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結婚が決まってからの私といえば

彼は私より7つも歳上で、当然彼の友人たちもみんな私より歳上なわけで。彼と彼の友人たちと一緒にいるときは、多少無鉄砲な発言をしたり生意気な態度を取っても、妹のように扱われて許される。元々の末っ子気質も相まって、彼らに存分に甘えている。
そういう、なんていうか以前の私だったら好きではなかった女に私が今なっている気がする。それはそんなに悪いことではなくて、俯瞰で見るとどちらかと言えば「こんな女は嫌」なんて言ってる女の方がその「嫌な女」より嫌だなあと思うようになった。

彼の友人が働いている飲み屋に行った。彼の別の友人も一人いて、計3名の男性と共に昨夜は散々食べて散々呑んだ。
帰り際、店で働いている方の友人が着ていたファン付きの上着の話になり私が着せてもらうことになった。
ノースリーブのワンピースの上に、直前まで着ていた彼の友人の温もりが感じられるノースリーブジャケットを羽織る私。
「ここの紐を縛ると風が首元から出てくるよ」と脇の下あたりを指差し教えてくれた。酒量の割には酔っていなかったが、私は
「あ、締めてください」とできないフリをして腕を広げた。
上着の持ち主は普通にやってくれたが、もう一人の友人が
「いや人の嫁になにやってんの」と言って笑った。

なんて事のないこんな一コマが、一日中脳内で繰り返された。

優越感に浸りたかった?
彼氏に嫉妬されたかった?
はたまた、自分が可愛いと勘違いした?

どんな感情のもと、そしてどんな欲望があって、あの数分の時間が流れたのか。少なくとも私はあの数分を意図的に作り出したように思える。
嫌な女、とも違う。凄く稚拙な言葉でしか表現できないのが歯痒いが、結婚が決まり、「特定の相手」がいる余裕のようなものが生まれて誰かにどう見られるかをあまり気にしなくなったのだと思う。
甘えなのか、ノロケなのかは分からないけれど、そんな昨夜の自分を思い返して嬉しいような恥ずかしいような奇妙な感覚に陥る。

もう難しい感情も、難しい言葉もいらないのかも知れない。私がずっと求めていた、普通で穏やかな暮らしには昔のような「言い表せない感情」も「それを無理やり言い表す言葉」もなくていい。
私がなりたくなかった女は本当は私が何よりなりたかった女で、そして、前より少し自分のことが好きになっている。

もう何も考えたくない。このままの状態で、この生活を冷凍保存しておきたい。それくらい、この日常が侵されることに恐怖も感じている。贅沢な話だけど、きっと満たされているということなのだろう。

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