【連載小説 短篇予定】美の骨頂⑩The Passenger あさきゆめみしゑいもせす
うちたちは常に通過(通貨)するばかりで、その場にとどまりたるためしはありません。そうゆう存在なのです。
少しく話して、驚きました。清流さんは、うちの親と同じ歳だとのことでした。おとうも、どちらかというと若く見られる風貌でしたが、清流さんはどう見てもようやく三十の坂を越えるかどうかという感じでした。
一方、弟の弱男さんは、年相応というか、変なカンジでした。四十代のようでもあり、二十代のようでも、そのずっと下の子どものままのような目つきでした。
発情。
古着のにおいと兄弟の、男のにおい。
ラサカさんが入ってきました。
「さかちゃん、いらっしゃい」と清流(兄)がいいました。
ラサカさんも、この店は初めてではないようでした。
とゆーことは、この場面でファースト・コンタクトはうちだけなのでした。ビーズであんだポシェットを両手でつかんで、土俵をまえにする気分でした。
逆流する血とからからの子宮とその入り口。砂漠。
「それ、ばしょうふ?」
とと清流(兄)。
「ハイ」
「マジ? ごめん。さわらせてほしい」
うちは首からぬのを反時計回りにはずして、渡しました。
「すっげ。これすごい。おい」
と言って清流は店の奥の弱男を呼びました。
弱男は、いくぶん興奮気味に来ました。
「これ、芭蕉布。お母さんが持ってたろ、あの浴衣」
弱男は何も言わず、うちのもってきた布をざわざわと指先で触りました。
発情。
手触りで呼ばれる記憶とエクスタシーの前々段階。弱男の顔がいくぶん赤らみました。
赤光。
「ああ」
と弱男が溜息とも無念ともつかない小声を漏らしました。
清流の眼鏡越しの視線はあくまでやさしく、弱男の手つきは野蛮でした。
ニャー。
と鳴いて猫がどこかから来たのは救いで、恩寵でした。これがなければうちはその場で倒れていたといっても過言ではないのでした。
発情。発情。猫。
ニャー。
宮沢りえのような猫でした。或いは三田佳子みたいな。
この猫が雌だったのが唯一の救いでした。
あのころ、セイダカアワダチソウで編んだ首飾りを思い出すことができたのです。
廃仏毀釈。神社本庁は、あのときに、仏がこわされて、無理矢理神社にされた場所を把握しているのでしょうか。大問題が起きています。
宗教法人にも課税するべきだと思います。
神仏を問わず、耶蘇、イスラム。流行っている寺社があり、一方ほったらかしの宗教施設があります。
墓は勝手に作ってはならないのですが、正当な手続きを踏んで建てた墓が別の傍流に、時代のせいにされて、勝手に変えられた事例が溢れています。
大問題です。
地域の、あれ。霊的な話だけではありません。ほったらかしにされている施設は、要するに現世の孤独、怨霊のたまり場と化しています。
専門的な修行積んだ人材が必要です(仏教)
神仏習合をやり直さないといけません。今一度。
不足しているのはお坊さんと、神社本庁の本気と、地方自治です。
「これ、欲しい」
と鼻息荒く弱男が言いました。
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