【掌編400文字の宇宙】親のきもち
子どもに何か才能があって欲しいとはおもわない。才能というのは呪いと同義で、ひととちがうということだから。
人と違う。これがどれほど苦しいことか、学校に通っていたひとならみな分かるだろう。天才というのはもう一生苦しむことが確定している人種である。
普通でいい。ふつうがいい。
目立たないでほしい。同性愛者であったらそれはショックだが、まあそれでも全然いい。くるしむとはおもうが。兎も角愛する人を見つけてほしい。
金には困らないでほしいが不必要なほど稼いでほしくない。
健康でいてほしいがときどきは病気をするのがよい。苦しむ人の気持ちが分かる人になってほしい。
善人でいてほしい。弱い者をいじめるようなら死んだほうがいい。
親よりは長生きしてほしい。
いずれにしろ生きていくというのは苦である。そのくるしみに負けないでほしい。
後悔も、失敗もしてほしい。成功なんてしなくていい。ただ、生きていてほしい。
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