戻りたいスウェーデンに戻れなかった8ヶ月~前編~
戻りたかった、戻るはずだったスウェーデン。
10月末に帰国してから気付けば8ヶ月。
「スウェーデンいつ戻るの?」
「何で戻れないの?」
「今どこで何してるの?」
「いつまで日本おるん?(はよ行って)」
という言葉をこの8ヶ月間で山ほどいただき、その度に同じ説明をしてきたのでこれで最後にしようと思います(笑)
ということで今回は、なぜ私がスウェーデンに戻れなかったのか、そして現状をお話しします!
今後海外でプレーすることを考えている選手や、海外で暮らすことを夢見ている人たちの参考に少しでもなればなと。
そしていつも気にかけてくださる人たちにこの場を借りてご報告です!
海外で暮らすにはビザが必要
基本的な話からになるのですが、ビザって何?と思う方も多いと思うので簡単に説明を。
『海外に住みたい!よし、パスポート持って飛行機乗ってOK!』
という訳にはいきません。それだと誰でもどの国にでも住めて税金も誰が払ってて払ってないのかも分からないし許可なく働けて学校にも行けて…という滅茶苦茶な状況になってしまいます。
なのでビザ、つまり居住許可をその国から受ける必要があるんです。
種類も様々です。
・ワーキングホリデービザ
・学生ビザ
・就労ビザ
・観光ビザ
・配偶者ビザ
・アスリートビザ
まだまだあると思います。そしてそれぞれのビザの中にも更に種類があります。
例えば就労ビザなら、
・スウェーデンの会社で働くのか
・日本の会社のスウェーデン支店で働くのか
・どのポジションで働くのか(重要な役割か平社員か)
・自分で起業するのか
など目的によって申請方法は変わってきます。
それぞれに必要な書類や必要な資金証明額なども変わってくるし、ビザがおりるまでの期間、ビザがおりてからその国に滞在できる期間も違います。また、国によっても全く違うのでその国の条件などをしっかりと調べる必要があります。
と、大まかですがとりあえず海外で暮らすには、この国に住んでもいいですよ。という許可をもらう必要があることをここでは理解していただければ。
ビザを申請するまでの苦労
昨年はワーキングホリデービザで滞在していました。これは自分が興味のある国に行ってその国で働いたりしながら文化や価値観を学べるよ!という言っちゃえば職業体験のようなビザです(笑)
30歳以下で、決められた資金を持っていて、正当な理由があれば誰でも申請できます。スウェーデンは1年しかそのビザで滞在できないので今年は別のビザを申請する必要がありました。
選択肢としてあったのは、
・アスリートビザ
・就労ビザ
・学生ビザ
この3つです。
観光ビザはすぐに入国できますが3ヶ月しか滞在できない+公式戦に出られないので選択肢外でした。
1番理想はアスリートビザです。これはプロのアスリートがもらえるビザで、優遇されるので2週間ほど?で許可がおりる最強ビザです。
私はプロサッカー選手としてクラブと契約させていただいていましたが、クラブ自体はセミプロリーグだったのでそのビザを出すのは難しかったみたいです。
次に考えたのが就労ビザです。
ここで問題になるのが、私を雇ってくれる会社を探さなければなりません。
ただスウェーデン語は全く喋れない、英語は仕事ができるほどのものではない。そうなるとかなりハードルは高いです。
そこでクラブが考えてくれたのが、
じゃあうちで会社作っちゃおう!
かなり大胆な発想ですよね(笑)
私のビザのために会社作ってくれんの!?ってなりました。
パーソナルトレーナーの仕事をその会社でやったらいいよ、と。
こんなありがたい話はないー!泣けるー!
自分を必要としてくれているー!
絶対サッカー頑張るー!チームに貢献するー!
とやる気がみなぎりました。
(軽く聞こえる書き方しちゃいましたが本気でメラメラみなぎってました。)
そこからはクラブが会社を作り、私を雇用するという証明書を、雇う側が移民局(ビザのやり取りを行う行政)に提出してくれるまでは私は何もできることがないのでただただ待っていました。
ただ細かいことは分からないのですが、問題が発生し会社を作るのを断念。すごく楽しみにしていたのでショックでした…。
仕方がないのでクラブのスポンサーの方の奥さんの会社(?)で雇ってもらえるという話になりそちらに変更。
次に問題となったのはこの会社、
コールセンターの会社なんです(笑)
いや、スウェーデン語喋れない私には地獄!
