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多様性の科学

※プロモーションは含みません。

多様性の科学という本をご存知でしょうか?

多様性とは耳障りのよい言葉なので、コンテンツを売るために安く使われていることが多く、憤りを覚えることもあります。しかし、この本は多様性を倫理面にとどまらず、そこから得られる実利も含め考察している点に好感を持ちました。


読んだのが少し前なので、うろ覚えですが、本の帯には「なぜCIAは9.11を防げなかったのか」や「マーケティングでグッチが成功し、プラダが失敗した理由」などの文字が踊り、それぞれの原因を多様性という観点から説明しています。本当に多様性だけに理由があったのかは別として、素人目から見ても納得感のあるものでした。



その中でも、管理職の立場として興味深かったのは、コンサル企業を対象とした調査でわかった「ジュニアマネージャーが率いるプロジェクトの方が、シニアマネージャーの率いるそれよりも成功する確率が高い」という説です。


詳しい話は本書に譲るとして、簡潔に言うと「シニアマネージャーが言っていることに違和感を覚えても、他のメンバーが間違いを指摘しないからプロジェクトが間違った方向に行く傾向がある」というのが理由です。


他方、ジュニアマネージャーの考えに違和感を持ったメンバーは、遠慮なく指摘する傾向にあります。


職位や経験の深さによる権威は、人に意見を言わせることをためらわせます。権威者が恐いのはもちろん、「間違っているのは自分の方に違いない」という錯誤を生むからです。


世間では、多様性を高めることに執心していますが、既にある多様性を殺さないことも大事です。
同書は英国の著者によるものですが、儒教的思想の影響が強い日本においては、同様の現象がより強い強度で起こるかもしれません。



多国籍、多人種な組織づくりなどのダイナミズムと比べると地味ではありますが、日常はこのような地味なものの連続で構成されているのではないでしょうか。


見落としがちな日々の細かいこと、しかし大局に影響を及ぼすことについて意識を向けるきっかけになったのは素晴らしい読書体験でした。


機会があったら手に取ってみてください。



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