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尚泰候王代記について・・・
尚泰王というのは琉球さいごの王さまである。
徳川家でいうと慶喜公みたいなひと。
私は煙草を吸うニコチン中毒者なので、近所のT商店で喫煙をなすことがよくある。そこで知り合った、正直身なりはこつじきのような、しかしどこか態度が悠然とした老人がいて、この人は、王の、子の、子の、子である。王の四男か、五男かの、末裔であり、でもなんか、直系というわけではないが、なんか家を継いでいる。
そこらへんの事情は、何度聞いてもよくわからない。
というか昔の話というのは、きいてみると、王族にしても百姓にしてもよくわからないものである。私の父の家も、なんど聞いてもよくわからない。
昔のひとはめちゃくちゃなので(いやほんとに)、男は余所に別の女がいて産ませたり、女は元の男の子を連れて後妻におさまったり、移民先のハワイにも妻子がいて、帰ってきてまた新たに妻子をつくったりするので、はっきりいって全然わからない。
普通こういう事情はよくわからないまま消えていくわけだが、父の実家の隣の隣、の隣ぐらいに住んでいる人が、歴史がすきで、定年後、地元の家系図を聞き取り調査でつくった。こういう篤志家がいるので歴史はのこるわけだが、この家系図を見ても、正直よくわからない(いやほんとに)。
誇張でもなんでもなく、ガルシア=マルケスの記したブエンディア一族よりずっとずっと複雑である。一例を挙げると、ずーっと呼ばれていた名と、戸籍の名がぜんぜん違ったりする。じゃーこれだれなの?みたいな。父にきいても、知らん、みたいな。
現実というのはそういうものである。
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きょうは個人的に行っている取材活動をおえ、ヘトヘトになってもどってきた。タバコをすっていると、Y老人(末裔)が、「これどうぞ。差し上げます」という。見ると、『尚泰候王代記』とある。
え?とおもったが「ありがとうございます。拝見します」と言っていただいた。
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というわけで、いただいて、かえってきたのだが、これをおれはどうすればいいんだ?
なんで、おれ?
よくわからん。