大学時代

恐ろしく真面目な大学生だった。
自宅から大学まで約2時間。一限の授業でも遅刻、欠席はせず、毎期ひとつも単位を落とすことなく進級していった。
芸術系の学部だったため試験は殆どなく、成績は出席とレポートで評価された。つまり「頭は良くないけれど毎日コツコツ」タイプの私にとって恰好のシステムだった。
ゼミにもサークルにも入らず、ただただ授業を受け、レポートを書き、バイトに行く。そんな日々だった。そんな日々を3年間繰り返し、4年生を迎える前に卒業に必要な全ての単位を取り終えた。
4年の前期は学科で必須の聴講があったため、週に1回2コマだけを受けに通った。後期は全く授業に出ず、就活も終わっていたため毎日バイトだけをして過ごした。

最高に楽しい、大学生活だった。

学内に友人は一人もいなかったが、高校生の頃と違い一人で過ごすことで肩身の狭い思いをすることはなかった。大好きな先生もいて、一限の授業なのに先生の入り待ちをするために授業開始30分前には教室に着いていた。今思うとだいぶ気持ち悪いけれど、60歳近いおじちゃん先生の口から出る数々のアーティストの話はどれも魅力的で、美術館やアートが好きになるきっかけを与えてくれた。
空き時間ができたときは大抵図書館で過ごした。レポートを書いたり、気になった本を片っ端から借りて読んでいた。高校の頃からやっていることは変わらないのに、心穏やかに過ごせていることがとても嬉しかった。

水泳のインストラクターのバイトも始めて、初めて「社会」というものを少しだけ知った。自分より歳上の社員さんやお客さんと過ごして、大人と全く喋ることができなかった高校時代とは比べ物にならないくらいコミュニケーション能力が身に付いた。
自分の得意なことが仕事になり、お金になることは自信にもなった。嫌いになってしまったシンクロを、やっていて良かったと思うこともでき、5年もかかってしまったけれど自分のことを報ってあげることができたのも一つの財産だった。

大学生をやっていた「くせに」、就職してから飲み会やカラオケを経験していないことで嫌な思いをしたこともあった。
大学時代の過ごし方を話して、大学生らしくないと言われたりもした。
それでも、私にとっては大切な4年間だった。親に学費は出してもらっていたけれど、家族や友人、その他周りの人たちに左右されたり干渉されることなく過ごせた唯一の期間だったかも知れない。

自分だけの、秘密で特別な時間。
それが私の大学時代だった。

#エッセイ #コラム #わたしのじんせいあれやこれ

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