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【掌編400文字の宇宙】ジャン・ポール・サルトル『嘔吐』新訳

 また独りになるのかと思うと、それがおそろしくて吐気がする。


 ある日の正午、賢者は嘔吐感におそわれる。また繰り返されるのかと。まったく同じことが、また起こるのが分かったからである。



 独学者は公立の図書館に居る。西東京にもいたし、首里にも、おそらく居るのだろう。

『死者の書』はチヴェットから、あるいは大陸の中央の複雑な山脈のいりくんだ小さな平野で、名も知らぬ人からひとへ、伝わった。不可思議なことだが、その文章の最初は「不」から始まる。

 不死

 不増

 不減

 不明

 不如帰

 不死身

 不如

 不言

 不如意

 不

 不知

 不治

 不帰

 不二

 不時

 吐気

 not you

 no means

 no body

 no country

 not fortune

 no future

 no meals

 不器用

 無人

 無名

 無明

 不自働扉

 no key

 underground

 black cat and white cat

 黒猫白猫

#掌編400文字の宇宙
#ジャン・ポール・サルトル 『嘔吐』新訳

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