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【連載小説 短篇予定】美の骨頂㉔フィーチャリング未来……再来月からの伝言

 うちの火刑(家系)は兎に角話がながいので切りがありません。というわけであれをもうすっ飛ばして現在の話にします。

 2025年、イルボン(日本)は戦時下にあります。内戦というか、世界大戦というか、とにかく非常時です。

 最初の怪我人が出たのが2024年の暮、広島の呉というところでした。首から血をながし、みなとで倒れている港湾荷役人がいました。なまえは忘れました。このロウドウシャは、その後回復しましたが、人のことばをわすれ、というか覚えているのですが語尾に「ニャ」が付くようになります。

 朝は「おはようございますニャ」といった具合でした。

 頸には噛み痕があり、齧歯類か鳥類、あるいは虫、またはイルカ、ジュゴン、魚類全般、もしくは哺乳類の仕業だと断定されました。

 これは以後、暮れの呉事変といわれるようになりました。

 同時多発的に、全国の津々浦々で、ようするに海の近い場所で、首から血を流し、回復すると語尾に「にゃ」が付く人があとをたちませんでした。

 日本というのは島国ですのでだいたい海が近いのですが、うみべの集落は敬遠されるようになり、内陸の、たとえば埼玉とか長野、群馬、栃木といった土地の価格がうなぎのぼりになり、またたとえば沖縄本島でいうと、唯一海に面していない南風原町(はえばるちょう)が那覇に変わって県都になりました。ぶっちゃけ首里も海には面していないのですが、首里は那覇なので、風評被害がはんぱじゃなかったのであります。

 アナリストやマゾヒスト、サディストやエコノミストたちが鳩首して分析したところ、敵国は不明、ということが分かりました。おばあ(沖縄の)がユタに相談したところ、北斗七星の例の見えにくい星(死兆星)からの死者(使者)だということでした。

 被害者たちはキャットF(女の場合)、キャットМ(男の場合)と呼ばれました。

 さいきんでは被害を受けていないのに語尾や語頭、語中に「にゃ」とつけるのが矢鱈と流行し、

「にゃんだ手前、やんのかニャ、にゃ~ん?」

 とヤンキーたちはイキっています。

 ことしの流行語大賞は「にゃめんなYO」に決定しました。

 野菜の価格が暴落し、四つ足の肉類は返歌(変化)なし、とにもかくにも魚介類がえらい高騰してだれもよう手を出せなくなりました。

 秋刀魚が一尾二万五千円もするのです。キャット・フードなどは500グラムで500万円もします。ちゅ~るを作っている会社は調子にのって一袋二億円、セット価格十億円のあれを販売しています。

「ざっけんな、コラ、ガキが」

 とおとうは釣り糸を垂らしながらぶつぶつ言っています。

 このところ、テレビの報道番組では漁師特集ばかりで、というか漁師のひとたちがマス・コミになり、元々のテレビ業界の人たちはみなAVに移り、AVからはみ出した者たちが農業をするようになりました。

 泊のゆいまち(市場)は500階建てのビルヂングになり、ダブル・ツリー・バイ・ヒルトンと名称を変え、水産物の養殖場とAV用のホテル部屋と普通の部屋、最上階はドナルド・トランプ氏の別荘になりました。

 釣り具屋をやったらええ、というおかあのアドヴァイスを無視して界隈の子どもたちに英語を教え続けたおとうは、今や職をうしない、半分は軍、半分は釣り師と賭博師として生計を立てています。

 年金制度は完全に崩壊して自己責任、貯金がつきたらサヨウナラという状態になりました。

 機を逃したおとう。なぜか金持ってるおじいとおばあ。

 それらを尻目に、うちはAV業界の自然主義派として左うちわの生活を送っていました。能登で。


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