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【連載小説 短篇予定】美の骨頂⑯What's first name OHTANI ?......二刀流のダブルタン・ブラック

 その昔、ショウヘイヘーイという芸人がいましたが、うちはよく知りません。お亡くなりになったそうです。合掌。

 ダブルタン・ブラックはべらべらと身の上話をし、米語と日本語、またアメリカ人風の日本語を話しました。嘘つきだな、こいつ、とすぐ思いました。

「アタシ、ロスにいたときに大谷とヤったことあるよ」

 とタンは言いました。はいはいはい、うそ。

「パパは、サウス・セントラルで射殺されたの。ポリスだったから」と言って涙を流しました。

 うーん。これは、たぶん、ほんとかもしれない。

「オキナワではゼロゼロヨンレースの助手席に乗って、58(ゴーパチ)を160キロで走ったよ。車のなかにパソコンが積んであるの」

 これは本当。めーわくなやつら。五月蠅い。

 一体に、米兵という人たちは若い身空でど田舎から出てきて、生まれて初めて見るタウンとかシティでありあまった体力・精力を持て余しています。もっとフルメタルジャケットのような厳しい訓練をすればいいのでしょうが、そうでもないみたいで、暇そうです。

 アメリカという国は戦争をしないと国家経営が成り立たないので、数年ごとに、というか厳密に言うと常に戦争をしているか、戦争を援助しています。たとえるなら真珠の価値を知っている豚のようなもので、豚たちは真珠をたくさんもっているけど、食べてゆくためにはこの真珠を売らないといけないのです。というか本当に、無尽蔵のように真珠をもっているし、次々に生産されるので売らない手はないのです。

 売らない豚はただのブタで、意味のない真珠を頸に巻いて、太っているだけです。そのうち首飾りで窒息することでしょう。

 切ったサムギョプサルを胡麻の葉で巻いて、さらに舌でまいて咀嚼しながらタンははなし続けました。エゼキエル書の話をしましたが、これは全部嘘だとすぐ分かりました。新型コロナはイソジンで治るというはなし。ワクチンは煙草の88万倍有害。パチプロ、スロッター、賭場を経営すれば日本経済はⅤ字回復する。ま、これらもうそっぱちです。

「あんたさあ、本当の話しなよ」

 と、うちはキングス・イングリッシュでゆいました。

「ワッツ……」

 といってタンは何もはなしをしなくなりました。

 ガキが。なめんなよコラ。とうちはキングス・イングリッシュでゆいました。

 会計の段になって、結局南極三人合わせて現金は八千八百八十八円しかありませんでしたが、7千円にまけてくれたので助かりました。

 というわけで、千八百八十八円あまったので、これでそれぞれの自宅へ帰ろう、というかうちと凪子はSuicaを持っていたので残金はタンにあげることにしました。

「じゃあ、アタシが奢るよ」

 と言うタンについていくと、いつの間にか歌舞伎町の西北におり、そこから東南にくだって、ぎらぎらした店の前に三人は立っていました。ホスト・クラブ「翔」でした。

 というか、思ったんだけど、東南アジアってどこから見て東南なのでしょうか。インド的解釈かな、とうちは思いました。

 


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