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【連載小説 中篇予定】愛が生まれた日⑥

 パーティー当日。

 海辺にあるお洒落なCaféに参加者が集まった。雪子(おれの妻)は仕事を手伝ってくれ、ということで来てもらっている。雪子の参加費(1500円)はおれが払った。

 女の参加者は、雪子(29)、由希子(31)、ユキノシタ(27)、メイ(24、当初から申し込んでいた人)。かっこ内アラビア数字は年齢。

 男の参加者は、ロバート(19)、ウィリアム(42)、ペドロ(38)。かっこ内は年齢。これは外国人というわけではなく、婚活ネームで参加しているわけ。本名で参加すると、とくに姓とかでいらぬ先入観がはいる場合もあるので、当社としては婚活ネームを推奨している。

 もうひとりは、婚活ネームは用いずに、西村四郎という、おそらく本名で参加している。年齢は48。結構年はいっているが、若く見える。こざっぱりとした恰好で、はっきりいって美男である。

 というか。大問題が。

 由希子の連れてきたユキノシタだが、妊娠しているのである。お腹がすごく大きい。動きもノロノロしている。聞くと臨月で、予定日も過ぎているらしい。

「どういうことだよ」おれは由希子を会場の端に連れて行って、きいた。

「うちに入院しているひとだよ」

 と由希子。由希子は産婦人科に勤めていて、この会場からもすぐ近くにその産院はある。

「いやいや。妊婦連れて来ないでよ」

「え、ダメなの?」

「いや、ダメというか。えーっと。ダメだろう、普通。シングルマザーなの?」

「ううん」

「いや、ぜったいダメじゃん。旦那さんもいるんだろう?」

 気配。振り返るとユキノシタが立っている。

 色が白く、小柄。こけしのような顔で、かわいらしい。そしてお腹がでかい。

「あのう。ごめいわくですよね」とユキノシタ。

「いや、あの」

「わたし、ヤリモクなんです。母乳プレイがしたくて。母乳、もう出るんですよ。ほんとうは、主人とする予定だったんですけど。というのも主人は母乳プレイがしてみたいって前から言っていて。だけど、いざ妊娠すると、主人はなんだか腫物にさわるようになって、わたしをね。『妊婦の性生活』とか本も買って勉強したんですけど。主人は、やっぱりできないって。あんまり家にも帰らないようになって。よく風俗に行っているみたいです。わたしもう、なんか。せっかく母乳プレイができるのに。ねえ」

 ユキノシタはすらすらと話す。しかし一度聞いても、よくわからない話である。

「えっと」とおれ。

 ちなみにヤリモクというのは、やる(性行為)のが目的のことで、こういう参加者は結構いる。当社としては推奨は勿論していないが、禁止はしていない。

 うち(ミルミルヤレル)としては、男女をマッチングさせるのが仕事で、そのあと二人がやろうが、結婚しようが、どうでもいいのである。

 参加者たちが手持無沙汰な感じになっている。ディレクション初日だというのに、サブの雪美が食中毒になって急遽休んでいる。

「ああ」

 おれはため息をついて、会場の中央に行った。

本稿つづく

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