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今日の勝ち組は明日の負け組
職業人として、一個人として尊敬する方に勧めていただいた「格差の起源」を読んでみました。
人類間の不平等の起源がテーマということで、同じく特定地域の人間の優位性とその起こりについて書いたジャレド・ダイアモンドの「銃・病原菌・鉄」を思い起こさせる内容でした。
本書は、アカデミックな知的好奇心を満たすだけでなく、実学の面からも読む価値があります。
例えば「工業化の進んだ地域は、一時的に他の地域をリードしたものの、20世紀半ば以降は立場が逆転した」の背景にあるものは、「短期的優位性の上にあぐらをかき、教育(トレーニング)への投資意欲が薄れ、衰退した」です。
「新たな飯のタネを探す努力を止め、現在の成功にしがみついた」とも言えます。
盛者必衰。永遠に続くものはありません。
これはわれわれがキャリアについて考えるときにも教訓になります。
「〇〇の資格を取ったからもう大丈夫」
「大企業に入ったから将来安泰」
本当にそうでしょうか。
最盛期当時の「工業化の進んだ地域」に似ている気がしてなりません。
難関資格取得や、厳しい競争を勝ち抜いての大企業内定獲得は素晴らしい勝利です。
しかし、そこから謙虚かつ冷静にキャリアを見つめ、要所要所で勝負を続けていかないと、そこから向上していくことはおろか、留まることすら難しいでしょう。
上手くいっているときは、案外盲目的になりやすいものです。
状況に関わらず兜の緒を緩めない。そう自戒する機会を得た良い読書体験でした。