【連載小説 中篇予定】愛が生まれた日㊸かわれるものならばAIに全てを任せて私はアヘン窟に行きたい、それが最適ならば
「ルック」
とクリトリス・ブラックの声。
「うん」とフェラチオ・グッドマン。
「ライク・亜・パーティ・トゥナイト」
「いぇあ。It's party night.Like,like a…」
「Virgin load」
「Yes,huney」
「OMG.Fuck!」
「Hahahahaha!」
見るとクリスは右に、グッドマンは左に並んでいた。
「だけど、この、あの子の父親はお前なんだろう?」
と西村四郎(病理医、48歳)の声。
「結局南極バイなんじゃねえか。だれでもいいんだろう。気持ちがわるい」
「いや、ちがう。やめてよ」
ゆきむらゆきひこ(ユキノシタの夫 たぶん赤ん坊の父親)が悲鳴のような声を挙げる。
「四郎さん!」
「静かにしてくれ」
おれは雪美の焼き飯を食べ終わって、立ち上がった。
「静かに」
元気充分。糖分が頭にまわり、そのあと全身に漲った。
「もう結構!」
「そうだ。いい加減にしろよ」とウィリアム(婚活ガチ勢 42歳)「みんな自分勝手なんだよ。静かにしろよ!」
おれはウィリアムに向けて人さし指を立てた。静かに、という意味。
「お金、かえしてほしい。だって…」とメイ(パパ活女子 24歳)。
メイを指さして、その指を口元に立てた。静かに。つべこべ言うな。
夜もだいぶ更けた。テレビではずっと緊急生放送。犠牲者の数は時を追うごとに増えているようだ。
すっかり陽の沈んだ外には赤いランプが反射している。
海峡、流れのはやい海峡。かつて安徳天皇が幼いながら沈んでいったといわれるかいきょう。
うみのそこにもみやこはあります
と、そう誰かが言ったらしい。
あるわけねーだろ。と思うが、すめば都ともいうし、類を横断すればそれもあながち間違いではないのかもしれない。
どちらにしろ、一度は死ぬけどね。
死ななないものはない。消えないものはない。
これは仕方がないことである。
本稿つづく
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