうふうに生き生きと自分を表現する人が社会で認知されるようになっている。映像表現という選択肢を取ることによって、「自分の世界を表現できる!面白い」と思う人が増えたら、「よっしゃー!」ってなるね。
ーーうんうん。
まあ、何より僕自身、映像が大好きなんだよね。
ーーそれめっちゃ大事だなあ。そうやって、呈さん自身がワクワクしている姿で関わることで、新しいことに挑戦してそれぞれの大好きなことを見つけていくきっかけを作ってるんだね。
うん、まあ、ただ楽しいから、映像いいよって感じ。「あそこのラーメンおいしいよ」みたいな感じで。
ーー呈さんらしい(笑)。
自転車を漕ぎ出すきっかけに
「自分には選択肢がある」と気づいてもらえればいいんだ。映像がすべてではなく、あくまでもきっかけに過ぎない、というか。自転車を漕ぎ出すきっかけになれればいいと思ってるから、やってみて「楽しかった」という感覚さえあれば、そこで目標達成。
比較の対象が他人であることが良く作用する場面もあるかもしれないけど、何かに挑戦する場面においては、自分の純粋な感性に従って行動することがすごく大切だと思う。
だからこそ関わり方として、「こうした方がいいよ」じゃなくて、「どうしたい?」「そういうふうに思ってるんだね」って聴いて、一緒に考える立場で向き合うことを大事にしてる。僕もその方が楽しいんだよね。自分で選択して生きている人を見ると、「ちゃんと自分の人生歩んでるな、よかったよかった」って思う。
まずは自分が選択肢があることに気付くことと、応援してくれる人との出会い。本当にたったそれだけなんだけど、それがなくて苦しんでいる人がたくさんいると思うんだ。
ーーわたしにとって、まさにそれが呈さんだった。呈さんと出会って、社会の中に自分のまるごとを受け入れてくれる人がいると思えたことで、「わたしも日本で生きていける!」と思えたよね。うわっつらではなく、自分の好きなことややりたいことで誰かの役に立つことを、本気で一緒に考えてくれたのが心強かった。
▲出会って数日で、呈さんが出演するラジオにふらっと同行させてもらう。
どこで働いても、息苦しかった
ーーそんな呈さんが人と関わる上での信念は、どんなきっかけで作られたんだろう?
僕自身が、ずっと生きづらさを感じていた。どこでアルバイトしても、働いても、息苦しさを感じていた。あるべき論を押し付ける大人と、それを当たり前に受け入れる人が東京に溢れていた。逆に、生き生きとして、やりたいことに挑戦する人もたくさん見る中で、僕は後者になりたいと思った。周りに合わせてドキドキするのはやめて、自分がやりたいことをやってどれだけ人の役に立てるかを考えてドキドキしようと。
だからこそ、自分と同じような違和感を感じて生きている人に対して、自分の生き方を見つけるお手伝いがしたい。机にかじりついて勉強して、学校に行って、就職するような生き方に違和感を感じる人にはすごく生きづらい世の中だと思うから。例えば、親に大切に育てられたからこそ、親への感謝のあまりに期待に応えようと自分の個性を後回しにする人をたくさん見てきたけど、僕はやっぱり、彼ら自身の「やってみたい」に寄り添いたいし、そんな環境を作りたい。
まずは、自分がさらけ出す
ーーありがとう!あらためて、そんな呈さん自身が生きるうえで大切にしている感性って?
