【連載小説 短篇予定】美の骨頂㉞しゃべらずにはいられない......CHABLIS PREMIER CRU......要するに仏人もシャブルとゆうこと
二十世紀後半、「しゃぶらナイト」というテレビ番組があり、ゲストやホストがしゃぶりまくっていたそうです。おかあから聞きました。
その頃、というか設定的にちょっと時間が合わないのですがすでにおとうは工作員として北部に身を隠していたので、うちには女しかいませんでした。うち、なっちゃん、それぞれの母。
なっちゃんのおとうさんは、隣でつけ麺やをしながら、つけ汁的なサイド・オーダー風の女とよろしくやっていました。衝撃的な事実ですが、これがエーリー先輩だったのです。
その頃、エーリー先輩はすでにガールズ・バーを経営しながら、昼はなっちゃん父の店のホールで働いていたわけです。その頃、エーリー先輩は人のこころを失っておらず、まっとうに働いており、恋もしたのでこのような有様となったのです。
ちなみになっちゃんのお父さんは、新加勢大周の、元の方に似ている風貌というか、じつは旧加勢大周そのものだったので、モテました。異常に。
で、なっちゃんのお母さんは嫉妬したのかというと、ぶっちゃけ新加勢大周の方が好きになっていたので何とも思っていませんでした。畳と旦那はあたらしいほうがよい、という思想でした。
おばさんは、明けても暮れてもシン・加勢大周の話ばかりをしていました。
「ていうか、あの人、いまなにしてるのかな。ジュンちゃん知ってる?」
「知らん。シーラカンス」とおかあ。
ある日、メールが来て「虎・虎・虎」という内容でした。勿論おとうからでした。
普通に全員で無視していましたが、これは『虎に翼』という朝ドラが中々おもしろいという意味でした。
かくして東高校のうちたちは、何部だったのかもう忘れましたが、ある日、水泳に行きました。波の上のビーチで、水着で泳いでいたのです。
「結構、泳げるんですね、この季節でも」
と、観光客の日焼けした若い男に話しかけられましたが、県外の人はみな闇バイトをしているというのが当時の認識でしたので無視しました。
「しーん」
「無視しないでよ」
「しーん・ちゃーりー(チャーリー・シーン)」
なんだこの土人が、なめんな。
というわけで、うちとなっちゃんは性的暴力をくわえられようとしていました。
「おい、なんかや。たっくるさりんどや」
とエーリー先輩が来ました。
というわけでうちらは助かりました。
うちら(うち・なっちゃん・エーリー先輩)は若狭のマックス・バリューで買い物をして帰りました。うちとなっちゃんは水着のままだったので、日が暮れると凍えるような思いをしました。
だから。
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