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エンジニア組織の英語化推進 7つのTips

GAOGAOアドベントカレンダー「今年もGAOGAOまつりです Advent Calendar 2022」の10日目の記事です。ちょうど一年前、開発エンジニアチームのグローバル化シフトについての記事を書きました。今回の記事はその続きです。

2022年、弊社GAOGAO (https://gaogao.asia/) は外国人の比率が以前よりも高まり、グローバル組織化がかなり進行した一年となりました。2022年12月時点で、以下のステージ3のプロジェクトが現在4つ並行して進行しています。(前回の記事の画像から抜粋)

エンジニア組織の英語環境の段階

エンジニア組織のグローバル・トランスフォーメーションの重要性については前回の記事で述べました。今回の記事では、個人としての英語力の向上方法はさておき、エンジニア組織を運営・参画する立場でどのような点に気をつけると英語環境が促進されていくのか、という観点でのTipsを掲載します。上記ステージ3(テキストだけでなく口頭のコミュニケーション含めて英語化)の段階のプロジェクトを増やし、問題なく遂行できる環境を作っていきましょう。

前提: 日本人組織で英語環境を実現するには少なくともチームに一人は外国人メンバーが必要

本記事のTipsは前提として、日本人組織内に英語が流暢な人材(帰国子女や海外在住経験が長いメンバーなど)が10-20%程度いる環境を想定しています。また、日本人主体チームの中に少なくとも一名はnon-Japaneseの外国人メンバーが参画している状態であることを想定しています。これまでの経験上、日本人のみで英語環境を促進するのは非常に難しいです。ソースコードのコメントやgithubのIssueやPRを英語で記述するくらいの段階(ステージ1)は比較的に容易に実現可能ですが、口頭のディスカッションを含めたステージ3の段階を日本人エンジニアのみで進めるのは、海外経験が豊富なメンバーが揃っていない限り難しいです。理由は以下の2段階の障壁があることがこれまでの観測でわかっています。
・1段階目: 英語が不慣れなメンバーだとどうしても日本人同士の英語会話を恥ずかしいと思ってしまう障壁がある
・2段階目: 日本語を使ったほうがメリットが多く、ある程度の強制力(日本語の通じたない外国人の存在など)がないと次第に英語が定着しなくなってしまう
したがって、まずは日本語ネイティブではない外国人の存在がグローバル化組織を作る上でのほぼ必須条件と考えています。どのように外国人を採用すれば良いかに関しては別トピックとなるため、別途記事を書きます。

エンジニア組織をグローバルトランスフォーメーションするための7つのTips

1. 英語がつたないメンバーがいても絶対に馬鹿にしない

日本人メンバー中心組織を英語化するにあたり大事なことは「各メンバーが英語でコミュニケーションを取ることの自信を持つこと」です。メンバーが英語で喋るのに詰まった際に、もし誰かが笑ってしまったりするような環境だったらどう思うのでしょうか?
発言したメンバーはなかなか自信を持つことができず、英語で気持ちよく発言できる環境ではなくなり、英語化の進行に対して負の影響を与えます。英語を話している人を見て笑ったり苦笑したりするような状況は日本人同士でありがちなのですが、外国人の方と話していて私は経験したことがありません。特に東南アジア系の方達の多くは英語を第二ヶ国語として学び、その大変さを知っているのか、つたない英語であっても理解しようと真剣に聞いてくれます。英語が少し変でも真剣に聞くマインドを持ってプロジェクトを進めていきましょう。その先には、英語力に関わらず関わるメンバーが英語で積極的に発言する環境に変わるはずです。

2. 組織・チームのトップが積極的に英語で発信する

チームのトップが英語で積極的にコミュニケーションを取ることが全体への影響力が高いです。スタートアップの組織なら経営陣、開発プロジェクトならPMもしくはリードエンジニアの方などが積極的に英語を利用する環境は割とすぐ全体も英語環境が定着します。逆に上のポジションのメンバーが英語を避けてしまうと、他のメンバーにもそのマインドは影響します。英語環境の整備と継続には、ある程度のトップダウンでの強制力は必要で誰が影響力が高いのかを見極めて進行することはポイントです。もしあなたがプロジェクトのリードではなく、参画メンバーである場合、できる限り組織のリーダーに英語化の協力を促すのが良いでしょう。

例えば、GAOGAOでは月に一回の全体定例は会社の代表である私が英語で進行をするように切り替えました。また、今年開催したハッカソンのような社内の公式イベントも英語で開催したりしています。組織・チーム参画しているメンバーが組織全体がトップレベルから環境を変わっていると感じ取られるようにしていくと良いですね。

また、組織全体をグローバル化させていくことを検討している企業であれば、指針として外国人の数をゴール指標として設定することも有効です。GAOGAOでは経営上の副KPIにダイバーシティ率(外国人比率)を設定して、日々その数値を内部メンバーに共有しトラックしています。このような仕掛けで各メンバーが英語環境への変遷に貢献しているという意識が芽生えてきたりもします。

