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kataneya
【掌編400文字の宇宙】まぼろしの新開地
弁ヶ嶽マンションの、あの小高い丘から南西に見下ろしたあたり、ぽっかりと平地になっているところにあたらしい町がある。町は円形状で、中心にショッピングセンターがある。
小中校時代のなつかしい人たちが住んでいるが、面影を思い出すことができない。もしかすると会ったことのない人たち、想像上の人々のような気もする。どちらにしろおもかげだけで、はっきりと顔は浮かばない。
夕暮れどき、妹と何人かの女たちとショッピングセンターに行き、屋外の庭園で何かを食べている。空はインディゴブルー。
女の買い物に付き合うのは真っ平ごめんだと思っているが、妹と女たちはまだちいさな子どもなのでただはしゃいでなにかを食べている。
谷を挟んでゴミ処理場があるあたりに、大型のモールがある。弁ヶ嶽に特有のまっくらな闇の中でそこだけが白く人工的な明かりを反射している。
まぼろしの新開地と大型のモールは、どちらも夢の中によく出てくる。