感情にきわめて素直に行動することかな。それを失うと息苦しさが出てしまう。一緒にいて「楽しい」って思ってくれていると思うと、それだけですっごく嬉しい。きのう家で友達と、焼きそばと豚キムチと卵スープを一緒に食べたんだけど、一言目に「うまい!!!」って。そういう感情をただ共有した、それだけで幸せだった。
押し殺せば押し殺すほど、大切な場面で「あれ、自分ってどう思ってるんだろう」「わたしってナニモノ?」って思考停止しちゃうのがもったいないんだよね。
ーー本当の感情だからこそ、それを否定されたくなくて表現するのがこわいと思う人がとても多いと思う。でも、だからこそ呈さんの「軽いノリでやっちゃおうぜ」っていう空気感がすごく効くんじゃないかな。
そうだね。相手と接するとき、自分の思想を語るとかではなく、空気感を作ることから始めるようにはしてる。自分の存在が全面的に認められていると思えることが何より大事だと思うから。
ーーすごく刺さる。わたし自身も最近、「わたしって、何ができたらここにいていいのかな」「生きてていいのかな」とつい考えていたのを思い出した。「存在を認める」空気感って一見難しそうだけど、きっと、さっきお話ししてくれたように、呈さん自身がいろんな感情をさらけ出して生きているからこそ、そんな呈さんを信じられるし、安心できるんだろうな。
そんな呈さんのあり方は、チーム全体のコミュニケーションのハードルを下げて、苦手なことや頼りたいことの伝え合いやすさを作り出していて、そういう意味でもすごくよかったなあ。
サザエさんのような、ほのかな幸せを
もうひとつは、ほのかな幸せを大切にしていきたいと思ってることかな。コロナでより顕著になったのは、世の中が求めているのは救世主ではなく、ほのかな幸せだということ。こういうときだからこそ、「一緒にごはんを食べて幸せ」とか「少し話せてほっとしたな」とか、毎日の中で少しの幸せを感じられる時間があればいいなと。さらに、好きなことを見つけたり新しいことを始めてみることが、日常をより豊かに彩ってくれるんじゃないかな。
たいそうなことじゃなくて、「選択していいんだ」「自分を表現していいんだ」「そしたら、案外みんな受け入れてくれるんだ」と気づけるきっかけさえあればいい。「世界を変えてやるんだ!」「自分を表現しなきゃ!」とか、オリャ~~って感じじゃなくてね。思ったことを普通に言える、それでいいじゃん。表現さえできれば、あとは自然に笑顔で溢れていくと思うんだよね。そんな普通の感覚を大事にできるような、それだけなの。
ーー呈さんの力の抜けた言葉には、なんだかほっとさせられます。世界は「もっともっと」と動き続けているように見えて、焦ってしまうんだけど、「そうだよね、幸せに気づくことが大事だよね」って。
普通の生活って、意外にできていないと思う。演技しなくていい、ただありのままの自分で生きる時間。本当は「ありのままの自分って何だろう」なんて1回も考えたことないくらいがいいよね。いじめられたこともなく、最大限の愛をもって育てられてさ。サザエさんの世界みたいに、何かすごいことが起きているわけじゃないけど、みんながありのままで笑って泣いてるのが受け入れられている世界って素晴らしいと思う。
それぞれが自分の人生の舵を切ることを受け入れる社会やコミュニティだったら、会社も、関わるひとりひとりも、思考停止状態に陥らず、ハッピーになれるんじゃないかな。
「世界を変えるんだ」と息まいていると持続性のある社会は作っていけないから、出会うものごとを「それいいね」と受け取り合えるくらいがバランスがいい。そんな環境なら、何かに挑戦してみたい人が挑戦することもできるし、継続もしていける。社会常識ばかりを気にする人がたくさんいて、敵が多いと感じる環境で挑戦するのは、不要な逆境だと思うんだよね。
ーー応援し合う仲間がいる環境づくりも、呈さんの軸としてあるんだね。
そうだね。そうやって、自分という存在がありのままでいていいんだと思えるだけで、世の中はよくなっていくと思う。誰しもにそういう場所があるよと伝えたい。
ーーありがとうございました!
インタビュー、編集:枝廣くるみ
編集後記
オンラインにて、なんと2時間もの間お話をお聴きしていました。本文に書けていませんが、実は呈さん、開始早々から「仕事が楽しい」と連呼、会社の魅力を(半ば強引に)語ってくれた挨拶タイムでした。そんな自然体から始まった、「本当に仕事や会社が好きなんだなあ」と感じられるインタビューでした。
わたし自身の呈さんとの出会いにも少し触れると、舞台は餃子屋さんでした。「面白い大人がいるから」と友達に紹介してもらって会ったのが始まり。パワフルで超がつくフレンドリーな呈さんにしばらくたじろぎましたが、すぐに打ち解けると、仕事への並々ならぬ情熱や心の内まで受け止めてくれる優しさに憧れ、ほとんどその日にインターンを決めてしまいました。みなさんもぜひ、記事を読んで何かピントくるものがあれば、お気軽に呈さんに連絡してみてくださいね。
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