3. 開発プロジェクト以外のSlackチャンネルも英語を使用するようにする

外国人メンバーが組織に参画したときに目に見える情報が日本語しかない状況ですと疎外感を感じてしまいます。その状況が長く続いてしまうと、組織に居づらさを感じて最終的に去ってしまう可能性が高まります。参画した外国人メンバーがより同じチームであることを実感できるように、日本語だけでない環境を意識的に増やしていきましょう。例えば、Slackなど仕事上日々接するツールにおいて、英語のチャンネルを増やすなどです。雑談のチャンネルや、朝のTODOの宣言のチャンネル、また、食事の写真をアップロードするチャンネルなどを英語で運営してみるなどです。

同様の理由で、英語のオンボーディング資料の整備も重要です。自分が外国人の立場でこの組織に入ったら…? ということを気にして設計してみると良いでしょう。

4. 発音よりもスピーキング量にこだわる

英語の発音がネイティブ並みに綺麗(流暢)であるに越したことはないですが、一朝一夕で身につけられるものではありません。特に現在日本人がグローバルにエンジニア業務をする上では、ベトナムやインドなどの人材との協業機会の方が、英語第一ヶ国語の方達と働く機会よりも多くなってきているのではないでしょうか。お互い第二ヶ国語のケースでは、発音の綺麗な英語でなく日本人のJapanese Englishでも英語は伝わる感覚を経験したことはないでしょうか?私はJapanese Englishを推奨しているわけでは全くないですが、年月がかかる発音の磨き上げは初期段階ではこだわりすぎるとアウトプットする量が減ってしまいます。まずは発音がつたなくても、スピーキングを通じて伝えたいことを口に出して伝えるアウトプットトレーニングを行い、仕事上のコミュニケーションを取れるようになることが大事です。このような背景で、私は英語を使った初めての仕事はアジア系の外国人と協業がグローバル人材への第一ステップとしてオススメだと思っています。流暢な発音を磨き上げるタイミングは、まずは基本的な単語・フレーズを使ってスピーキングをできるようになり、コミュニケーションの疎通ができる自信を持てる段階になってから始める形でも良いです。

5. 難しい単語の使用に違和感を持つ

大学受験で出てくるような小難しい英単語を使おうとすることで返って伝わらなくなるというのは日本人にありがちな罠だと思います。もちろん話の内容によっては専門用語を多用する方が円滑にコミュニケーションを取れるケースもありますが、普段の情報伝達においては平易な英単語を使用することでかなりのコミュニケーションを実現することができます。
普段聞き慣れない英語は使用する際のコンテキストが限定されているケースが多いです。いわゆる英単語帳などでの日本語と英語のマッピングでは読み取れないコンテキストが存在したりします。そのような小難しい英語を使ってしまうと、英語第二ヶ国語の方に対してはうまく意味が通じず、ネイティブには違和感を与えるものになってしまいます。
例えば、「今日やることを宣言してください」という日本語を英語で伝えようとしたときに「Declare…」とか使いたくなってしまうのですが、実際Declareは国が何かを宣言するときに使われるような印象がある単語で少し大袈裟な表現だと思います。平易な単語に置き換えると、例えば、「Share yout TODOs」とか「List your TODOs」など、こちらの方がよりスムーズに伝わります。
日本語から英語化へ変換する組織としては、平易な単語でコミュニケーションが取れる段階をクリアするのを目標にしましょう。その先、より正確にニュアンスを伝えるためには難しい言葉を活用できるように組織全体の英語力を伸ばしていく流れが良いでしょう。

6 . 説明が難しい場合は、図や画面共有を活用する

業務をしているとなかなか英語のテキストもしくは会話で伝えたいことが伝わらない、といった状況も起きると思います。そのような時は言語情報で試行錯誤するのではなく、一旦図にして伝えてみるという切り替えも有効です。特にアーキテクチャやデータの流れを表現するような場合には、図示して共有することで、直感的に多くの情報を受け取れるようになるため、テキスト情報よりコミュニケーションの誤解を防ぐことができます。

この考え方は日本語同士のコミュニケーションでも大事なことです。ただし、日本語であれば雰囲気で伝わることも多々あるため、図に頼らなくても進められてしまうケースは多いでしょう。英語の組織においては細かな表現が難しい分、より明確に伝えることを意識して進めることが重要なポイントです。上記に挙げた4&5のTipsと同様に大事なことは、「英語のワード・フレーズとしての正確性」にこだわりすぎず、「伝えること」を重要視することです

