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【前篇】天皇制の良い点と悪い点――良い点

 むかしからふしぎだった。天皇ってなんだと。

 私の育った土地では君が代は歌われず、天皇制についてもモヤモヤするようなところがあるような人たちが沢山いて、モヤモヤなんだろうと幼心に思っていたが、モヤモヤなので、ふしぎだった。

 成長してもモヤモヤはモヤモヤのままで、寝た子みたいな感じであったが、漸く、さいきんになって分かってきたことがある。

 きっかけは今月上旬、那覇のジュンク堂であった、姜尚中先生の講演会だった。姜先生は、「天皇制」や「万世一系」という日本の特色を、おそらくネガティブな意味で語っておられた(しかしまあ、あの会の、ナビゲーター役の女は……やめておこう…でも誰やあの女は)

 天皇制にたいして、アンタッチャブル的な、頑迷固陋のような感じでお話になり、それに対して、中国の皇帝が何度も交代してきた歴史の話をされていた。要するに、時の権力者が正しくなければ、天運に見放されれば、その国の最高権力者の首を切ってもいいというのが、中国の考え方だと、そういう風に話しておられたと思う。おそらく。

 それを聞いてちょっとして、ああ、はあ。と納得した。

 日本の歴史は、有史は、だいたい天皇家とともにはじまっている。この最高権力者のような人の、その象徴の首が切られたことは、おそらくまだ一度もない。

 この点において、日本には革命の歴史がないとか、革命が起こったためしがないとかいう言説を唱える人たちがいるが、実状はそうではない。何度も起こっている。その遣り方に特色があって、日本における権力の交代は、つねに、天皇のつぎの、ナンバー・ツーの首が切られるという形で行われてきた。

 中国とか、その他の国々におおくあるように、権力者を丸ごと変えるというやり方もある。が、日本はそれをしなかった。日本は、最高権力者はそのままで、象徴のままでそのままに残して、実際の現実で、その時その時代の権力をふるうナンバー・ツーの首をすげかえるという方法で国を運営してきた。それが意識的なのか、無意識的なのかはわからない。

 私は歴史学者ではないのでよく分からないが、

 ・最高権力者の首を切り、丸ごと権力構造をかえる
 ・最高権力者はのこし、ナンバー・ツーの首を切る

 このふたつにおいて、できるだけ人の血が流れない方法はどれかというと、だいたいの勘定だが、後者ではないだろうか。器はそのままにして、その中身の毒・奸臣を殺す、という遣り方のほうが、死ぬ人の数はすくなく済むのではないだろうか。

 日本人というのは、事を大きくするのを好まない。そんな人たちだと思う。自分自身もそうだ。事勿れ、あるいは、ソフト・ランディングをいつも望む。基本的には平和が好きなひとたちなんだろう。

 そういう意味においては、天皇制はうまく機能したし、今でも機能している。

 であるから、これからもそのままでいいのかというと、問題点はある。それもかなり大きな問題点が。二つある。それについては、後編に述べる。

本稿つづく

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