【特別企画 夏の怪談】ブラウン管の鬼④
「ブラウン管の鬼」
とMBが言う。
一応、この話がどこでなされたのか詳述しておく。できるだけ覚えている限りは書くべきだと思う。
Y会館は二階建てで、一階も二階も天井が高い。窓も多い。これは、この会館を発注した団体に、金がふんだんにあるという証拠である。この会館は同窓会の持ち物で、土地も同窓会のものである。この同窓会というのが謎の団体であり、首里のあちこちに土地をもっている。昔でいうグランド・キャッスル(現ダブルツリー・バイ・ヒルトン)の土地も、この同窓会のものである。らしい。いや、確実な情報である。
ほかには石嶺球場(首里においては異様にまで広く、平坦な土地)。さらにいくつか、土地・財産があるらしい。どう考えても、関わり合いになりたくない団体である。
この団体に、とくに意味もなく守護されて、合宿はY会館で行われていた。ただ、その後輩であるというだけで。
そういった、謎の守護があり、その夜もまた平和に過ぎるようであった。一見。私たちは守られて、それぞれの部活動の、主目的を果たすべく、その時間には就寝しているはずであった。すやすやと。
しかし、私たちは眠らなった。なぜか。若いからだ。体力があり余っているようであった。
「ブラウン管の鬼」
とMBが話し始めた時は、全員が居た。全員いる! のような。
そこから、この、百物語がはじまるのであった。
時刻はもう、明日になっていた。窓の外は真っ暗だったけれども。
「昔、おれ団地に住んでいたわけよ」
MBが言った。
本稿つづく