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【掌編400文字の宇宙】のんきな話

 大相撲中継を見ていると、琴風親方が「まあ命とられるわけでもなし、何とかなると思って一番一番を取ることが大事ですわな」という。

 タシカニ、と思う。

 人工呼吸器の穴をあけるかどうかと妻に聞くと「あけない」とLINEが返ってくる。

 散歩に出ると、化粧の濃い女子高生二人組がバス停でずっと話をしている。

 坂をのぼり、鳥堀十字路を西原の方に左折して、焼き鳥やに行く。ここは同級生がやっている店だ。鳥皮をタレでたべ、ビールとハイボールをのむ。

 帰りしなコンビニでワインと麦茶を買う。

 龍潭の向こうに建設中の首里城がライトアップされている。夜気のなかで、ここはおれの町だ、と思う。記憶やエピソードが詰まっている。これらが町と混合して、完全に一体化している。

 石を敷いた歩道を歩く。ガタガタしたアスファルトをあるく。これらすべて、建っているいる家も、人も、ぜんぶおれのものだ、とおもう。

 是がおれの故郷なのである。

#掌編400文字の宇宙
#のんきな話

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