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【特別企画 夏の怪談】ブラウン管の鬼③
前置きが、長い。
「ブラウン管の鬼」の話を早く済ませてしまおう。この話は、高校の時の合宿で聞いた。Y会館という、会館があって、そこで夏の合宿をしたときの夜だ。
部活の合宿というのは、目的としてはそれぞれの部活動の、道をすすめるということにあるだろう。短期集中というような。普通はそうだと思う。思うのだが、実際に部活をしたというよりも、この、手段である合宿の、しゅくが、目的化してしまったような活動のようであった。
この、Y会館というのは金城町の一丁目にあり、慰霊碑などもあり、どう考えても霊がウロウロしているような坂(比良)の中腹にあった。あたりも坂だらけであり、比良比良(ひらひら)しており、夜になると暗くて、闇である。
金城町の大アカギというのも、真夜中、この合宿のある夜に、みんなで行った。真っ暗闇の大樹群(アカギ)。息をするのも苦労するほどの濃密な森の黒い空気だった。途中の坂で、マネージャー(♀)が急に霊的過去の話をするなどした。このマネージャーは避妊具を持って来ており、ちょっと待って何に使うの?みたいな雰囲気になりもした。
三分の一が幽界に通じている人たちなので、残りの三分の二も、なんか、おれも今夜は幽遊白書かも、みたいな状態になる、そんな、その場のノリのようなものが、あったような気もする。
さまざまな、意識的・無意識的な演出がなされ、現場・自然・歴史の意匠がこらされ、場の空気はいやがおうでも静かな興奮の坩堝へと落ちくだっていった。
そもそも何部なの?というような状態。練習をした記憶は全くない。歴戦の勇士たちが、語り始めた。
キャプテンのМBが、まず口火をきった。
「ブラウン管の鬼」
とМBは言った。
「あー、この話。めっちゃすき」とМBの小学校からの親友のFFがニキビだらけの顔でうれしそうに言った・・・。
本稿つづく