7. TOEIC 700点は英語環境に参画するための最低限の基準目安

私自身「TOEICは英語の実践能力を図るものではない」と考えいます。スコアの対象がリーディングとリスニングに偏っているため、実務で重要になるスピーキングが図られていないからです。しかし、TOEICを代表する試験は、少なくとも大きなカテゴリ単位で英語力を可視化・数値化することができており、最低限ステージ3に参画できる基礎英語力があるという判定には使えるとは思っています。
現在弊社のグローバル組織で活躍できているメンバーのスコアを参考にして、考えると、その最低限の英語環境への参画はTOEIC 700 (IELTSだと5に相当)あたりが妥当かと感じています。(もう社内のサンプルデータが集まれば少し変わるかもしれないです)この点数に満たない場合は、傾向として、テキストや口頭でのコミュニケーションの非効率さにより、本来のエンジニアとしての仕事の支障が大きくなってしまうケースも観測しました。

TOEICと英語組織の生産性相関イメージ

例えば、楽天などグローバル人材を多く採用している企業ではTOEIC800以上を入社条件として定めています。そのラインを決めることは、ある程度円滑なグローバル組織を運営するためには妥当な基準なとのかもしれません。

グローバル組織を進めてみてわかったこと

上記の7つのTipsで解説したように、いきなりグローバルなエンジニア組織・チームを作って円滑に機能させるためには、メンバーのマインドと工夫が必要です。
各メンバーが英語環境の中でもきちんと伝えることを大切にするマインドさえ持っていれば、案外問題なく進みます。日本語環境の生産性と比べてどれくらい変化があるのかまでは検証できていないのですが、体感的にはある一定以上の英語力とグローバル環境での高いマインドを持ったメンバーが集まればほとんど落ちないでしょう。

エンジニアメンバーは英語のスキルがキャリアに大きく響く世界的な環境にシフトしていく中で英語環境に属することに対してポジティブに考えている方も多くなってきています。ビジネスサイドも巻き込んで全て英語コミュニケーションで進めるのは難しいですが、開発チームメンバー同士を英語環境に変えることは、皆が想像するほど大変なことではない、というのが私のこの一年間の弊社のプロジェクトを観察してみた所感です。

英語環境が促進され起きた良い連鎖反応

今年は数多くの開発プロジェクトが英語で進行しました。そのような環境に属していた日本人メンバー達がこれまで日本語で行われていた毎週の技術勉強会を自発的に英語に切り替えて進行しました。組織の英語環境が勉強会などボトムアップなカルチャーにも浸透してきたのがわかります。組織のディレクションとそこに共感するメンバーが集まれば、さらにその人を介してマインドが伝播していくということを実感しました。

余談: 個人として英語力を高めるために何をすると良いか?

今回の記事では組織に英語環境が定着させるためのTipsの紹介をしました。その環境を促進するには、個人個人が英語能力を高める努力をするのは前提です。

英語の学習を進める際に私がポイントとして考えているのは、徹底的にスピーキングです。理由は、日本人が最も苦手なところで、かつ、業務をする上で避けて通れないところだからです。
通常の開発業務はテキストによるやりとりと口頭によるやりとり両方存在します。リーディング・ライティングに関しては、翻訳ツールなどの補助的なものも活用することで円滑に進めれます。一方、口頭で行われるやりとりは、同時通訳者が手配できるような環境でない限り自身の英語力を補助できる代替ツールなどはなく、業務を進める上でのボトルネックになります。

弊社に限らず日本のスタートアップも大手企業も、エンジニア組織に外国人メンバーが在籍する機会が数年前よりも増えてきていると実感しています(ベトナム人・インド人のグローバルでの活躍を筆頭に)。この流れはしばらく加速すると考えられますので、エンジニアのキャリアについて考えている方はプログラミングの勉強に加えて、英語の能力を高めることも同じくらい重きを置いて進めることをオススメします。なかなか業務に忙しく時間が取れないとは思いますが、英語は既にエンジニアのキャリアを大きく上に高める重要な要素です。

最後に

私自身特別英語が得意なわけではなく、今では英語を使ってある程度問題なく仕事をしているものの、長年英語の壁には悩まされました(現在も)。そのような体験から効率的に英語組織を効率的に作っていく点に最近は興味・関心が強いです。この記事はTipsという少し簡潔な内容でしたが、今後エンジニアがグローバルに活躍するためのロードマップなど体系的な情報をまとめていきたいと思います。(この領域に興味があって一緒に進められる方も募集しています!)

言語の習得・外国人との協業における文化理解は一夜にして劇的に身につけられるものではないので、日々の積み重ねが大事です。常に向上のためのマインドを持って、信じてやっていくだけですね。

GAOGAO ( https://gaogao.asia/ )は現在、東南アジア(シンガポール、ベトナム、バンコク)を拠点に拡大しています。現在日本人、シンガポール人、ベトナム人のメンバーを中心に多くの開発プロジェクトが並行して進んでいます。最近では、日本のエンジニア組織に対して、外国人エンジニアを交えたチーム作りの提案も行っています。興味のある企業様は是非ご一報ください。また、もちろんエンジニアは常に募集中ですので、英語環境に身を置いてグローバルに活躍してみたい方がおりましたらお気軽に @tejitak までご連絡ください!


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