いや違う。私が地獄なんじゃない。一緒に働く人や会社が地獄!(笑)
ただとにかくシーズンまでにスウェーデンに来るのが最優先だから。ということでその方向で進めるしかなく、とりあえずそこからスウェーデン語のレッスンの数も増やし猛勉強!
しかし、またまた問題が発生!
就労ビザの許可には9ヶ月以上かかることが2月に判明。シーズンは4月~10月なので余裕で間に合いません。
戦争の影響で難民を受け入れる数が増えたり、元々移民が多い国でもあるのでいつも以上に時間がかかっているみたいです。
また違う方法を考えることに、、、
スウェーデンに住んでいる日本人の方や、ビザ問題に直面してきた人たちに連絡を取って案をたくさんいただきました。
多くの方が連絡をくれました。もう今シーズンはスウェーデンに戻れないかもしれない…と落ち込んでいた時に手を差し伸べてくれた人たちに本当に救われました。
教えていただいた方法をひたすら調べ、クラブに提案し、すべて試みましたがどれもダメでした。
ただ教えていただいた方法どれもが、
「皆さんもビザで苦労して色々工夫してきたんだな」と思える方法でユニークでした(笑) 例えば…
クラブの下部組織の子どもたちにボランティアでサッカーを教えることでボランティアビザをGETする方法
ノルウェーにワーキングホリデービザで入国しシーズン期間はスウェーデンで過ごすというグレーゾーンな方法
「ファストトラック」というビザを通常より早くおろすことができる権限を持つ企業を探す方法
何とかしてアスリートビザをクラブから出してもらう方法
などなど。自分じゃ思いつかないアイディアをたくさんいただきました。結局どの方法も私はダメでしたが、今後どこかで役立ちそうな気がします!
そして結局申請したのはオペアビザです。
就労ビザの一種で、簡単に言うと住み込みでベビーシッターをしながら学校に通ったりして語学も学べるというビザです。
小さな子供がいるチームメイトがいるのでそこでベビーシッターをするということで申請を出しました。これもでも6~9ヶ月かかると言われていたので、早くても行けるのはシーズン後期からです。
でもこれがその時考えられる選択肢の中で最善でした。
ビザがおりるまでの間は日本のどこかのクラブで練習に参加させてもらいながらコンディションを保つしかありませんでした。
こんな状況の私を受け入れてくれた日本のたくさんのクラブには本当に感謝しかありません。
母校から母校でも何でもないところまで!
受け入れるどころか歓迎してくれて、いつでも何回でもおいで!とどのチームも言ってくださりました。人の温かさに感動する日々でした。
先が見えないサッカー
本当にシーズン後期が始まるまでにビザがおりるか分からない。
もしかしたら今シーズン中におりないかもしれない。
そんな不安を抱えながらただただ練習に取り組む日々。
試合もなければレギュラー争いもない。
夏にスウェーデンに戻れることをイメージしながらただひたすらに自分と向き合いました。
しかし、自分にとってはこの時間を有意義だとは思えませんでした。ハッキリと夏に戻れる保証があれば違いましたが、先があやふやなまま"頑張る"ことが正直私には無駄に思えてしまったんです。
今年30歳になる女子サッカー選手の私にとって「1年間」という期間はとても長く貴重です。
その時間を無駄にしたくない。
それが1番の思いでした。
なので4月頃にスウェーデンのクラブに、
今年は日本でプレーします。
と伝えました。
悔しい気持ちと申し訳ない気持ちと、どこにもぶつけられない感情が溢れました。
ほぼ全ての方法を試してくれたスウェーデンのクラブには本当に感謝しかありません。
誰のせいでもないし、やれることは全部やったし、これ以上どうすることもできません。
それでも下を向いている暇はないので、日本でプレーさせてもらえるクラブを探すために動き始めました。
と、前編ではひとまずここまでに。
1回で書くつもりでしたが思いの外ロングストーリーだったため2回に分けることにします(笑)
後編は、日本でのチーム探しからその後、そして現在まで!
最後まで読んでいただきありがとうございます!
後編も必ず読んでください!(笑)
また、書きにきます。
Hikari